表身頃のココロ
ぼちぼちと。今さらながら。

2005年03月07日(月) 「ロング・エンゲージメント」「春夏秋冬そして春」

◆ 春夏秋冬そして春
[韓国・ドイツ/2003年/102分]
監督:キム・ギドク

湖にぽっかり浮かぶお堂は、仙人が住むという蓬莱島を連想したが、かなりなまぐさい。
霞を食って生きる仙人のごとく生活感のない暮らしぶりだが、ナマの肉体感覚だけはいやというほどあり。
ひとりの人間の一生を追っているようで、実は監督の考える普遍的な人間を描く。
無垢な時代“春”に犯した罪から始まり、全編を貫く罪と罰。
それがラスト、苦心して彼らの世界を見守る山の頂に置いた菩薩の半跏思惟像(@他者を救おうと瞑想中)によって、見守られ救われ・・る?
雰囲気や語り口の巧みさで、一見深遠な哲学を語っているようだが、しつこさが好みではなく、かなり俗悪チックに感じる私は根性曲がり。

次回作の「サマリア」。
タイトルからして聖書に出てくる“サマリア人”を下敷きにした映画だと思われ、ちょっと惹かれていたのだが、やめておくべきか。

(3/7 at ギンレイホール)


◆ロング・エンゲージメント
A Very long Engagement
[フランス/2004年/134分]
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
原作:セバスチャン・ジャプリゾ『長い日曜日』
出演:オドレイ・トトゥ、ギャスパー・ウリエル、
   ドミニク・ピノン、ジャン・クロード・ドレフュス

一世を風靡した前作「アメリ」だけに、“「アメリ」と「アメリ」の監督が再びコンビを組んだ〜〜”云々という惹句。
「アメリ」の監督という固有名詞ではない言葉で表現されるジュネ監督。切ない・・・。
ただ、この「ロング・エンゲージメント」を見る限りそれも致し方ないかと。切ない・・。

私は、ジュネ&キャロの共同監督時代の「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」が異常に好きなのだ。
キャロが抜け、キャロが担当していたと思われるダークなおとぎ話的世界が薄れてしまったけれど、それが「アメリ」には吉と出た。
しかし、「ロング〜」は中途半端だ。
映像はいつもながら素晴らしい。

もう映画はすっかり忘れて、あと余談だけ。
私は若い頃狂ったようにミステリを読んでいたのだが、この映画の原作者セバスチャン・ジャプリゾ作品はその頃読んだ。2〜30年前か・・・。
この映画の原作本は知らなかったが、『シンデレラの罠』『寝台車の殺人者』という当時の代表作は、いかにもフランスミステリらしい本格推理ともハードボイルドとも違う感触に溢れていた気がする。
最近昔の本の整理をする用があってこれらを引っぱり出してきたのだが、『シンデレラの罠』が凄い。
“私はその事件で探偵です。また証人です。また被害者です。その上犯人なのです。いったい私は何者でしょう?”
などという扉の言葉に改めて気づき、ひっくり返る。まるっきり忘れてた!

そう、「アダプテーション」で、脚本家チャーリー・カウフマンの弟、ドナルドが書いたというハリウッドテイスト満載の脚本が、確か犯人と被害者と探偵が同一だった。
今思い出しても可笑しくてしょうがないが、このネタはセバスチャン・ジャプリゾからだったのか?
 余談の余談だが、その年のアカデミー賞脚本賞のノミネートでは、チャーりー&ドナルドの2役を演じたニコラス・ケイジの写真が「アダプテーション」の脚本家として出ていたのを思い出す。これまた凄く受けてしまったのだった!
でも今年の授賞式では本物のチャーリー・カウフマンが登場、受賞。
あな、めでたしめでたし。

とりあえず、「ロング・エンゲージメント」の功績として、「シンデレラの罠」を読み返す。

(3/8 at 厚生年金ホール 3/12よりロードショー)


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