みのるの「野球日記」
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2004年09月25日(土) 慶應義塾、6年ぶりの秋関に王手

■9月25日 秋季神奈川大会準々決勝 in相模原
慶應義塾 000110400|6
桐光学園 100001001|3

 慶應が優勝候補の桐光学園に快勝し、ベスト4進出を決めた。快進撃を支えているのはエース中林伸陽を守り立てる内外野の守り。打たせてとるピッチングが持ち味の中林を、堅実な守りで盛り立てている。中林も「みんなが守ってくれるから、安心して投げられる。ここまでノーエラーで来ているんですよ」と信頼感を口にする。
 
 その堅実な守備を引っ張るのはショートの漆畑哲也。1年秋からショートのレギュラーとして試合に出ており、新チームではキャプテンを任されている。ちょっとマニアックな野球ファンなら「漆畑」という姓には聞き覚えがあるかもしれない。漆畑哲也の兄は、浦和学院で春夏甲子園に出場した漆畑雅彦(現中央大)。須永英輝(現日本ハム)の代で、セカンドを守り、弟と同じくキャプテンを務めていた。

 漆畑の実家は埼玉の久喜にあり、寮のない慶應までは毎日電車で通っている。
「片道2時間です。往復だと4時間。辛いときもありますけど、やりがいがあります」
 行きも帰りもラッシュの真っ只中だそうで、なかなか座れないという。そこまで時間をかけて慶應に入学してきたのはなぜだろうか。
「浦学にも誘われたんですけど、自分は野球だけじゃなくて勉強もやりたかったんです。それに大学まで野球をしたかった。ちょうど、慶應に推薦制度ができると聞いて、受験をしてみました。上田さん(上田誠監督)の野球も知っていたので、それも魅力のひとつでした」
 漆畑が中学3年のとき、慶應義塾に推薦制度ができた。現在のエース中林も推薦組のひとりである。
「推薦ができたからどうとか言われますけど、上田さんは推薦も一般も内部生も一緒に扱うので関係ないです。みんな、慶應の野球部であることに変わりはない」
 この日3番で3安打の活躍を見せた湯浅亮一、中林を好リードで引っ張ったキャッチャーの鹿毛雄一郎、攻守を見せたサードの渕上仁は一般入試組。推薦組に負けてはいない。
「今年は仲がよくて明るいチーム。自分がキャプテンとしてまとめていきたいと思っていたので、キャプテンしたかったんです。言われたときは嬉しかったですね」
 さすが。兄の血を継いでいるのだろうか。
「兄がキャプテンで甲子園に出たので、自分もキャプテンとして甲子園に出るのが目標。まずは次の横浜に勝って、関東に行きます」
 
 準決勝は10月2日、保土ヶ谷球場。慶應が勝てば6年ぶりの関東大会出場となる。 
 
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 この日、もっとも印象に残ったのは7回に出た慶應・谷地俊太郎のタイムリー二塁打。セカンドベース上で両手を天に突き上げてのガッツポーズ。鬱積した思いを自ら吹き飛ばすようなガッツポーズだった。
 谷地を初めてみたのは去年秋の桐蔭学園戦だった。1番セカンドで出場し、2安打か3安打放ったのを記憶している。決して大きくはない体だが、コンパクトなスイングでセンター前に弾き返していた。
 その年の冬。慶應グラウンドを訪れると、リハビリをしていた谷地の姿があった。ヒザに水がたまってしまい、治療を受けたという。冬が終わり、春、そして夏。谷地は精彩を欠いていた。1年前の秋の活躍が幻かと思うような、プレーぶりだった。
「元気がないなぁ…。何かのきっかけで変わってくれるといいんだけど」
 上田さんは夏ごろ、ポツリと漏らしていた。

 この日の桐光戦。谷地はスタメンを外れていた。出番は5回裏の守備から。代打に出た1年生に代わって、レフトの守備に就いた。かつてのセカンドではなく、いまはレフトを任されている。
 打席は1点を勝ち越して、なおも1アウト満塁で回ってきた。谷地はカウント1−1から甘めに入ったスライダーを左中間に落とす、タイムリー二塁打。これで3点差。貴重な一打だった。9回の第二打席も、初球を捕らえいい当たりのセンターフライ。結果よりも、初球をしっかりと振りぬけたことが大きい。

 谷地もまた、漆畑と同じく埼玉の出身。白岡にある篠津中学校出身だ。試合前は漆畑とともに、上田さんの自宅に泊まり、そこから試合会場に向かう。普段は漆畑と同じように、長時間をかけて学校に通っている。
 1年秋。ニ遊間コンビは漆畑と谷地だった。そのプレーを見て、3年夏までこのふたりが慶應の内野守備を引っ張っていくのだろうと思った。ともに推薦組。だが1年経って、ふたりの状況は少し変わった。

 今日、天に突き上げたガッツポーズで、谷地は「きっかけ」を掴むことができただろうか。


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