2005年10月09日(日) |
神奈川大会準決勝(2) 横浜高校エース川角謙 |
秋季神奈川大会準決勝 第2試合 横浜高校 110101020|6 桐光学園 000200000|2
「今日はナイスピッチングでいいのかな?」 「はい、よかったと思います!」 桐光学園相手に9回2失点、14奪三振の完投勝ち。横浜のエース左腕・川角謙は自分のピッチングに手応えを掴んでいた。 「一番よかったのはストレートのコントロール。秋の大会はずっとダメだったんですけど、短期間で何とか修正できたと思います。これまで不安のほうが大きかったけど、今日の試合を迎える前に、監督から『フォームがよくなってきているから、自信を持って臨め』と言われて、不安が消えました」 この秋、9月17日に行われた横浜創学館との試合で川角を見たが、ストレートも変化球も制球がバラついており、夏に見せたピッチングとは程遠い印象を受けた。 しかし、この日の桐光学園戦は見違えるようなピッチングだった。 渡辺元智監督は、「今日はナイスピッチング。フォームを修正して、うまくいきました」と満足げな表情を浮かべていた。
互いに口にした「修正」とは――。 川角は「テイクバックが知らず知らずのうちに、大きくなりすぎていて、背中の後ろまで入り込むようになっていた」と言う。必然的に、ヒジが上がりづらくなり、球がシュート回転しやすくなる。制球のバラツキにもつながり、球のキレも落ちてしまう。秋はずっとそんな状態が続いていた。 「4回戦の市川崎戦が終わってから、フォーム作りをやり直しました」と川角。市川崎戦は先発するも、2回までに3点を失い、途中降板していた。明らかに本来の調子ではない。修正の必要があった。
「練習からテイクバックを小さくすることを意識して、左手を体に隠すようなフォームに変えていった」と川角はフォームの修正点を解説した。市川崎が終わってから、わずか2週間足らずで、新たなフォームを習得してしまうから大したものだ。
しかし、面白いもので、テイクバックが大きくなってしまった原因は、夏の練習にあるようだ。 渡辺監督は「腕の振りを速くさせて、ストレートに磨きをかけようとして、遠投をやらせていた。でも、それが原因でバックスイングが大きくなってしまった」。 遠投で腕の振りは早く強くなったが、逆にバックスイングが大きくなるという弊害も生まれたというわけだ。このあたり、難しい…。
今年の横浜は、川角だけでなく浦川、落司、西嶋ら、豊富な投手陣を揃えている。だが、本当に強いときの横浜は松坂、涌井など、絶対的なエースが必ずいる。そのエースをサポートする形で、二番手以降の投手が控えている。昨年の代を振り返れば、川角、桜田、西嶋といたが、では「絶対的なエースは誰?」と考えると、簡単には見つけ出せなかった。
では、今年はどうか。 これまでの使われ方、そして準決勝での結果を見る限り、文句なく川角だ。 その川角に「横浜のエースという自覚はある?」と聞くと、「自覚はあるんですけど、監督や小倉コーチには『まだ自覚が足りない!』と怒られています」と苦笑いを浮かべた。 それでも、渡辺監督は川角に対して、「目的意識の高い子」と評価。新チームの夏の練習も、「とにかく辛かった」(川角)というピッチャー練習を、しっかりとこなしたという。
横浜高校のピッチャー練習は、西武に入った涌井が「西武の練習より、横高のほうが絶対キツイですよ〜!」と変な自信を持って、言い切っていたほど、かなりキツイ(らしい)。 名物(1)は、タテに走らせるアメリカンノック。普通、アメリカンノックは、外野を右から左、左から右へ走らせるが、横浜の場合はタテ。ライトからホームベース方向へ走っていき、さらにホームベースのほうからライトへ、という具合にタテに動く。このほうがキツイ(らしい)。
名物(2)はペッパー。7メートルほどのラインを引き、そのライン上をケンケンやサイドステップ、ウサギ飛びなどをしながら、ボールを捕球する。ボールは基本的に小倉コーチが左右にゴロを打ち分けるのだが、これが絶妙にうまい。 涌井に、「ほかの高校もこのペッパーやってるらしいよ」と伝えると、「小倉コーチがやるペッパーとはきつさが絶対に違いますよ! 小倉コーチはほんとに嫌らしいところに打ってくるんです」とまたも変な自信を持っていた。
このペッパー。股関節を中心とした下半身が鍛えられるという。 横浜と同じやり方を採用して、エースのスピードが数キロアップした高校もある。
川角もアメリカンノックと平行して、夏場はペッパーをひたすらやったそうだ。 その成果はというと、「夏の大会ではストレートのMAXが138キロ。それがいまは142キロまで出ています」と胸を張って答えた。 ただ、「涌井さんと同じ練習量は全然こなせていません」という。涌井も、小倉コーチには「松坂の半分もやれていない」とずっと言われていた…。これから、まずは涌井がやっていた練習量をしっかりとこなせるようになることが、川角の課題かも。
川角に、理想のピッチャーを聞いてみた。 先輩の成瀬か畠山の名前が挙がるかなと思ったら、「プロ野球選手でもいいんですか?」とわざわざこちらに聞いてから、「和田投手(ソフトバンク)です」と一言。「ストレートが速くなくても、キレで勝負できる」ところが魅力だそうだ。川角も確かにスピードよりは、キレで勝負するタイプといえる。
この日の勝利で関東を決めた。川角の次なる目標は…。 「関東大会で優勝して、神宮大会で投げたいです」 質問にハキハキと気持ちよく答える、横浜のエース川角クンでした。
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1年春からレギュラーとして出場している高濱卓也がおかしい。完全に「弱点」とばれている内角に、相手校は徹底してストレートで攻めてくる。それを弾き返せずに、セカンドゴロばかりが目立つ。 では、外には対応できているかというと、こちらも甘い球をファウルにしたり、という状態。体のキレも感じられないし、疲れているのでは…。
準々決勝の試合後に聞いてみると、「自分、練習できていないんです」と意外な答え。 「足が疲労骨折寸前で、ここ1ヶ月くらい練習をしていない。試合だけやっているようなものです」 渡辺監督も「バッティングフォームを崩しているのもあるが、足の影響もある」と語った。
高濱は「自分はこんなもんじゃないです。でも、とにかくこの足が治らないと…」と複雑な表情。首脳陣の方針として、使いながら直していくということだ。 しかし、こんな状態でも三番サードのまま。チームの期待の現われが見て取れる。が、渡辺監督は「代える選手がいないだけ」とそっけない一言だった。
「関東大会までには良くなります」と高濱。 はやく直して、ガンガン練習して、「こんなもんじゃない」、本当の高濱の姿を見せてほしい。
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