みのるの「野球日記」
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2004年06月15日(火) 内竜也 1軍デビュー戦

 試合前、守備につくマリーンズの選手が場内のBGMに乗って紹介される。「ピッチャー、内竜也」とアナウンスされると、ライトスタンドと一塁側内野スタンドから大きな拍手が沸いた。
「すごいなぁ。信じられないなぁ」
 拍手を聞きながら、隣に座っていた高山裕一先生(川崎市立西中原中野球部監督)がポツリと呟いた。

〜〜〜〜〜〜

 試合の2日前、高山先生から電話を頂いた。
「明後日の試合で内が先発します!」
 驚きで声が出なかった…。
「3年くらいファームでじっくりやって、それから1軍に上がればいいなぁと思っていたんですけど、まさかこんなに早くとは思っていませんでしたよ。明後日は部活休んで、マリンまで行きますよ!プロ初登板は一生で一回のことですからね」

 高山先生は前任の川崎市立川中島中で、2年秋から3年秋まで内を指導した。すでに知られているように、内は中学入学時はバスケットボール部に所属。野球部に入ったのは2年の秋からだった。
「ピッチングを1球見ただけで、これはモノが違うと思いましたね。腕のフリなんて、天性のもの。すごいしなりでした」
 それでも、素材だけがよくても試合ではなかなか勝てない。3年春、夏ともに市大会で早々と負け。東林中や桐蔭学園中との練習試合ではコテンパに打ちのめされたという。
「本格的に見始めたのが2年の秋で遅かったですからね。本当に力が付くまで時間がかかりました。ようやく、開花したのが3年の秋。全試合完封で川崎市大会優勝でした」

 内は川中島中を卒業し、県川崎工に入学。2年時からエースを任され、140キロを超えるストレートと、高山先生が伝授したスライダーを武器に、最後の夏は神奈川ベスト8まで進んだ。そして、秋のドラフトではマリーンズから1位指名。
「指導者になったとき、いつかはプロ野球選手を育てたいという夢がありました。それが叶って本当に嬉しい」
 ドラフトから2ヵ月後、高山先生はしみじみと話していた。

 内にとっては、「高山先生との出会いがなければ、いまの自分はない」と思えるほど、大きな存在だった。

〜〜〜〜〜〜〜
 
 6月16日、対日本ハム戦。内はプロ入り初めて1軍のマウンドへ上がった。
「こっちが緊張するよ。ドキドキするなぁ」
 マウンドをジッと見つめながら、高山先生は言った。
 先頭の小田に対する初球。143キロのストレート。止めたバットに当たりファウルとなった。
「よ〜し!よし!」
 ホッと一安心の先生。
 2球目も143キロのストレートでストライク。3球目は142キロのストレートがボール。そして4球目。内角に切れ込んでくるスライダーで見逃しの三振。小田のバットはピクリとも動かなかった。オーロラビジョンに映った内は、安堵の表情を浮かべたように見えた。
 次ぐ新庄を143キロのストレートでセンターフライ。小笠原を低めのスライダーで一塁ゴロに打ち取り、初回をわずか11球、完璧なピッチングで終えた。

「性格なんだろうね。内のやつ、全然緊張してないもんなぁ」
 内は笑顔で小走りにマウンドを下り、ベンチ前では先輩と拳を突き合わせていた。

 2回。内は得意のスライダーでセギノールと木元から三振を奪った。しかも、ともに見逃しの三振。コースが素晴らしかったわけでもない。それでもバットが出てこなかった。初めて見る投手の球道に打者が面食らっているように見えた。
「1巡目は何とかなりそう。でも、2巡目からかな」
 
 3回。初ヒットを打たれながらも、ゼロで切り抜け、4回へ。先頭の新庄を打ち取るも、小笠原に142キロのストレートを左中間に打たれ、1死二塁のピンチ。迎えたセギノールには、スライダーを3球続けたが、3球目がド真ん中に入り、センター前へ運ばれた。スライダーが初めて真芯で捉えられた打球だった。

 4回を三者凡退で終え、迎えた5回。先頭の新庄に制球が定まらず四球。小笠原にはライト前ヒット。徐々に球がバラツキ始め、キレもなくなってきた。何せ、イースタンでも最長イニングは5イニングまで。1軍と2軍の精神的プレッシャー、そしてプロ初登板ということを考えれば、いつも以上に疲れているはず…。だが、4番セギノールには内角ストレートを3球続け、ライトフライに。

 ここで一塁ベンチから、投手コーチが出てきて、マウンドの内のもとへ歩み寄った。「あ〜交代ですかね」と先生と話していると…、投手コーチは交代を告げずにベンチへ戻っていった。そのとき、ライトスタンドと一塁ベンチからは大きな拍手とともに、「う〜ち! う〜ち!」という大きな歓声が上がった。内の続投を、多くのファンが期待していたのだ。
「こんなに応援してもらって、嬉しいよね…」
 しかし、直後に迎えたエチェバリア。スライダーで1ストライクをとったあと、内角を狙ったストレートが真ん中低めへ入り、軽々と左中間スタンドへ運ばれた。

 6イニングを投げ、6安打4失点7三振で内のデビュー戦は終わった。

「デビュー戦にしてはよく投げたよ。これからは本人がどれだけ努力していくか。長く野球をやりたいなら、今から先のことを考えて野球に取り組んで欲しいね」
  
 翌日(16日)の新聞を読むと、「よく投げた。次も先発のチャンスを与える」とバレンタイン監督のコメントが載っていた。次戦の登板で内がどんなピッチングをするのか、楽しみにしたい。
 


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