嗚呼!米国駐在員。
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2005年05月20日(金) 中国企業の新人君 (後)

(前回の続き)

「迷いに迷った末の決断でした」

という出だしでメールが始まった。

「まずはこれまで迷惑ばかりかけて申し訳ありませんでした。本当にすいませんでした。私のミスの為に、あなたのトラブルを広げてしまったことを本当に反省しています。」

おかしな英語だったが、ともかくSorry,Soryが連発されており、痛いほど気持ちが伝わった。

そして、「あまりにも自分が不甲斐なくて、こうした結果が今回の私の決断を早めました。」という文章には、なんだか複雑な気持ちがした。口うるさく言い過ぎたかなあ。

「これからは上海に移ってMBAを取得するために学校に入ります。次に会うときには私も多少はましなビジネスマンになっていますよ。」

そうか、勉強するんだ。いつか社長になりたいと言ってたからな。

「それから、本当にお世話になり有難うございました。私はミスばかりしましたが、あなたがその度に文句を言うのではなく丁寧に色々教えてくれた事はこれからも忘れません。仕事以外のことも色々教えてくれたのはほんとうにうれしかったです。」

はて、何か教えたっけ?

「例えば、3月に中国に来られましたね。実はあの時自分が着ていたスーツは、あなたの訪問の為に生まれて始めて買ったスーツだったのです。そこであなたは私のスーツ姿を見て、ネクタイの結び方とかボタンの留め方とか丁寧に教えてくれました。私にとっては、とても新鮮でした。これまで何でも教えてくれた両親からではなく、こうしたことを取引先の外国人に教えてもらった事が自分にとっては本当に不思議な感覚でうれしかったのを覚えています。」

そういえばそんな事があった。
その時、彼が七五三のような格好で現れたんだった。せっかくのスーツの3つボタンも全部きっちり閉めてしまって、ネクタイはおかしな結び目に長さは3分の一。初めてのスーツとはつゆ知らず、あまりにトンチンカンだったのでこちらとしては突っ込みを入れた所だけど、感謝されていたとは。

メールの最後にはこれからの連絡先が記してあった。


現在、新しく着任した彼の後任がこちらの仕事相手になっている。非常に頭の切れるスマートな感じで、ミスなどありえないような感じだ。こちらの仕事も格段とスムーズになってきた。 
それでも何となく物足りなさを感じるのは不思議である。


上海のオフィス街でスーツをぱりっと着こなした彼と再会出来るのを楽しみにしている。


Kyosuke