何でも帳。


同じ星を一緒に観る事が出来たのなら



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2001年11月06日(火) September-rain・6




こんな星の下に 生まれたことを呪う?
それでそんな自分を あきらめてしまう?


たった一言しか口に出せないんだったら、答は決まっている。


『愛してる』


一体何をそんなに 恐がっている?
一体そうまでして 守ってるのは何?






  「……で、どうしてあんな事になったのか説明してもらえるんだろうな?」


肩に担いで来たティアラをベッドの上に下ろして、寝かせて、上から目を合わせて尋ねる。
怖がらせるつもりはないが、優しい声を出す気にはなれなかった。
ほんの少しだけルックから事情らしきものを聞いた分、怒っている訳では無いのだが…それでも機嫌の悪さは残っているから。
部屋に戻ってくるまでの間、肩の上で散々騒いでいたティアラを無言で連れてきたのはその所為だ。
俺がずっと無言でいたのが怖かったのかどうか、ティアラの瞳は怯えていて視線が彷徨っていた。
  「………黙ってたら判んないだろ」
出来うる限り感情を抑えた声で再度尋ねる。
怖がらせるつもりも、怯えさせるつもりも無いのだが、だからといって、優しい声を出せる訳もなく。感情を殺した声、でしか話す事が出来ない。
そう尋ねてみても、ティアラから答が返って来なくて。
だから、上から瞳を覗き込んだ。カケラでもいいから何か見つけたくて。
瞳が逢ったのは、一瞬。
紅茶色した瞳はほんの一瞬後には逃げてしまったから何も、見出す事は出来なくて。
思わず小さく舌打ちして、ティアラの頤に手を当てて強引に自分の方に向かせる。
小柄な体が震えていたのは判っているけど、どうにも堪えられそうに、ない。
何も言わないのは肯定なのかどうか。それさえも見出す事は出来なくて。

  「…………それとも、俺には言えない様なコトなのか?」

酷く陳腐な言葉しか出てこない自分を恨めしく思いつつも、それでも声音は冷たくなってしまうのを止められない。そうでもしないと何を口にしてしまうか判らないから。
俺の言葉を理解した瞬間、ティアラは瞳を大きく見開いて、首をふるふると振る。
しがみついてくる、体。
抱き留める、腕。
伝わってくるのは互いの体温。
聞こえてくるのは微かな、いらえ。
  「……そうじゃ、ない。ただ……怖く、て……」
  「…怖い?俺が、か?」
それとも『話す事が』なのだろうか?…いや、恐らくは両方、なのだろう。
泣きそうに困っているティアラの表情からそれを察して、頤に当てていた手をそっと離して、頬に触れると、ティアラは俺の手に自分の左手を重ねる。
そして、瞳を伏せて静かに言葉を紡ぎ出す。
  「……ううん。フリックを怖い、とは思わない。
   だって、フリックが憤るのも仕方ない事だったと思うから…」
  「……だったら。お前がそんなに怖がっているのは何だ?
   俺が関係している事なのは判っているんだから…俺は知る権利、あるよな?」
長期戦は覚悟の上。
奥底にある自分の感情を外に出す事を厭っているのは知っているから。
…普段はあれだけ好き勝手言ってる癖に…とは思うのだが。
  「知る権利、って……確かにそうなのかも知れないけど…
   じゃあ、僕に黙秘権、とかは無い訳?」
苦笑じみた声でそう言われて、今更はぐらかそうとしてるのが判って。
つい、口をついて出る呼称。
  「……ティア。それ、お前の悪い癖だぞ?」
こつん。と空いている片方の手で軽く頭を叩くと、ティアラは苦笑を深めて、泣き笑いみたいな表情。
  「ん……ごめんね」
  「謝らなくていいから」
続きを促しても、まだ踏ん切りがつかないらしい。一体、何をそんなに怖がっているのやら。
逃げ出す様子は見えなかったから、ちょっと待ってろ、と言って、棚にあるワインを取りに行く。
少しでも、口が滑りやすくなるように…と、とっときの果実酒を。

大体、ティアラは俺が扉を開けた時、どれだけ驚愕したと思っているのだろうか?
それ程までに信じられない、場面だった。
時間がやけに間延びした様な感覚を味わうのは久しくて。
自分の舌が凍り付いてしまって、何も言葉を発することが出来なかった。…そう、何も。
俺がティアラの部屋に入ってからルックが言葉を発するまでの間は、時間にすればほんの十数秒だったのだろうと思うが、それでも自分の中では数分はあった様に感じられた。
ルックの言葉で、ようやく自分を取り戻して、何とか思考は動き始めて。
判ったのは、あれが合意の上では無いと言う事。
それだけは何とか判ったのだけれど、どうしてそういう状況になったのかは全く判らなかった。
ただその原因は自分にもあるのだろうという事は、詰る様なルックの口調や言葉から判って。

そんな事をとろとろと考えながらも、ベッドに戻るとティアラは上半身をベッドヘッドに体を預けていた。俺の気配に気付いて、顔を上げたのだけれど…その表情は何処か辛さを堪えている様に見えて。
無理に言わせない方がいいのか?と一瞬、思った。
  「……ティア?飲む、か?」
ボトルを見せて、そう尋ねる。
…ここまでして、無理強いさせてまで言いたくない事、を吐かせるのはティアラにとっていい事なのかどうか。ただ自分の勝手を押し付けているだけではないのか?
.ルックが先刻、俺に言っていた言葉を思い出す。
声、を出せない者にまで言葉を求めるのは愚かだと。
………そこまで、言いたくない事なのだとするならば。
  「少しだけ、もらおうかな」
ティアラはそう微笑って、俺の手からグラスを取って、向けてくる。
こぽこぽ、と静かに注いでやりながら、そっと口にする。視線は注いでいる果実酒を見据えたままで。
  「……どうしても言いたくない、ってなら……言わなくて、いいからな?」
  「…どんなに言いたくなくても、言わなければいけない時、っていうのはあると思う。
   それが今、だと思うんだよね…」
お互い、視線は合わせられずに進む会話。
ティアラは俺のグラスに勝手に酒を注いで、自分のグラスと重ねる。
かちん、と澄んだ音が聞こえて、次に聞こえたのも澄んだ、音。


  「…それをちゃんと言わないと『本当に言いたい事』が言えないから…」


……だからといって、果実酒を一気飲みするのはどうかと思うのだが?





………兄さん、甲斐性無いですよーっっっ!!(涙)
おかしい…ちゃんと甲斐性あるように努力していた筈なのですが。
煮詰まって電話で友達にアドバイスまで頂いていたのですが(今回のフリックさんセリフ、二つ、友達から頂きましたv けーちゃんありがと〜♪)
……やっぱりティアラサイドで書いた方が良かったのかなぁ、と今頃後悔してみたり。
ちなみに終りはまだ見えません〜っ!!あと何話で終わるの?それは私が一番知りたいですーっっ!(泣きながら脱兎。)


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