2005年01月15日(土) |
「Clean」「デーモン・ラヴァー」 |
第10回カイエ・デュ・シネマ週間での上映
◆「Clean」 [フランス・カナダ・イギリス/2004年/110分]
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス 出演:マギー・チャン、ニック・ノルティ、ベアトリス・ダル
昨年のカンヌ主演女優賞受賞作品だ。 私はマギー・チャンが好きでも嫌いでもないが、中盤以降ガムをくちゃくちゃ噛んでいてもよれよれの格好をしていても漂うエレガントさに驚く。 マギー・チャンの魅力を一番よく知る元夫によるマギー・チャンのための映画だ。
この映画は二人が離婚してから作られたそうだが、映画の中での夫の死による混乱からの再生とだぶって、現実の監督と女優の離婚で生じた互いの混乱や喪失感などからの再生をはかろうとする意志のようなものも感じられる。セルフセラピー映画? 成熟した大人の良い別れだったのだろうと思わせてくれる厳しくも優しい映画だった。
夫の麻薬過剰摂取による死により喪失感と罪悪感と悔恨と困惑とが、どっと彼女の細い肩の上に覆い被さってくる現実。しかし、皮膚の上と心に張られた厚いバリアで彼女自身その感情に気づかず、ただ漠とした不安で彷徨っているかのようだ。 混乱と空回りの日々から、周囲の手助けを借りつつオノレと向き合う準備を整えていく。
ラスト、義父母に預けていた息子とも暮らせそうな成りゆき。 念願だったレコーディングにこぎつけ、何となくうまくいきそうな予感がする中での休憩。湯気のあがる暖かい飲み物を前にして、急にこみ上げる安堵感。 それまでの心のバリアが取れたのか、突然だが自然な嗚咽が静かに始まる。 俯き手で覆われた顔から表情は窺えないが、マギー・チャンの自然で繊細な姿、彼女と共に観客である私も安堵の涙がつうと流れてしまったのだった。
この映画には悪人はひとりとして出てこないが、その中でもマギー・チャンの義父を演じるニック・ノルティは複雑な思いを抱えつつマギー・チャンの支えとなり手助けをする。世間一般的に言われるが義父はどうも嫁に対して甘くなるようだ。同じようなシチュエーションの「イン・ザ・ベッドルーム」でもそうだったというのは今思い出したことだが、映画を見ている間何度も頭をかすめたのは「息子のまなざし」だ。息子を殺された父親が、犯人である少年との意図せぬ出会いを通じ、混乱から許しへ、また自分自身の救済へと至ろうとする秀作だった。母親は、直接的にせよ間接的にせよ我が子を殺した相手は絶対に許せない。感情が先に立ってしまうのだ。だが父親とは感情を抑えて現状の理解から最良の選択を考えようとすることが出来る性なのかもしれない。個人差大きいけど。 などと書いているうちに、今度は娘を殺された親を描いた「ムーンライト・マイル」を思い出してしまった・・。ちょっと状況が違いすぎるが、娘を亡くした場合は父親の消耗度が激しいのだった。 映画とは直接関係のない事をつらつら連ねてしまった・・。
(at日仏学院エスパス・イマージュ 公開未定)
◆「デーモン・ラヴァー」 [フランス/2002年/120分] 監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス 出演:コニー・ニールセン、クロエ・セヴィニー、ジーナ・ガーション、 大森南朋、山崎直子
消耗度激しき映画。
思い出し中・・。
(at日仏学院エスパス・イマージュ 3/12よりシアターイメージフォーラムにて公開)
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