2004年08月29日(日) |
最期は気持ち(刈谷東中野球部) |
◆8月21日 全中1回戦 inひたちなか球場 刈谷市立刈谷東 1000010000|2 釧路市立幣舞中 0200000001|3 (特別延長の末、幣舞が勝利)
試合前、刈谷東中の応援席に向かうと、保護者が着ているTシャツが目に入った。背中にはこんな言葉が書かれていた。
決心
結果は心の中にあり 本気になって 心の野球を やり遂げるのみ 最期は気持ち
こうやって文字にすると簡素なイメージだが、Tシャツには達筆な文字で書かれていた。スタンドでお会いした兼子コーチに聞くと、木野昌孝先生の直筆だという。心のこもった言葉がTシャツの背中に込められていた。 この言葉を読んだとき、「最期は気持ち」の「最期」が気になった。サイゴは「最後」と書くのが普通。最期…、辞書を引くと「生命の最終の時」という意味とある。しかもTシャツの言葉は、「最期は気持ち」だけが色が変わっていた。 「死を覚悟して、野球をやれ」という意味? と思いながら、Tシャツを見つめていた。
木野先生は刈谷東中に赴任し、今年が3年目となる。前任の豊橋市立中部中では01年に全中出場を果たしベスト8。02年から刈谷東中に移り、それまで勝てなかった野球部を全国の強豪校に引き上げていった。
全中初戦は幣舞中に特別延長戦の末、惜敗した。勝てるチャンスはあった。だが、全道予選で70イニング連続無失点の記録を作った幣舞のエース村上を攻めあぐね、初戦で散った。
敗戦から数日後、木野先生から電話を頂いた。「最期」の意味について訊くと、 「あれは死ぬ覚悟じゃない(笑)。最期は、『最も期待するとき』という意味です。7月入ってすぐ、チームが苦しいときがあった。そのときに芥川が涙ながらに言ったんです。『最期は気持ちが大事』と」
芥川翔平は3番捕手を務める刈谷東の大黒柱。幣舞中との試合では先制の二塁打を放った。打で守も心も中学トップクラス。東海地区の強豪校から注目を集めている選手だ。 ここぞというときに、気持ちを発揮することができるか。全中レベルになれば、技術はさほど変わりはない。弱気になったら負け。勝てないと思ったら負ける。木野先生がいつも言葉にする「結果は心の中にある」も、そんな意味が込められている。
芥川は全中を終えたあと、保護者の前でこんな言葉を話した。 「まだ野球が終わったわけではありません」 試合が終わって、まだ20分くらいだったと思う。そんな状況で「先を見る」言葉が中学3年生から出てきたことに驚いた。
木野先生は「これからが刈谷東中のスタート」だという。全中を経験したことで、刈谷東中野球部がどう変わっていくか。来年の全中(静岡)で再び野球を見られる日を、そして卒業生が次のステージで活躍する姿を、今から楽しみにしたい。
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