2005年01月07日(金) |
「シルヴィア」+ N響オーチャード定期 |
◆ シルヴィア Sylvia [イギリス/2003年/110分] 監督:クリスティン・ジェフズ 衣装デザイン: サンディ・パウエル 音楽: ガブリエル・ヤーレ 出演:グウィネス・パルトロウ、ダニエル・クレイグ、ブライス・ダナー、ジャレッド・ハリス
映画を見る前に、詩人シルヴィア・プラスの唯一の長編小説「ベル・ジャー」を読む。 半自伝小説であるという。 皮膚の上から指先から神経がそのまま露出しているかのような痛々しさ、それと相反する 甘美さを感じさせる文章だ。 かなり入れ込んでしまった。 元々持っていた繊細で脆弱な神経のため、度重なる世間と自分との軋轢に苦しみ精神のバランスを崩してしまう。 自殺未遂から精神病院に入れられ、二軒目の病院で希望の光を感じる所で小説は終わる。 小説タイトルの「ベル・ジャー」とは実験に使うガラスの釣り鐘型の覆いのこと。 ガラスの覆いの中で息苦しく離人感に苛まされ神経をすり減らしていった少女は、決してシルヴィア・プラスだけではないだろう。
映画は、「ベル・ジャー」に描かれたアメリカでの辛い時期の後、奨学金でイギリスのオックスフォード大学に留学するところから始まる。 知的な仲間とのつきあいや、後に夫となる桂冠詩人テッド・ヒューズとの出会いなどで、人生を謳歌していたシルヴィアだが、結婚を機にまたも神経をすり減らしていくこととなる。 当時女性が置かれた地位との葛藤、夫との葛藤、詩作との葛藤などで徐々に彼女の内部で変化が起こっていく。 己の危うさを一番よく知る彼女自身、何とか心の均衡をはかろうとしただろうがかなわず、ついに生きることを諦めてしまうのである。 ガスオーブンに頭を突っ込むという方法は衝撃的だが、自殺願望の強かった彼女が考え抜いた確実で楽な手段だったのだと思う。 二人の子どものベッドの脇にバターを塗ったパンを置き、子ども部屋の窓を半分開けてからキッチンで淡々と死の準備を始めるシルヴィア。 子どもには心を残しながら、それでもこれ以上生きることを続けることができないと思う彼女の深い絶望が痛いほど伝わってくる場面である。 そんな、はかなげで危ういシルヴィアをグウィネス・パルトロウが繊細にかつ大胆に演じている。 冒頭の輝く笑顔から、だんだん心が内に向かうに従い目から光が消え表情が消えていくグウィネスは確かにシルヴィア・プラスだったのだと思う。
◇N響オーチャード定期 指揮:秋山和慶 J・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」序曲 パガニーニ ヴァイオリン協奏曲2番 サン=サーンス 交響曲3番オルガン付き
実は、N響オーチャード定期2004/2005シーズンのシーズンチケットを買ってあったのだ。何を思ったのか昨年5月のチケット発売日に突然その気になったのだった。 1回毎だと絶対に面倒で足が向かないのは間違いない。曲目も好きなのが多かったし、何よりシーズンチケットだとかなりお安くなるのだ。 毎回同じ席というのは善し悪しだけれど、面白いこともある。 私の隣に座る老夫婦、音楽好きのご主人と奥様といった所。その奥様、前回は曲毎に時々お休みになっていたのだが、今回は私が席に着いたときから既に夢の中状態。今回は3曲演奏されたが、一曲中一度づつ短く意識が戻られていたようだった。大きな動きなのですぐ分かるのだが決して迷惑な動きではなく、もしかして眠りのプロかも。・・・隣の奥様ウォッチングという楽しみを見つけたのだった。
演奏はというと・・、お正月らしい華やかな「こうもり」序曲はつんのめり。若干二十歳のバイオリニストは素人の私から見ても左手ピッチカート速弾きなど凄い!と思わせる超技巧派のようだが、あまり面白くない。サンサーンスの3番は好きな曲だけれど残らず。 秋山氏手堅くそつなくってなかんじ。
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