嗚呼!米国駐在員。
<目次>戻る進む


2005年11月22日(火) この国が誇れる産業とは? - GMリストラ

アメリカの象徴といってもいいだろう、自動車最大手のGeneral Motors(GM)。

昨日発表されたのは、2008年までに9工場を含む北米12拠点を閉鎖するなどの大規模リストラ策。工場労働者はなんと約3万人がリストラされる。






まずこの一報を聞いた時、「過去」にこだわる日本では考えられないようなスピードで世界を代表する大企業が随分と思い切った決断をしたものだ、という印象を持った。リストラを発表したChairman、ワゴナー氏の、“won't run and hide(逃げも隠れもしません)”は、いかにもトップの毅然たる発言そのもの。

日本でトヨタが経営不振に陥ったとしても、一気にこんなに大胆なリストラは可能だろうか。いつでも「過去」にこだわってなかなか抜本的な改革が進められない日本と異なり、このスピード感はさすがアメリカ流経営だ、と妙なところで感心した。


ただ、GMの状況は非常に深刻、まさに「倒れかけの巨像」だと思う。
今年9月までの合計赤字額は既にUS$3.8Bil (4500億円)。退職者まで面倒を見ている医療費負担も重く、いつ倒産してもおかしくない状況。

かろうじて国を挙げて世界一の自動車メーカーの看板を必死に守ろうとしているが、もう防戦一方である。株価は一時、ブラックマンデー(1987年)直後の水準となる20.6ドルまで下落。なんと18年ぶりの安値となり、ジャンクボンド扱いをされているという記事が出た。

自動車販売だって新車1台US$3000以上も値引きしてたたき売っているのに、10月の販売は2割減。マーケットシェアも下落の一途。消費者は故障が多く魅力のない車に完全にそっぽを向いている。リストラは人員だけでなくて新モデルの開発も一部無期限延期となった。もはや、将来がないメーカーなのである。


全世界で年間900万台を生産するトヨタが世界一の座につくのは、もう時間の問題である。もっとも、トヨタの本心はこんな落ちぶれメーカーなど相手にしていないのだろうが。




それにしても、アメリカを代表する企業がここまで落ちてしまうと、もうこの国の製造業は何があるんだ?という感じだ。

自動車のみならず、家電、鉄鋼、機械、軒並み世界で生き残れる状況ではない。結局は、医療、卸売・小売、金融・保険を含めたサービス業しかこの国には残らないのか。

「権利」ばかりを主張してすぐにストや訴訟をする組合従業員のモラル。大きく足を引っ張っているのは事実だろう。

それが文化だ、といってしまえばそれまでだけど、会社がつぶれそうでも自分達の権利だけを要求してストを行う。今回のGMのリストラ発表に対しても、早速 “UNFAIR”との声明を発表した -「俺達の責任じゃない」。そんなことばかり言いながら結局は全員共倒れになって、一体何が楽しいのか。

ブッシュだって石油と戦争だけでなく、もう少しテメエの国の産業を心配したらどうなのかね。ダンピングによる国内産業保護ばかりしていては、強い企業は出来ない。大国だからって偉そうにしている状況ではないだろうにねえ。

でも、なんだかんだといっても、ここは(経済的に)強いアメリカの復活を期待したい。いくら売れていない、とは言ったって、GMという会社は今でも1日平均1万2000台を販売(米国内)する自動車メーカー。それでいて、CORVETTEなんていうトヨタには逆立ちしても作れない車を作るんだから。









Kyosuke