コンコン、と窓を叩かれる音で、あたしは目を覚ました。 誰だか解ってはいるけど、念の為訊いてみる。 「レン?」 「さみーよ〜、中に入れてくれよ〜」 レンは情けない声を出す。 あたしは窓を開け、彼を招き入れた。 「ベランダ乗り越えたわけ? 危ないじゃない! こういう時はケータイ遣って連絡しなさいよ」 「だって、繋がらないからさ……」 「え!?」 あたしは一瞬、耳を疑った。 「いっつも寝る時は電源切ってるけど、今夜は入れとけって言っておいたのに〜。 忘れてただろ」 ケータイを確認したら、確かに電源は切られていた。 「ご……ゴメンゴメン! つい、癖で……」 レンはジト目であたしを睨む。 「いや〜……習慣って、ある意味コワいわねえ……」 あはは……と誤魔化し笑いをするあたしを、レンはジトっと恨めしそうに見続ける。 視線が痛い。 目覚時計は、普段起きる時間にセットしたままにして、代わりにケータイのアラームを利用するつもりでもいたのだが、そのセットすら忘れてた。 レンがわざわざ起こしに来なかったら、あたしは普段どおり、朝までスヤスヤ寝続けてただろう。 あたしは気まずく頭を掻いてたが、 「ゴメン!」 改めて謝罪した。 「ナナって、時々物忘れ激しいよな〜」 レンは、憮然として言う。 「ほんとゴメン!」 あたしは両の掌を合わせて、平謝りする。 「まあいいや」 機嫌が直ったのか、苦笑しながら蓮は言った。 「それより、早く出掛ける準備しようぜ。 頭……寝癖ついてる」 「えっ!?」 恥ずかしい…… あたしは部屋の電気をつけると、鏡台の前に陣とって寝癖を直す。 髪を長く伸ばしてたのが幸いして、前髪をちょっと直す程度で済んだ。 さてと、次は着替える訳だが…… チョコンとあたしのベッドの上に、自分の靴を抱え座ったまま、ニコニコとレンはあたしの準備が整うのを待ち続ける。 引きつりそうになるのを我慢し、笑顔であたしは言った。 「部屋の外に出てなさい」
つづく
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