みのるの「野球日記」
==すいません、ちょっと宣伝です==

●『中学の部活から学ぶ わが子をグングン伸ばす方法』(大空ポケット新書)

新刊が発売になりました。
しらかし台中(宮城)の猿橋善宏先生の
指導法などが掲載されています。
詳しくは、大空出版HPをご覧ください。
http://www.ozorabunko.jp/book/gungun/

●『グラブノート』(日刊スポーツ出版社)
BBA梅原伸宏さんのグラブ本。構成を担当しました。
親指かけ・小指かけの結び方、グリスの入れ方など、
グラブをよりよくするための方法が書かれています。

*ツイッター始めました
@mino8989 です。

2005年10月08日(土) 神奈川大会準決勝(1) 東海大相模・田中大二郎決勝2ラン

秋季神奈川大会準決勝 第1試合
桐蔭学園高 121200000|6
東海大相模 00100052/|8

 4回を終え、1対6と5点のビハインド。しかし、東海大相模ベンチは、ひっくり返すチャンスを虎視眈々と狙っていた。
「4回が終わったあと、加賀美投手の球数が77球。これは多い。5回が終わる頃には、100球を超える。そのあとが勝負、と選手に声を掛けていました」
 試合後の東海大相模・門馬敬治監督。タオルで気持ちよさそうに汗を拭いながら話した。
 桐蔭学園の大黒柱・加賀美希昇。秋はブロック大会から、ほとんど一人で投げ抜いてきた。関東を決める大事な準決勝で、加賀美のあとを任せられる投手はいまの桐蔭学園には見当たらない。東海大相模ベンチには「加賀美の疲れを待って、一気に畳み掛ける!」という思いが強くなっていた。
 
 門馬監督の言葉通り、東海大相模は7回裏にチャンスをつかんだ。
 無死から9番の鈴木宏治がレフト線の二塁打で出塁すると、以下、1番小玉雄介から4番田中大二郎まで怒涛の4連打で4得点。さらに、2アウト一、三塁から8番に入っていた先発高山亮太がライト前にしぶとく落とし、ついに同点に追いついた。

 序盤は、「桐蔭のコールドか?」と思えるほど、劣勢に回っていた東海大相模が、一気の攻めを見せた。
 両チームは夏の準々決勝でも戦っているが、このときも東海大相模は3点ビハインドを7回裏に追いつき、さらには4点を勝ち越された直後の8回裏に、再び4点を奪い同点。延長13回にサヨナラ勝ちを収めるという脅威の粘りを見せていた。
 この日も、夏の再現なるか。流れは、東海大相模に傾き始めていた。

「加賀美投手の球数を見て、絶対にチャンスは来ると思っていました。ただ、じっと待っていては何も来ない。どこかで動かなければ、ゲームは動かない。だから、ぼくはあの場面で動いたのです」
 試合後、そう振り返った門馬監督。
 あの場面とは、6回裏、1アウト一塁で6番長谷川隼也の場面だ。門馬監督はカウント1−1から、エンドランを仕掛けた。この試合、これまで盗塁もエンドランも掛けずにいた、門馬監督が6回裏にして初めて動いた。
 長谷川は期待に応え、センター前ヒット。結果的に、後続は打ち取られ、無得点に終わったが、「ゲームを動かす」という門馬監督の意識が選手にも伝わっていたのではないだろうか。
 門馬監督は7回裏、同点においついたあと、なおもノーアウト一塁で5番兵頭悟の場面でもエンドランを仕掛けた。結果はセカンドゴロで、状況は1アウト二塁へ。とにかく、「動かして、流れを自分たちに引き込む」という意図が感じ取れた。

 迎えた8回裏。2アウトから3番田中広輔がライト前ヒットで出塁すると、打席には4番田中大二郎。ここまで3回裏に犠牲フライ、7回裏には同点となる2点タイムリーをはなっており、すでに3打点を挙げていた。

 しかし、先週の準々決勝の4打席目まで、田中大二郎は不調に陥っていた。センバツ甲子園で2試合連続本塁打を放ったスラッガーも、夏の県大会からチャンスで凡打を繰り返し、秋も公式戦では結果が残せず。
 門馬監督は「練習ではすごい打球を打っているが、試合になると、『おれが打ってやろう』という気持ちが強すぎて、打たなくていいボールまで打ってしまう」と分析していた。
 しかし、準々決勝の相洋戦。5打席目に、保土ヶ谷球場のライト場外へ消える特大2ランを放ち、それまでのモヤモヤがやっと吹っ切れた。
 試合後には、「やっと出ました…」と安堵の表情。「これで乗っていけたらいいです」と、久々に笑顔も見られた。このとき印象的だったのは、「試合で打つには技術ではなく、気持ちが大事だと分かりました」との一言。やっと出た一発に、気持ちはどう変わるか…、それが1週間前のことだった。

 対加賀美。
 初球、外へのスライダーが外れ、1ボール。2球目はストレートがインローにはずれ、カウント0−2。
 同点で迎えた8回裏。ランナーを置いて、打席には4番。多くの観衆が、「ここでホームランが出れば…」と期待していた。
 田中大二郎も、打席に入る前から「ここは一発決める」と意気込んでいた。
 その姿が見られたのが、0−2からの3球目。外のストレートを強振するが、バットの上っ面に当たり打ち損じ。打球は高々とライト線へ上がり、ファウルかフェアか微妙な当たりとなった。しかし、田中大二郎は一塁へほとんど走らず、打球を見つめたまま。結果的にファウルとなったが、「怠慢」のようにも見えた。

 その姿を見て、すかさず門馬監督はタイムを取り、そばにいた長谷川を伝令に送った。門馬監督の指示はこうだった。
「自分で決めようとするな。次にキャプテンの兵頭がいるから、キャプテンに繋げ」
 走らない田中大二郎を見て、「ホームランしか狙っていない」と見えたのだ。
 長谷川の言葉を聞きながら、田中大二郎は笑っていた。それはどんな意味を持つ笑みだったのか…。
「つなげって言われたんですけど、やっぱりあそこは一発狙いたかった」
 言葉を聞きつつも、「一発」への意識は変わらなかった。

 カウント1−2から、外を狙ったカーブかスライダー、どちらか分からないが、変化球が引っかかり、真ん中低目へと入ってきた。見逃せばボールだったかもしれない。しかし、ヒザをうまく使い、すくい上げ、ライトへ運んだ。一瞬、ライトオーバーかと思えた当たりはグングンと伸び、スタンドイン。一塁ベースを回り、右手を上げ、ガッツポーズ。東海大相模ベンチも、ガッツポーズを繰り返していた。

 そして、ベンチの中で一番喜んでいたかもしれないのが門馬監督。ベース一周を終えた田中大二郎に対して、両手を大きく広げて待っていた。次の瞬間、何と抱き合ってしまった二人。びっくりした…。
「いやぁ、抱き合っちゃいましたね。本当に嬉しくてね」ってちょっと照れた表情の門馬監督。一方の田中大二郎も、「ちょっと戸惑ったんですけど、まぁ、流れで…」とこちらも照れていた。

 この2ランが勝負を決め、東海大相模が2年連続の関東切符を手に入れた。

 田中大二郎は、これで2試合連続本塁打。
「4番としての風格にずっとこだわってきました」
打席に入れば、何かやってくれる、という期待がいまはある。今日のホームランこそ、「ここで4番がホームランを打ってくれれば」という場面で見事に応えた。

 これだけ打ちまくると、来年は「ドラフト候補」として新聞紙上を賑わす可能性大。「まだちょっと早いけど、プロ志望?」と聞くと、「はい、プロに行きたいです!」とはっきりとした言葉が返ってきた。いつもは小さな声でボソボソと話す田中だが、このときばかりは強い意志が込められていた。
「野球を始めたときからプロになりたいと思っていて、高校になって、近づいてきたかなという思いが強い」
 神奈川の小田原出身。より高いレベルを求めて、中学で明徳義塾中へ野球留学。2年から4番に座り、3年夏には全中で日本一を成し遂げている。高校でふたたび、地元に戻ってきた。
「目指す選手は松井(ヤンキース)」
 なぜ、と聞くと、「日本の4番という印象があるので」。
 4番にこだわり、風格にこだわる田中大二郎の次なる舞台は関東大会となる。


 < 過去  INDEX  未来 >


みのる [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加