表身頃のココロ
ぼちぼちと。今さらながら。

2005年10月14日(金) 「ダーウィンの悪夢」上映会

山形ドキュメンタリー映画祭で見て、結構ショックを受けてしまったこの映画。二度目・・しかも間をおかずに見るのはちとつらいと思いつつも東京の上映会では監督のトークがあるというので出かけた。
ヤマガタでの感想は→こちら

● 映画『ダーウィンの悪夢』上映会+討論
  −グローバル化と奈落の夢−
日時:2005.10.14(金) 
会場:東京外国語大学研究講義棟2F226教室
16:45-   イントロダクション
17:00-18:55 映画『Darwin's Nightmare』上映
19:05-20:00 討論 H.Sauper(監督)
西谷 修(東京外国語大学) 中山智香子(同)

中程度の階段教室に立ち見が出るほどの盛況ぶり。
ヤマガタで賞を獲ったこともあるが、以前から話題になっていただけのことはある。

ダーウィンのいう適者生存とか自然淘汰は何となく覚えている程度の私だが、ヴィクトリア湖の生態系を滅茶苦茶にしながら増殖するナイルバーチと、人間の生態系を滅茶苦茶にしながら席巻する資本主義とをひっかけているタイトルは見事だと思う。
またこの日のサブタイトル「グローバル化と奈落の夢」も言い得て妙だ。
ナイルバーチは補食魚ゆえにヴィクトリア湖の他の魚を食い尽くす日も近く、現在共食いの段階まで来ているという。
資本主義もまたグローバル化の御旗の下、弱者を食いつぶし増殖を続けいつかは己を食い尽くしてしまうのか・・。
しかし、ナイルバーチは生きるために食らうし、人間も悪意で動いているわけではない。
まさに出口無しの悪夢だ。

途上国の貧困・飢餓・ストリートチルドレン・売春・HIVなどは、今や我々にとって決して目新しいものではなく、ともすれば「あ・・またか」などという気分になることも多い。
しかし、知識として“知っていること”と、認識をして“理解すること”の間には大きな隔たりがある。
監督は、“理解”のための映画作りについて、現実のリプロダクションとして作品を提示しているという。
が、記録としてのドキュメンタリーに徹するとリアリティを失うおそれがある。
そこに主観のフィルタを通し、ポエティック(というのは感情の流れに沿うという事だと理解する)に構成する事を意識しているという。はい、ダイレクトに来ました・・。

また撮影裏話として、映画の制作費用の少なくない部分を、現地の警察や役人への所謂賄賂として使ったという。撮影の許可を取るためにいちいち裏金が必要になったり、ネイティヴの女性へのインタビューがポルノ映画と勘違いされて留置所へ入れられたり、相当の苦労があったようだ。それでも西洋人ということで裏金で済んだが、これが現地人だと命がなかったかもしれないという。

終わりに、会場に来ていたタンザニアからの留学生の「これが現実の姿だ。この映画に感謝します!」という言葉が響いた。

次の映画は、中国の帝国主義についてだそうだ。
過去の歴史において、アフリカを搾取したものが世界を制するという図式があるそうだ。
・・そういえば植民地化して資源をかっさらったヨーロッパ・現在のアメリカ・・。
・・そういえばナイジェリアが中国から軍用機を購入したというニュースが新聞に出ていた。中国はTシャツ・プラスティックなどの工場や工事と引き替えにダイヤモンドなどの権利を得てるという。不気味な中国。ちょとこわい。

ビターズ・エンドとNHKがこの映画の権利を買ったそうだ。
来年の夏の公開が予定されているという。その前にNHKでの放送があるかもしれない。是非とも多くの人に見てもらいたいと思う。


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