何でも帳。


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2001年10月01日(月) September-rain・2




仕方が無いから、僕がお茶を淹れなおした。
ティアラは自分で淹れなおす、と言って聞かなかったけれど無視した。僕だって紅茶なら何とか人並程度には淹れられるのだし。
何より、あんな出過ぎたお茶は、体にも…心にもよくない。
幸い、ティアラが持っている紅茶の葉が、最高級品なのに救われて一応は美味しいと思える範疇に入る紅茶を淹れられて。
少しでも落ち着くように、とミルクも勝手に入れて差し出す。
  「………ルックが淹れたお茶が飲めるなんて、何か不思議〜」
落ち込んでいるよりはいいけど…でも、あからさまな表情して物珍しそうに言われるのは心外で。
一応、僕だってレックナート様の元で身の回りのお世話をしているんだから、最低限のコトは出来るんだけど?
  「…前もって言っておくけど味は保証しないよ?
   普段のティアラが淹れる方が美味しいに決まってるし」
あえて『普段』を強調して、そう言うとティアラは沈黙しながらもカップを両手で持って、一口飲む。さもや意外、という表情。
  「ちゃんと美味しいよ?」
  「……それは何よりだよ」
あえて、表情には突っ込まないでおく。
大体、僕がレックナート様以外の誰かの為にお茶を淹れるだなんて、自分でも想像だにしていなかったんだから。
こくこく、と幸せそうな顔をして、僕が淹れたお茶を飲むティアラを頬杖しながら見据えつつ、頃合いを狙って声を掛ける。
  「……で?一体、何があった訳?
   君の唯一無二の特技が、使えなくなってしまう位なんだから…何が、あった?」
言葉を飾るのも、もって回した言い方をするのも性に合わないから、そのままずばりで問うと、目の前のティアラは眉を顰めつつも苦笑する。
  「…ん〜。言わないと、駄目?」
上目使いで尋ねてくる辺り、始末が悪い。
本人は自覚が無いのだろうか?それとも故意にしているのだろうか?
その判断は彼と付き合いが多少は長い僕にも計る事が出来なくて。恐らくは、青いのでさえも計る事が出来ないだろう。
どちらにしても、はぐらかしてやる気など微塵も無い。
  「言いたくないなら、無理には聞かないけどね?
   ……ティアラ=マクドール、君が本当にそれでいいのなら」
多分、これは僕が持っている唯一の切札。
青いのが持っている、ティアラにしか効かない唯一無二の札の様に。
僕がそう告げると、目の前のティアラは一瞬、表情を強張らせる。まるで、目上の者に叱咤された時の様に。
…別に怒っている訳じゃ、無いんだけどね。
ただ、何か、があったのに、笑える状態じゃない癖に回りに遠慮して、造り笑顔を向けているのが気に入らないだけ。
僕にまでそんな気、使ってどうする気さ?
数秒、テーブルに置いたカップを見据えて考え込んでいたらしいティアラが不意に顔を上げて、少しだけ泣きそうな声で、答を。
  「……ううん。ごめん。少しだけ、甘えさせてもらってもいい?」
  「………僕でよければ、いくらでも」
君の運命を変える手助けをした時から、僕は、君の…ティアラの人生につきあう決心をしていたんだから。
ましてや開ける際に、風の紋章にティアラに風の加護と、神の息吹を自分の名に賭けて、誓ったんだから。魔法使い、が4大元素以外の存在に自分の名を賭けて誓う、だなんて、滅多な事でもない限り、ありえないのをきっとティアラは知らないだろうけれど。
それでも誓約、はいついかなる時も、必ずしや叶えられる。
  「…………例えば、好きな相手が自分を好いてくれているとするじゃない?
   そして自分もその相手を好きなのに…なのに、相手に『好き』って言えないのって
   ……結構、辛いものだと思うんだよね……」

……例え話、になっていないと思うのは僕だけなのだろうか?

少しだけずきずきと痛み出したこめかみを押さえつつも、言葉を返す。
  「…いつもあれだけ、青いのになついていて、散々好きだの嫌いだの言ってる君が
   一体、何をもってしてそういう事、言い出してるんだい?」
だから惚気話なら、他の連中相手にして欲しい、と心底、願ってしまう。
それとも、他の誰かに恋愛相談でもされたというのだろうか?まさか。
ティアラに相談する位なら、周りに吹聴されるの覚悟で熊にでも相談した方がまだマシだ。
そんな事を思っていると、ティアラは瞳を閉じて、首をふるふると降る。
紡ぎ出される言葉は、何処か悲痛染みていた。
  「……えっと、ね……好き、とは言えるの。
   でも、違う言葉が、言えなくて…『言いたい』のに言えなくて…だから……」
そこで言葉は途切れてしまうけれど、続きは大体想像がつく。そして『違う言葉』も。
ただ、どうして『言いたいのに言えない』のかまでは判らないけれど。
  「………オウム返しで言えばいいんじゃないの?
   『愛してる』って…青いのが言ってくる言葉、そのまま言えない?」
好きになった相手が、好きになられた相手がお互い同性、というのはこの際、目を瞑るとして。
本人達がそれでいいなら、僕はそれに対して口を挟むつもりはない。馬の足に蹴られたくもないし。
でも、たかがその一言、をティアラが言えずにこれほど困っている理由、が判らない。
好き、とは口に出来るのに?
ティアラは、僕の問いに泣きそうな声で答える。
  「……だって、そんなの言えない……コレ、あるもん……」
コレ、と言って向けられたのは、右手の甲。
テーピングで見えないけれど、その下には『生と死を司る紋章』が密やかに。
そして、僕は大きく溜息をついて、窓の外の空を見上げる。
早秋の空は、真夜中の青。しかも雨まで降らせていた。





…ちょっとはフリ坊の話っぽくなって来たでしょうか?(^-^;
どーでもいいコトですが、ティアラとルックの会話だと『…』が多くて、打つのがちょっと大変。
私のフリ坊師匠のIクラさんは、さぞかし大変ではないかと思ってみたり。(師匠宅の坊ちゃんは三点リーダー多用なさる寡黙な坊ちゃんなのですvラブvv)

更に判る人にだけ判るハナシ(笑)→ルックが思っている『青いのにしか使えなくて、ティアラにしか効かない唯一無二の切札』は残暑お見舞い話フリ坊Verで、フリックさんが言っていたあの言葉、です♪
…いえ、まったく話の本筋には関係ありませんが(^-^;

次回では、も少しティアラが悩んでいる本題、について書けると思います。
ホントは今回の話で書けると思っていたのですが…大概にしなさい。ティアラ(苦笑)

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