嗚呼!米国駐在員。
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2005年09月26日(月) 中国裏金事情(運転免許証編)

上海現地法人の現地スタッフ(中国人)と食事をした。
先日、念願の運転免許を取ったのだが、どうやら「裏口入学」だったようである。

「だって、運転は苦手だし、3ヶ月以上も教習に通っていて、もうこれ以上通うのが嫌になってしまったから。」と、親が経営者であるその裕福な若者は恥ずかしげもなく言った。


中国では、まずは筆記試験(これは簡単らしい)。その後に実地(これが問題)。教習の先生が横に乗って一通り教えてくれた後に、最終試験として交通省だかの担当官が助手席で生徒の運転ぶりを見て合否を判定する。日本と違って、人間が最終合否を決定するというあたり、いかにも含みを持たせた中国の制度である。逆に言えば、その担当がノーと言えば、どんなに素晴らしい運転をしても免許証はもらえない。要は免許を取るには面接官に気に入られなければならない。



こちらの関心は、どうやってこの裏金を渡したのか、の一点。気になるそのアプローチを聞いてみた。


それは、教習も終わりに近づいた頃。担当の先生に、

「どうしても試験に受かりたいのですが、どうしたらいいか教えてください」

と伝えたところ、

「400元(約5200円)。」

とだけ答えたそうな。月収の30-40%といったところか。このスタッフ曰く、この質問の仕方が難しいようで、いきなり「いくら払えばいいですか?」なんて聞いて相手が怒る場合だってあるから、慎重に相手の性格などを把握せねば難しい、簡単にはいかないんだぜ、と豪語。自慢することじゃないだろうが。

配分として、400元中100元はカネを受け取った教習の先生。残りの300元が合否判定を下す担当官に渡されるようだ。


そして迎えた最終試験。これは一般道に出ての教習。
まあ大丈夫だろうと思っていたそうだが、カネが実際に助手席の担当官に渡っているのかはわからない。もちろん、おカネもらっていますよね?とは聞くことが出来ない。

おそるおそる運転を始めた。車をまっすぐ走らせて約十秒。そこで、

「ハイ、止まって。試験、終了〜!」


こうしてめでたく試験は終了した。下手にこれ以上走らせてボロが出る前にやめよう、という、担当官の見事な心遣いである。



彼は裏金のおかげで一発合格をしたのだが、最後に担当官より、「しばらく運転は絶対にしないこと」と約束させられた。

何故か?

中国では、免許取得者後1年以内に事故を起こした場合、合格を出した担当官の責任になるからである。

ちなみにこの若手スタッフ、教習ではカーブは曲がれないは、バックはいつもぶつけるはで、運転は全く出来ない、と豪語していた。面接官は彼の運転スキルが乏しい事はよく分かっていたのだろう。

こんな奴らが平気で街中を運転している中国なのである。



聞けばこの男、奥さんが一足さきに免許を取ったので、馬鹿にされないようにどうしても免許が欲しかったのだとか。

「奥さんは裏でいくら渡したの?」と冗談で聞いてみたら、

「馬鹿にしないで下さい。私の妻は絶対にそんなことしません。」と真っ赤になって怒り出した。



「私の妻は、担当官を2回夕食に誘ってその後カラオケに行っただけです。本当に失礼な!」


君達はたいしたもんだよ。


Kyosuke