嗚呼!米国駐在員。
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2004年10月29日(金) 全米で最も渋滞している場所は?

アメリカで最も“渋滞”している場所は?

答えは間違いなく西海岸の港であろう。
現在コンテナ数千本に相当する約90船がLOS/LONGBEACHに入港中であり、荷降ろしされるのを待っている。そう90船が海の上でただ浮かんでいる。その光景は、さながら船の博覧会のようだ。これは通常の倍以上の船数である。

従来は3日程度で荷降ろしが完了するのだが、現在は10日以上を要する。アメリカの輸入品の半数は、これらの港を通じて持ち込まれる。年間、世界の各国から1130万個のコンテナを受け入れるただでさえ忙しい港が、輪をかけて混乱状態になっているのである。

通常時と比べてたかだか6〜7日の違いじゃないか、と言うなかれ。
各業界はコスト削減で目一杯在庫を減らしている上に、アメリカでも当然"Just In Time"システムが定着している。「欲しいときにモノがない」状況は、販売店のみならず、各業界に取って死活問題なのである。

アメリカで輸出入に関わる仕事をしている人ならば、現在誰もが頭を痛めている問題だ。

原因は何か?
港での熟練労働者が極端に不足している事に加えて、中国からの輸入の急増。そう、誰もが予想できないほどの中国製品が入ってきていることが原因なのだ。おもちゃ、洋服、靴、日用雑貨、などなど。

季節柄、8月以降10月までは毎年輸入品が増える。ハロウィンにThanks Giving、そしてメインのクリスマスという一大イベントのためである。当然、プレゼントやら飾り付け商品を買うために、毎年この時期は客は店へと足を運ぶ。

こうした買い物をする場合に思いつくのは、MEGARETAILERと呼ばれるWAL*MART
おそらく、中国品の小売商品の扱いとしては全米一ではなかろうか。巨大な敷地の店の中の商品という商品が MADE IN CHINA である。

この怪物 WAL-MARTが、クリスマス商戦に向けた中国からの輸入品を一気に10月に持ち込もうとした事も大きな影響を与えているという。通常は、こうした会社はリスク分散のためにも、8月、9月、10月と分割して輸入するというが、“入着後そのまま店頭に並べられるよう、商品はギリギリに受取る。そうすれば在庫費用が発生しない”事を優先させた、新聞に書いてあった。

迷惑だけどもしょうがないのである。

困ったことは重なるものだ。
折からのガソリン高騰である。港に出入りするトラック業者の多くは、固定レートで品物を運ぶ。当然、ガソリンの高騰が彼らの利益を圧迫するので、うまみのない商売だ、と判断して転職をしたりする人が多く、ここでも労働者不足が問題となっている。
せっかく商品がコンテナから陸に下ろされても、運んでくれるトラック探しでまた一苦労なのである。

実はこの西海岸の混乱は自分の仕事にも大きく影響を与えている。
毎日、客から荷物はまだか?と連絡を受ける。

アメリカの企業には「西海岸経由なんで」と言えば事は足りるので楽チンだ。客も「じゃあしょうがないな。グッバ〜イ!」と電話を切る。

まるで鬼の首を取ったように、「何とかしたまえ、困るじゃないか。明日飛行機で送れ。」などと無茶を言うのは、決まって日系企業のオヤジだけなのである。


Kyosuke