徒然なる Short story 集

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『月のカケラ』 十二

2007年08月04日(土)

 レンを廊下に追い出し着替えを済ませる。
 あたしはドアを開け、
「準備OK」
 と小声で言った。
「じゃあ、行くか」
 レンも同じく、小声で話す。
 あたし達はコソコソと玄関へ向かい、外に出た。
 向かう先は、学校の裏。
 山への入口──木々が生い茂る所。
「走らなくて平気?」
「大丈夫! でも少し急いだ方が良いかな?」
 レンは夜天(ソラ)を見上げて言う。
 その先は、三日月が浮いている。
 そう、あの時と同じ、月齢の──
 あたし達は、早歩きで目的地へと向かった。


 薄暗い林の中を、懐中電灯を照らして進んで行く。
 暫く歩くと、辺りは森になり、山を上る手前の所に、広く空いた場所に出る。
 ポッカリと、そこだけ穴が開いたようになっており、何ヵ所か切り株がある。
『やっと着いた〜!』
あたし達はハモり、思わず二人して笑ってしまう。
「これからどうするの?」
 あたしが訊くと、蓮はシャツのポケットから袋を取り出し、更にそこから石を出す。
 月を見ながら、
「これを、できるだけ月の真下になる場所に置く」
 あたしも月を見る。
 月は丁度、頂点に差し掛かっていた。
「じゃあ、真ん中辺りにある切り株の上が良いんじゃない?」
 レンは頷き、走って置きに行く。
 戻って来て、
「今のうちに見とけよ」
 と言って、あたしに双眼鏡を寄越してきた。
「……なにを見るの?」
「決まってるだろ。あの三日月。弧の内側を見てみな。面白いものが見れるから♪」
「……?」
 あたしは訳が解らなくとも、言われたとおりにしてみた。
「え〜と……月の内側…… 弦を張る方ね」
 言いながら、月の尖んがった上から下へと見てみると……

「……!?……」

 有り得ないものを見てしまった。
「……う、そ……」
 最初は半信半疑だったが、見直してみれば、それは変わってなかった。
「面白いモノ、見れただろ♪」
 してやったりな表情で、レン。
 あたしが見た月の内側は……
 なんと、半分より下の辺りに、あの石と同じような形で、弧が欠けていたのであった。




 つづく。


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如月なつき [MAIL] [HOMEPAGE]