何でも帳。


同じ星を一緒に観る事が出来たのなら



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2001年10月14日(日) September-rain・3





僕は何を口にしたら、いいのだろうか?
ティアラが持っている『生と死の紋章』については、少なからず知っている。
そして、前の戦いでティアラがどれだけ辛い思いをしたのかも。

手を切り落とす事で、紋章の呪いから離れられる筈も無く。
大切な友達、から受け継いだ以上、自分の身体や命を粗末に出来る訳も無く。
…それらの事を他の連中より少しだけ知っている分、言葉を探しあぐねる。


  「………どうして、君一人だけが辛い思い、をしないといけないんだろうね…」

思わず呟いてしまう。
だって。こんなに苦しそうなのは見ている方だって、辛い。
  「僕一人だけ、じゃないと思うよ?
   フリックも。それにルックも……でしょ?」
  「……何のコト、だい?」
話が飛躍しすぎて、理解出来ない。
元々、ティアラは自分の思考内で話を進めるコトが多いから、時々こんな風に理解しかねるセリフを言う事があって。
ティアラは苦笑しながらも、僕が淹れた紅茶のカップを両手に包み込んで答える。
  「え?だって、僕がルックに面倒くさい相談?してるから。
   だから、ルックだって辛いでしょ?……ごめんね」
最後の言葉は、心底申し訳なく思っているのが伝わる分、僕にも苦笑が感染ってしまう。
だから指でティアラの額を弾いて。
  「今更、じゃない?そんなの。
   いいんだよ、好きでやってるんだから。
   ……で、それより『青いのも辛い思いしてる』ってどういう事?」
二人きりの時に、だけティアラにだけする仕草みたいな癖みたいな、をするとティアラは首をちょっとだけ傾げて戸惑いつつも。
  「………だって……誘いを断り続けてるから…だから……」
  「………………あの、莫迦」
どうしてくれようか。
そんなのティアラがオウム返しででも返答してからでいいじゃないか。
何を生き急いでいるのやら。青いのにも程がある。
いくらティアラを狙っている連中が多いからって、時期尚早だ。
怒りに任せて眉を思い切り顰めて呟いてしまうと、ティアラは慌ててフォローをしだす…いいよ、あんなの庇わなくて。
  「で、でもっ!!もしかしたら、アレって誘いじゃないのかも知れないしっ!!
   僕が勘違いしているだけかも知れないしっ!」
  「…誘われた、って、何、言われたのさ?」
不機嫌な声になってしまっているのが自覚出来た。
自覚がある以上は、ティアラにも伝わってしまっているんだろうな…と頭の片隅で思ったけれど。でも、どうにも繕えなくて。
ティアラは言葉の内容、よりも僕の声にびくびくしつつも、小声で返答してくる。
…別に、君に怒っている訳じゃないんだけど?
  「………『お前と一緒に朝を迎えたいんだ』……って…」
俯いているから表情を伺う事は出来ないけれど、でも、間違いなく赤面しているのだと思う。きっと、青いのがティアラに告げた時の反応と同じ様に。
  「…青いのにしては、まぁまぁじゃないの?誘い文句としては」
それが素直な感想。
どこぞの御曹司の『俺とめくるめく夜を過ごしてみない?』とかいうやけに軽い言葉よりはずっといい誘い文句だ。
  「で?ティアラは断ったんだ?」
  「……ん」
こくり、と頷く。気長に続きを待っていると、ティアラは不意に顔を上げて。

どこか辛そうな表情で言葉を紡ぎ出す。
  「好きなの。凄く。自分で気持ちを制御出来ない位。
   でもね…コレ、があるから」
そこで一旦言葉を区切って、擦ったのは右手。
二重の意味で、縛られてしまっているのか。
  「……言う事で、応じる事で喰われてしまう確率、高くなっちゃうなら…
   なら、いいや、って思うの……
   だって僕の所為で死んでもらいたくは絶対、ない。
   それだけは何が何でも、嫌だから」
きっぱりとした口調に瞳。それは死守してでもの望みなのだろうと思った。
自分の願いさえ捨ててでも叶えたい事なんて、そうそうある物じゃない。
そう考えている間にも、ティアラの告白、は続いて。
まるで外で降り続いている雨みたいに紡がれて。


  「…でもね……好きになってもらいたい、って思うの。
    ……我儘で、贅沢だよね…」
  「……感情はいつでも我儘なものだよ?」
僕がそう告げると、ティアラは瞳を細める。笑い顔の様な、泣き顔の様な。
  「側に居ないで、離れよう、とも何度も思った。
   でも、起きて、顔見たら、あと一日だけ、って思うの…」
何も言葉が出なくて、ただ頭を撫ぜてやる事しか出来ない自分を悔しく思った。



幸せになってもいい筈なのにね。
あんなに苦しい思いをしてまで、最後まで頑張って戦ったのだから。
やっと、探していた大切な人、にこの城でまた会えたのだから。



ティアラは自嘲気味に微笑って見せる。
こんな表情をする時は、大抵、自分の中でも判断がついていない時。
  「……どうしたらいいんだろ……いっそ、フリックが嫌ってくれたら、いいのに…
   そしたら、潔く、戦い終わったら別れられるのに」
それで、君が幸せになれるのなら。

それならば。







  「……………殺そうか?」




――― 僕は、喜んで憎まれ役になろう。






折角2話目で少しはフリ坊っぽくなったのに、今回の3話目で再びルク坊に戻った様な気がします(泣笑)
いやん。フリ坊なんですよ。この話っ!!
…やっぱり書く前にQでしていたルク坊がいけなかったのかしら…(遠い目)

それはさておき、今回の話でやっと『話を考えていた当初から「コレを書きたい!!」と決めていたセリフ』(←10/10日記参照)を言ってもらえました♪
ルックちゃんのラストセリフがそうでしたv
ワンフレーズのみのイメージソングは「空と君との間には」だったり!(笑)<♪君が笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる〜
でも実はこのセリフ、師匠宅の坊ちゃんセリフなんです。
上目遣いでおねだりして、転載許可をもらった上で使わせて頂きましたvすごくツボだったので、是非とも話に使わせて頂きたかったのです♪(W坊ちゃん(笑)なり茶でのセリフだったので、ルックちゃんに言ってもらっていますが(^-^;)

あと2、3話で何とか終わると思います。
前回の後書きもどき等で『フリックさんが最後まで出てくるか判らない…』と書いていましたが……出しますっ!(笑)
ありがたくも素敵な参考資料を頂いたのでvv
リアルタイムで拝見出来た時は、言葉でいい表せない位の感動でしたv
目指すはフリックさん甲斐性アップ140%(当社比)〜♪


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