これらの出来事は、人々にとっても、深く、関わりのあることでした。 『光』と『闇』の戦いのあと、『光』は生命の想像をする仕事の最後の締めくくりに取りかかりました。 それは、光の眷属と同様、『人』に自分の力を分け与えることでした。 人を初め、あらゆる生命は、全て、その肉体は闇から作られていました。 その代わり、中に込められた生命の核となるものが、『光』より分け与えられた、光そのものだったのです。 最後の最後なので、その分、力を注いだのかもしれません…… 人は、他のどんな生き物より、強く素晴らしい光を宿していました。 さすがは、生物の頂点に立つべき者、と言ったところです。 しかし、戦に追われ、時間が経っていた為でしょうか? 間が空いてた分、なかなか、馴染まなかったのかもしれません。 それとも、死の間際だったためでしょうか? 今一歩、力が及ばなかったのかもしれません。 強い光は、逆に、脆さを兼ね備えていました。 それにより、『人』は、あらゆる生き物の中で、一番、自分自身の光と闇のバランスを保つのが難しい存在となっていたのでした。 とはいっても、光の眷属も、闇の眷属も、そう、大した違いはないのかもしれません。 だからこそ『人』は余計に、姿形も、それらの眷属によく似ていて、不安定な存在なのかもしれません。 そんな人々は、『光』の世界と『闇』の世界に、他の生物と同様、その存在を増やしていきました。
世界を修復し終わる頃、世界を繋ぐ門を開いたことにより、互いの世界は、それぞれの司る力を交流させていまりた。 それで、どちらの世界に住む人々であろうと関係なく、『人』は、同じように存在していきました。 しかし、世界の質の違いというものがあります。 同じように存在していましたが、それなりに、質の影響を受けていました。 特に、悪い影響というわけでもありませんでしたが。 光の眷属と闇の眷属の戦には、『人』も参戦していました。 その当時、『人』は、光の眷属の側に属していました。 中には、闇の眷属の側へと走るものもありましたが、極僅かで。光の眷属の側に位置するものがほとんどでした。 その中には、特に、『人』のとして優れた『力』を持つ一族がほとんどでした。 二つの世界の力が互いに行き交っていても、光と闇の眷属と同様、人が双方の世界を行き来することはありませんでした。 しかし、光の眷属と共に戦ったことにより、交流が始まりました。 『闇』の世界に住んでいた『力』ある一族のうち幾つかは、『光』の世界にて、その地に住む仲間と協力して、堕天した七つの長達を封印しました。 『人』は、主に、闇の眷属に惑いし『人』を相手に戦い、光の眷属は、主に、闇の眷属を相手に戦っていました。 しかし、戦況は、光の眷属に有利だったのだが、佳境に入り、思いもかけず、熾烈を極めました。 堕天するもの達が顕れたからでした。 その内の、七つの長達は、かなり手強く…… かなりの力を使い果たしていた光の眷属達は、『光』の助力により、長達を倒したのでした。 しかし、完全に封印するには今一歩力が足りず、最終的な封印は、『光』より力を借りた『人』の手によって行われました。 『闇』の世界よりきた人々の『力』は、元・光の眷属である、堕天したもの達にとって、とても強力な打撃を与えることができました。 同時に、『光』の世界の人々は、闇の眷属にとって、効果がありました。 封印も、同様でした。
戦が終わったあとも、色々と問題があり、人々は、自分の元居た世界へは、なかなか戻ることができませんでした。 そうこうするうちに、ある、重大なことが判明しました。 このまま、互いの世界の力を繋げたままにしておくと、『海』や『島々』を必要以上に活性化させ、大きな、エネルギーの乱れを生じさせてしまうというものです。 それにより、『世界』の均衡が崩れるかもしれないのです。 エネルギーの乱れは、二つの世界を刺激して―― 下手をすれば、封印に悪い影響を与えかねないというのです。 七つの封印が壊れるだけでは済みません。 もしかすると、『闇』の封印も、影響を受ける怖れがあるのです。 封印が解ける・・・ そうなれば、今度こそ、世界はお終いです。 よって、決まった時を残して、互いの世界を繋ぐ門は閉ざされました。 門を開くことのできる時があるのは、逆に、閉ざしたままにしておいても、よくないとわかったからです。 その事で、今後、もしもの場合を想定して、封印を有功に強化できるよう、封印をしたもの達は、自分が生まれ育った世界に戻ることなく、新天地で一生を過ごすことになったのでした。 彼らの子孫は、そのまま、魔を撃ち破る一族として、そして、封印を守る一族として、自分の家を守っていきました。 残った光の眷属は、闇の眷属同様、地上を去り、少数は、『島』へ行きましたが、ほとんどの者が、『光』の住まいし『天』へ程近い場所へと移り住みました。 そして、『光』の世界、『闇』の世界、『海』をそれぞれの世界に合わせて、『日』『月』『海』をそれぞれ司る光の眷属の数人が守護することとなりました。 こうして、二度に渡る聖戦の終演により、神の世の時代は終わり、人の世の時代が始まったのでした。 今は昔の―― とある世界の、神々が地上におわしまする頃のお話です。
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「ねえ……それ、ホントの話なの?」 と。あたしは、ベランダ越しに向かい合う少年に訊いた。 水無月連。 同じマンションの五階――お隣に住む、同級生。小学校四年生から付き合いがある。 幼なじみでもあり、親友でもある。 ややつり上がり気味の目つき。深みのある瞳と、艶やかな真っ黒な髪が特徴。 偶然にも、あたしと同じ誕生日。十五歳の男の子。 「信じないのか?」 「うん……だって。二つの世界がどうとか…… 現実味がないっていうか…… それに、矛盾なとこがない?」 「まあ……昔話や神話とかっていうのは、結構そういうもんだと思うぞ。」 苦笑混じりに、レン。 「とにかく―― それで、世界と世界を繋ぐ門は、今でも閉じてあったりするんだけど。 時々、『島』とそれぞれの世界が接触したりして、穴が空いたりするっていうか。一時的なもので、すぐに閉じるらしいんだけど。 門が開いてなくっても、偶然繋がることがあるんだってよ。」 先のレンの話では、私達の住んでいる世界は、『闇』の世界……『闇霊』(くらち)と呼ばれていて。此処とは別の――『光』の世界は、『輝霊』(かぐひ)と呼ばれているんだという。 『闇霊』は、男の日の神様と、男の月の神様が管理していて、そのまま、その世界にある日と月を司るらしい。『輝霊』の方は、女の日の神様と、女の月の神様。 『海』と、両方の世界にある海を管理し、司るのは、男と女の海の神様という事だ。 他にも、色々言ってた。 男の月の神様は、両の世界の夜を司る闇の眷属の女神と夫婦だとか何とか…… 何だかよくわからん。 「それで、うっかり、どっちかの世界の人間が、向こう側に迷い込んだりするとかして、元居た処に帰れなくなったりすることがあるんだって。 そういうのが、神隠しとかって云われてる現象の理由の一つなんじゃねえ?」 「ふーん。なるほどね〜。」 やっぱり、矛盾があるなあと思いつつ、 「まあ……それなりに、面白い話ではあるわね」 一応、感心したように呟く。あたしは、ふっ、と軽く笑みを漏らた。 と、 「あー! 何か、相手にしてらんねえって感じ?」 レンは、ちょっと大きな声を出した。わざわざ指さしてくる。 そして、 「ナナはほんっと、このテの話、乗らねえよな……」 あーあ……と、つまんなさそうに、溜息を吐いた。
つつく
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