嗚呼!米国駐在員。
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2005年11月07日(月) ロンとヤス

取引先の人が自分のファーストネームを呼ぶ。

これは親しくなった証だろうか。- いや、とんでもない。

単なるアメリカの習慣であるから、勘違いしてはいけない。
会ったばかりの大企業のお偉いサンだってファーストネームでこちらを呼んでくれる訳だし、レストランの座席についたらウェイトレスが、「ハ〜イ、私の名前はキャッシー。あなた方のテーブルを今日担当させてもらうわよ。」と挨拶してくる。訳の分からない飛び込みセールスの電話だって、「やあ、俺の名前はボブ、あんたは?」なんてのを平気で言ってくる。

最初はいちいち、いやあ、アメリカってのは社交的だなあ、みんなフレンドリーだ、なんて思った一方、赴任当初はなかなかこちらから相手をファーストネームで呼ぶなんてのも躊躇した訳だが、今ではすっかりと慣れてしまった。言葉だけではなく、メールでもLAST NAMEが出てくる局面はほとんどない。たまに大事な案件で相手を敬うべく、ATTENTIONにMr. なんてつけてみるのだが、なんだかよそよそしいだけかもしれない。相手はこちらの気持ちを分かってくれているとは思えないようだ。

テレビのアナウンサーが「シンゴ」と言っているのを耳にして、「ああ、元ホワイトソックスの高津臣吾か」と思ったら、画面上にはカーボーイハットのプロゴルファー「片山晋吾」。ああ、そういえば2人とも同じ名前か、と改めて思ったこともある。
見知らぬアメリカ人から、こちらが日本人と分かって、「デェッキィはいい選手だなあ」なんて話かけられて最初は訳が分からなかったが、これはヤンキースの松井秀喜のことである。とはいえ、イチローの事を「スズキ」と言ったりする事もあるからよく分からないのだが。

とにかく、日常ではあまりにファーストネームが根付いているから、ラストネーム(名字)はもはやどうでもいい感覚がある。
取引先に、こちらのラストネームは何か覚えているか、と聞くと、分からない、という人は多いし、自分でもよくよく考えてみたら、毎日会話している同じ社内のアメリカ人のLAST NAMEも自分は分かっていない。

それが実態だ。


俺達はロンとヤスと呼ぶほど親密な仲だ - と、一昔前の総理が自慢していてさすがナチソネだなあ、なんて思ったのだが、今から思えば何てことない話だ。


Kyosuke