嗚呼!米国駐在員。
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2004年12月05日(日) 浅田次郎著 「蒼穹の昴(上/下)」

土日は気温2〜3℃前後を行ったりきたりで、比較的過ごしやすい週末だった。それにしても、最近はいつも午後4時過ぎで外は真っ暗になってしまう。何とも気分が重くなるものだ。

浅田次郎著 「蒼穹の昴(上/下)」ようやく読了。

これまで三国志を初めとした歴史物語はことごとく挫折してきたのだけど、何とかこの本は読めたかな、という感じだ。

主役は春児(チュンル)と梁文秀。
貧農の子であった春児は宦官、方や梁文秀は科挙を経て進士という、仲の良かった2人はそれぞれ違う道を歩みだすものの、着実に地位を高めていく。

宦官と進士とは交流することが禁じられているために、表面的な2人の交流は途絶えていくのだが、それでいて2人の間の深い信頼関係というのは着々と絆を深めていく様が興味深く描かれている。

宦官とは?科挙とは? この2人を通じて、こうした世界の仕組みについての理解を深める事ができる。のみならず、西欧列強に侵食される清朝末期と、一方で近代国家への革新をはかる新たな勢力の挑戦を描く壮大なスケールの作品となっており、こうした歴史の大きなうねりも無理なく掴むことが出来る。

それにしても、浅田次郎氏、何者ぞや。
恥ずかしながら、話題となった「鉄道員(ぽっぽや)」も「きんぴか」も読んだ事はなくてこの小説が初めなのだけど、歴史上の人物の描写のあまりにも細かいこと、詳細な文化的記述、見事なリアルさであって、どこが創作でどこがノンフィクションなのかの見分けもつかなかった。

大学受験の為に世界史で学んだ人物名や戦争。
当時は試験の為に暗記する単語でしかなかったのだけど、こうして大きな流れの中でそれぞれの出来事を捉えてみると、これまで知らなかったそれぞれの意味合いの大きさにうなずいてしまう。

日清戦争は日本と清国との戦争ではなく李鴻章軍との戦争だったなんて知らなかったし、香港島のイギリスへの租借条約の際の李鴻章の巧みな交渉術。列強に食い潰されていた清朝の混乱。

当時こんな本を読んで歴史に触れることが出来ていたら世界史も楽しかったろうに、と今になって思うのだけど、その当時は遊びほうけていたのでそんな事は考えもしなかった。まあ、よくあることだけど。

この本、初版は1996年で今から8年も前。タイトルも全然知らなかった。自分は一体何やってたんだろう。調べると、今は文庫本まで出ている。


実は、この本は両親がお勧めと言ってアメリカまでわざわざ送ってきてくれたのだが、自分の親がこんな歴史小説を読む趣味があったなどとは、全く知らなかった。出来の悪い坊主には、そんな話をしても無駄だと思ったのか、それとも、子供の手が離れてから、趣味の世界を広げたのだろうか。

いい本を送ってくれたものだと感謝。


Kyosuke