徒然なる Short story 集

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『月のカケラ』八

2006年02月10日(金)

 それから数日……
 特に何がある訳でもないんだけど。
 でも、何かおかしいような気がしなくもない、はっきりとしない違和感があった。
 はっきりとしないので、あたしはレンになんと言っていいのかわからず。というより、気の所為かと思って何もいう気が起きなかった。
 しかし、漠然とした違和感はあたし以外の人間も感じてたらしい──
 同じクラスの子や、同じ学年の子。それだけにとどまらず、違う学年の子たちも、似たような疑問を発していた。

「最近、何かおかしいような気がするんだけど……
 それが何なのかわからないんだよね〜」
「あ〜!? うんうん! 実は私もそう思ってたんだ」
「私も〜」
「実は……」
「えっ、あんたも?」
「でも、何が変なのかがわからない……
 喉元まで出かかってるって感じで、気持ち悪いよね〜」
「うんうん! わかるその気持!」

 てな感じで。
(みんな似たような疑問抱えてるな〜)
 なんて、何の気なしに考えてたのだが……
 私は、ある共通点に気がついた。
 同じように疑問を訴えてる人達って、あたしやレンと同じマンションの住人だったり、その近所に住んでる人達だったのだ。
(もしかして…… あの石が関係あるの!?)
 そう思ったが、疑問に感じる違和感が何なのか、まだあたしにはわからない。
 なので……
 あたしは、レンに尋ねられないままでいた。
 わからないままに尋ねるのは、何となく癪に障るから。
 誰かが言ってたけど、喉元まで出かかってるんだ。
 だから、あともう少し、自分で考えてみよう──そう思っていた。
 ちなみに、あれから三日後の体育の時間。
 その日は雨で、男子は屋内でバレーボールをやっていたんだけど……

「っ、ぎゃああぁぁ〜〜!? いった〜〜!!」

 またもやレンは悲鳴をあげたそうな。
 ボールを拾う為、滑り込んでレシーブをした途端に……
「うぅ……
 胸ポッケなら安全かと思ったのに〜」
 石と床でこすれて痛めた胸を撫でさすりながら、レンはあたしに言った。
 泣きそうな感じに眉をよせてる彼にあたしは言う──
「だから言ったでしょ。
そういう問題じゃないよって──」


 それから、更に数日経ち、やっとであたしは違和感の正体に気付いた。
 それは──
『時間』だった。


つづく


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如月なつき [MAIL] [HOMEPAGE]