レンを廊下に追い出し着替えを済ませる。 あたしはドアを開け、 「準備OK」 と小声で言った。 「じゃあ、行くか」 レンも同じく、小声で話す。 あたし達はコソコソと玄関へ向かい、外に出た。 向かう先は、学校の裏。 山への入口──木々が生い茂る所。 「走らなくて平気?」 「大丈夫! でも少し急いだ方が良いかな?」 レンは夜天(ソラ)を見上げて言う。 その先は、三日月が浮いている。 そう、あの時と同じ、月齢の── あたし達は、早歩きで目的地へと向かった。
薄暗い林の中を、懐中電灯を照らして進んで行く。 暫く歩くと、辺りは森になり、山を上る手前の所に、広く空いた場所に出る。 ポッカリと、そこだけ穴が開いたようになっており、何ヵ所か切り株がある。 『やっと着いた〜!』 あたし達はハモり、思わず二人して笑ってしまう。 「これからどうするの?」 あたしが訊くと、蓮はシャツのポケットから袋を取り出し、更にそこから石を出す。 月を見ながら、 「これを、できるだけ月の真下になる場所に置く」 あたしも月を見る。 月は丁度、頂点に差し掛かっていた。 「じゃあ、真ん中辺りにある切り株の上が良いんじゃない?」 レンは頷き、走って置きに行く。 戻って来て、 「今のうちに見とけよ」 と言って、あたしに双眼鏡を寄越してきた。 「……なにを見るの?」 「決まってるだろ。あの三日月。弧の内側を見てみな。面白いものが見れるから♪」 「……?」 あたしは訳が解らなくとも、言われたとおりにしてみた。 「え〜と……月の内側…… 弦を張る方ね」 言いながら、月の尖んがった上から下へと見てみると……
「……!?……」
有り得ないものを見てしまった。 「……う、そ……」 最初は半信半疑だったが、見直してみれば、それは変わってなかった。 「面白いモノ、見れただろ♪」 してやったりな表情で、レン。 あたしが見た月の内側は…… なんと、半分より下の辺りに、あの石と同じような形で、弧が欠けていたのであった。
つづく。
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