嗚呼!米国駐在員。
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2006年02月26日(日) 日本人である事の幸せ / どこの国の社会に属すのか?

我が社にはフィリピン人の社員がいる。
フィリピン人とはいえ、幼い頃に親に連れられアメリカに移住してきたので、人生の大半はアメリカ暮らしだ。我々からすればすっかりアメリカ人に見える。

フィリピンの非常事態宣言を話題に出し、「このままアメリカに住みたい?それともやっぱりフィリピンの方がいい?」と、愚問と思いつつも少々いじわるな質問をした。

「フィリピンがいいに決まっているけど、私達(のような移民)は帰ってもあまりいい思いはしない、と聞くから・・・。」と言っていた。フィリピン人からはアメリカ在住者は自国民と見られずに、生活がうまくいかないという。



自分のように30過ぎて初めてアメリカに来て生活すると、アジア系2世などの移民という存在に驚く。彼らは顔はすっかりアジア人だが、言葉は完璧なアメリカ人である。

特に中国人の移民は多い。
アメリカ人の俗語では、中国人の移民(2世、3世)のことをABCと言うことがある。ABCは、American Born Chineseの略と言われるが、まあ蔑称であろう。また、アメリカ在住のアジアの2世、3世をBanana (皮は黄色いが中身は白い)と呼ぶこともあると言う。これは完全にバカにしている。


アメリカに山ほどいる、アジアの2世、3世の方々の心境はどんなものだろうか。

彼らは外見はアジア人だが英語しか喋れずに、ものの考え方もアメリカ流だ。しかしアメリカ人からすれば、彼らはやはりアジア人であり、逆に彼らの祖国からすれば、彼らは完全に「アメリカ人」とみなされる。

自分も日系の人を知っているが、日本語も分からず日本での生活も経験のない彼らを、なかなか日本人だとは思いがたいのが正直なところだ。

これらの人が直面するアイデンティの危機とは、どんなものだろうか。社会において自分のグループを見出せず、心理的にもよりどころがない。
アメリカの白人には白人の社会があるし、中国人には中国人の社会、日本人には日本人の社会がある。彼らはどこに属すればいいのだろうか。
戦争等、どうにもならない事情でアメリカに移民してきた人、自由な生活、豊かな生活を夢見て一大決心をして祖国を離れてきた人、それぞれ事情は様々であろう。でも、彼らは一体どの国にいるのが本当に居心地がいいのだろうか。


自分は長年日本で過ごして、どこにいってもやっぱり日本人だと思う。
日本にいるときは日本の文句ばかり言っていたのだが、海外に出て生活して日本の素晴らしさを改めて認識した。どんなにアメリカの生活が快適でも、やっぱり日本で過ごしたい、と思う。

日本では、幼少時代から英語をみっちり勉強させて出来ればアメリカ移住させたい、とまで言う親がいると聞く。

子供にどうなってもらいたいのだろうか。



Kyosuke