表身頃のココロ
ぼちぼちと。今さらながら。

2005年03月01日(火) 「タッチ・オブ・スパイス」

◆ タッチ・オブ・スパイス
A Touch of Spice

[ギリシア/2003年/107分]
監督・脚本:タソス・ブルメティス




冒頭、宇宙の星ぼしの間をゆうらりと赤いパラソルが浮遊する映像から始まる。
     (そのちょっとベタなイメージに、漠とした不安がよぎる。)
「ガストロノミー(gastronomy=美食学)にはアストロノミー(astronomy=天文学)が潜んでいる」というナレーションが入り、思わず“おぉぉ〜っ”とひれ伏したくなる。

主人公は天体物理学の教授。
彼には料理の才能が備わっており、幼い日から腕と感覚を磨いてきた。
政治的な理由で、トルコとギリシアの間で翻弄された主人公一家。
これは、彼らのアイデンティティを食を巡る小宇宙になぞらえた佳作だ。

食と歴史を巡るこの映画は、ギリシア映画史上最大のヒット作になったという。
ラスト近くで気づいたのだが、この映画は「ニュー・シネマ・パラダイス」と似た構成で描かれている。
国民感情の底に共通してある感覚を提示、ユーモアで包み、苦しみを笑い飛ばし、ノスタルジックに描き出すという、人々の感情を鷲掴みにする要因も共通している。

映画の冒頭部分は、その映画を的確に語っている場合が多い。
この映画で、漠とした不安を抱いたその冒頭の映像は、やはりこの映画を語っていた。
私には少し温かったようだ。

(at ル・シネマ)


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