嗚呼!米国駐在員。
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2004年12月06日(月) 1ドル=90円を求めるGMの無責任さ

世界一の自動車販売を誇るGMの不振が止まらない。

11月の新車販売台数は30万台を割って前年同月比で−16.5%。
トヨタが4.4%、日産が25.7%と数字を伸ばしているのとは対照的な結果が出た。既に在庫は過剰、今後の減産体制も決定しており、ますます日本メーカーとの格差が拡大するのは明白となっている。

GMは来年に米国だけで7工場を閉鎖、従業員1万3千人を解雇する計画を出している。これは、単なる不振を越えて危機的な状況である。GMは従業員への医療費負担もかさんでおり、2003年で48億ドル。新車を1台売っても利益の1400ドルが医療費負担で吹っ飛ぶという現象に陥っている。

こうして日本メーカーとの差が広がる一方なのだが、GMは政府に対して1ドル=90円が妥当という持論を展開して圧力をかけている。自分達の車が売れないのは、為替によって日本車が恩恵をうけているせいだ、という、責任転嫁そのものである。

経営陣の失敗、そして全く魅力的な車を販売していないくせに何て身勝手な主張だろうか。

正直言えば、GMの車は全く魅力的ではない。トヨタがカムリ、ホンダがアコード、FordがF150という看板商品を掲げている強みがあるのに対して、GMは代表的なラインアップが何もない。唯一の秀作と思えるコルベットは一部の富裕層のものであって、あくまで特別な車である。

たまたま、アメリカという国が広大であり、イナカモノの人口が無視出来ないという事情でこれまで売れてきているだけの話。何でそんな事実に気が付かないのだろうか。 こうしたイナカモノは代々GM車を買い続けてきているので、何の疑いもなく車を買い替える際はGMのディーラーに向かう、ただそれだけの話である。まるで、彼らが大統領選挙で何の疑いもなくブッシュに投票してしまったのと同じようなものである。
確かにイナカに行くと、GMのディーラーはあちこちにある。言ってしまえば、そこしか買うところがないから売れているのだ。

賢明な消費者は、輸入車へとシフトしている。
代表的なのは日本車やドイツ社のみならず、韓国車だって伸び率19%と成長著しい。明らかに、GMがそっぽを向かれだしている。

そんな本質に直視せずに、相変わらず為替という目先の操作で自分達を優位に持っていこうと考えている。彼らは分かっていない。為替の為にたとえ10%日本車の価格が上がったとしても、GMには客は戻ってこないんだと。悔しければ、消費者が目を輝かせるような魅力的な車を作ればいい、本業で結果をだせ、それだけの事である。

とはいえ、GMという会社は全米一の民間企業といっても過言ではないから、米政府も耳を傾けざるを得ないであろう。なにせ、販売不振といってもアメリカだけで1日に1万台も新車を売ってしまうのだから。


Kyosuke