2005年11月11日(金) |
ダンス《ダムタイプ「S/N」1995 特別上映》 |
先日の珍しいキノコ舞踊団のパフォーマンスと同じく、 東京都写真美術館の展示会「恋よりどきどき コンテンポラリーダンスの感覚」の一環として、こちらはフィルムの上映。
名前は聞くものの、実際に見たことがなかった、見たかったダムタイプ。 主催の古橋悌二がエイズで亡くなって10年。 今ではフィルムでしか見られないパフォーマンス。
まず、奇声を上げながら四つん這いの手にハイヒールを履いた青年の登場に、少々たまげる。しかしよく見ると洋服のあちこちに黄色いシールが貼られている。 シールには「Dumb」「Male」「Japanese」という文字がプリントしてある。 次に出てきた黒人には「homosexual」「American」「Black」「Male」。 そして、ダムタイプ主催の古橋悌二には「homosexual」「HIV+」「Japanese」「Male」の文字が確認できる。 最初に個々の国籍・障害・セクシュアリティ・AIDSなど人が作り出した差別のレッテルを提示。
その後、トークやパフォーマンス、舞台に投影された膨大な量の映像・テキスト情報、音楽などを目まぐるしく交差させ、レッテルの消失と再生をうたい、そのメッセージを徐々にかつダイレクトに我々観客に浸透させる。 それらは先鋭的な手法でもって痛烈な社会批判をしているのだが、人の間には壁なんかないんだよ…てなシンプルなメッセージは愛に満ちているので、脳が痺れつつも同時にやさしい気持に溢れてしまう。
この舞台の主要人物の一人、セックス・ワーカーを自認するブブさん(女性)がとてもチャーミングで素敵だ。 ラストシーンはこのブブさんが、台の上で横たわり足を拡げて股間から糸で繋げた万国旗を出しながら、上手から下手へ向けて優雅に移動するのだ。 その時かかるのは、それまでのミニマルミュージックではなく、甘い「アマポーラ」。 これには泣けてしまった。舞台を横切りはためく国連旗を含めた万国旗を見ながら、メッセージしかと受け止めたぜぇっ!などと思いつつ胸がいっぱいになっていたのだった。
古橋は最初に背広姿で登場する。それから仲間達とトークをしながら化粧をし、背広を脱ぎドレスに着替えて本来の自分に戻っていく。多分、その時既にエイズを発病していた彼は、その動きだけで精一杯だったのだと思う。
この舞台の年に古橋は亡くなるのだが、「白鳥は死ぬ前に一番美しい声で歌を歌う」という言葉が思い出され、これが古橋の白鳥の歌なんだな、と帰り道しみじみ思った。
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