嗚呼!米国駐在員。
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2005年02月04日(金) ブッシュの演説と国民の支持率

昨日(2日)、アメリカ大統領一般教書演説が行われた。

何ぞや?真面目に調べてみた。一般教書演説とは、米大統領が上下両院に外交や内政情勢を報告し、国の現状(State of the Union)についての大統領の見解を述べ、主要な政治課題を説明するもので、毎年年頭におこなわれる。そのような演説が折りに触れて行われるべきであることはアメリカ合衆国憲法に規定されているという。

「予算教書」( 来年度予算案の編成方針を大統領が議会に提示)、「大統領経済報告」(当面の経済情勢に関する判断を示す)とあわせて、3大教書とも呼ばれる。恥ずかしながら知らなかった。無知は罪なり。

昨日の演説は、公的年金改革に大きなウェイトが置かれた演説となり、国内制度の改革を次々と強調した。テレビでも中継されたのだが、面白いのは、ブッシュが政策を発表するたびに、いちいち共和党議員が立ち上がって拍手したことか。実にわざとらしいのだが。一方で民主党議員は座ったままという状態が繰り返され、対立が浮き彫りになった。共和党議員もいい運動になっただろう。

主な国内制度の改革は以下。

1.財政赤字
減税措置を恒常化、2009年までに財政赤字を半減させる。

2.職業教育・訓練
職業訓練システムの改革とコミュニティ・カレッジの強化により、職業教育・訓練の対象となる労働者を20万人増加させる。

3.医療保険対策
過剰な医療過誤訴訟が健康保険費用を押し上げ、国民全員が医療保険を受けられずにいるため、訴訟要件を厳しくすると約束。 低所得層を対象とした税額控除制度、医療情報の電子化、小規模企業向けのグループ保険の普及、等。

4.移民政策
期間限定の外国人労働者を認める。

5.公的年金改革
                                     最重要課題として掲げられた公的年金。大統領は「55歳以上の人に約束する。あなたにとっての社会保険は何も変わらない」と約束した。その上で、現行のままでは制度は2042年には完全に破たんすると警告し、加入者が安心して年金を受け取れるようにするため、社会保険の財政状態を根本的に改革する必要があると強調した。
主なポイントは、改革はゆっくりとしたスピードで行うこと。若い層が十分に備える時間を設ける。個人勘定を設ける。勘定の残高は、子供、孫に相続できるようにする。 投資対象は、社債・株式の保守的な組み合わせに限定する。個人勘定からの一時金による全額引き出しは認めない。公的年金への付加金として、長期間にかけて給付を認める。そして、個人勘定への拠出限度は、ゆっくり引き上げ、最終的には報酬の4%とする。

6.結婚形態
「結婚という制度を、裁判官が勝手に作り替えたりできないよう」「憲法修正が必要だ」と、これまでの立場を改めて強調し伝統的な結婚形態を保持する。


大統領のこうした国内制度の改革が発表された。
これが全て実行されれば率直に素晴らしいとは思った。今朝の世論調査では、医療保険の改善で70%が支持すると回答、社会保険では66%が賛意を伝えたという。そして、両分野で大統領の施策を支持する層は、演説前の比率と比べ、平均15%増えたと報道された。

そして外交について。
自由と民主主義の拡大によって「圧制とテロの台頭」を阻止する方針を表明。イラク民主化と中東和平の実現を目指すとともに、アジアや欧州の同盟国と協力して外交手段で北朝鮮とイランに核開発を断念させる考えを示した。また、イラク対策を中心に外交問題に触れた。中でも、イラク国民議会選挙の成功を評価し、米国の支援続行を改めて約束する一方、イランとシリアに対しては「テロ支援国」と厳しい調子で批判し、特にイランには核開発計画を停止するよう警告した。
あいかわらずの身勝手な単独行動主義である。

世界世論調査の結果では、ブッシュ大統領で世界平和に悪影響が出るとの回答が、平均で58%にも達している。世界の大半が、ブッシュ政権下で国際情勢が不安定化すると考えているのである。

一方で、米国民を対象とした調査では、逆に56%がブッシュは世界の安全に役立つと回答している。そして、今回の国内制度で支持層を増やした。自分の周りでも、圧倒的にブッシュを支持するアメリカ人が多い。

ブッシュに対する評価、米国と他国では全く正反対なのだ。でも、アメリカ人は他国の評価なんて全く気にしないように思えるのである。


Kyosuke