表身頃のココロ
ぼちぼちと。今さらながら。

2005年01月20日(木) 「陽のあたる場所から」

◆ 陽のあたる場所から
Stormy Weather
[フランス・アイスランド・ベルギー/2003年/90分]

監督・脚本:ソルヴェイグ・アンスパック
制作:ダルデンヌ兄弟
出演:エロディ・ブシェーズ、
ディッダ・ヨンスドッティル

制作にダルデンヌ兄弟の名があったのでうっすら期待。
しかし、この映画を感じることが出来るか否かは、ひとえにエロディ・ブシェーズ演ずるところのコーラに感情移入できるかどうか・・かもしれない。

コーラ(エロディ・ブシェーズ)は若き精神科医。
ある日、身元不明で何もしゃべらない中年女性が病院に措置入院(?)してくる。
他人と視線を合わせず、エレベーター内では体が触れたからだと思われるが錯乱したりすることなどから、かなり重度の自閉症かと思われる。
コーラはそんなロア(ディッダ・ヨンスドッティル)が気になってしょうがない。
少しずつ接近し心を触れ合わせ、ついには「コーラ」と彼女の名を呼びロアの方から手を触れてくるようにまでなる。
だがまたある日、たまたまコーラの休暇の日にロアの身元が分かり、別れをせぬままロアは故郷アイスランドに強制送還されるこことなる。
どうしても感情的に納得の出来ないコーラは休暇を取り、ロアの住むアイスランドに向かう。
・・というのが、まず第一の設定。
この段階でコーラにいらつきを感じてしまった私は、悲しいことにすでに映画を楽しめなくなってしまっていた。

ロアの住むアイスランドの中でも小さな島に降り立ったコーラは、町に精神科医がいないことを知り、そしてロアに夫と子どもがいたことを知り愕然とする。
自閉の人は日常の決まり切った繰り返しは問題ないといわれているので、困った人と認識されつつも島で普通に生活をし、受け入れられていたのだろう。
しかし、コーラはロアの治療のため誘拐同然にフランスに連れ帰ろうと試みる。
その頑なともいえる態度に、彼女の方にも問題があることが漠然と知れるのだ。
頼りなげなロアがコーラに救いを求めている→ロアを庇護し救いの手をさしのべなければ、という考えに取り憑かれ、逆にコーラがロアに依存していたのだとも考えられる。
結局、島の医師の理性的・現実的な説得を受け入れ、島でのロアの姿を見ているうちにロアのいるべき場所はこの島なのだと感情的に納得できるようになって島を離れる。

というこの映画は、詩的な成長物語だった。
途中まで、言葉は悪いが気まぐれな小娘が迷った子犬(おばさんだけど・・)に感情移入して助けてやろうとしている・・とか、独善的西欧人の甘い自己満足・・・とか、どんどんいやな感情が湧いてくる自分がいやになったけど。
ごめんよ、コーラあなたも迷子の子犬だったのね。

ロアを演じたディッダ・ヨンスドッティルは実際のアイスランドの詩人だそうだ。
彼女の存在感なしにはこの映画は成立しなかっただろうと思わせられる。

(at映画美学校 1/22よりシャンテシネで公開)


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