「……訳わからないって」 「そうか?」 呆れて言う私に、きょとんとしてみせ、レンは更に呆れさせることを言う。 「そのうちわかるよ」 ニッと笑う彼の瞳を見つめ、ふ〜ん……と気のない返事をし逸らした。 何となく……彼の瞳は、私を見ているようで見ていない様に感じたから。 (何でだろう?) という疑問は胸にしまったまま、 「何がおこるか楽しみだねえ……」 嘯(うそぶ)いた。
この時あたしは、まさかあとであんな事がおこるとは、思いもしなかった──
三
「うっぎゃあぁぁぁぁ〜〜〜!?」 校庭の一角で悲鳴が響き渡った。 「なんだなんだ!?」 「どうした?」 「おい、おまえ大丈夫か……?」 地面に転がって何故かお尻に手をあてていたクラスメートへと、男子生徒数人が駆け寄って行った。 「ぅ……痛いた… あ、ああごめん。なんとか大丈夫」 お尻を擦り擦り立ち上がったのは、レンだった。 今日の体育の授業は、女子はバスケット、男子はサッカーだったのだが──中庭でバスケをしていた女子も、気になってグラウンドに降りて行った。 彼が一体何であんな悲鳴をあげたのか、女子の誰かが男子に聞いたところによると、 「それが、レンくん相手チームからボール取ろうとスライディングタックルしたんだって。そしたらいきなり悲鳴あげてのたうち回ったってさ」 それを聞いて、思わず頭を抱えた。 恐らく例の`石'を体操着の短パンの後ろポケットにでも入れておいたのだろう。深く考えずに、着替えをした時に。 あとでレン本人に訊いてみたら、やはりそうだった。 「気をつけないとだな〜。今度からは胸ポケットの方にしまうようにしないと」 とレンは言いながら、石を入れておくようにわざわざ作ったらしい小さい巾着袋らしきものを、それの紐を指にかけて回していた。 「そういう問題じゃないと思うよ?体育の時間くらい、ポケットにしまっておかないでもいいんじゃないの?」 「ダメなんだよ。できるだけ離さないで持ち歩いて温めておかないと、また仮死状態に戻っちまうかもしれないんだ」 そういえば、石を拾った次の日に「発見してすぐは仮死状態だったけど、間に合ったみたいで温めてたら正常に戻った」とか言ってたなあ…… 「あのさ、そんなに大事なら振り回さない方がいいんじゃないの?」 「えっ──」 クルクルクル。
つづく
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