みのるの「野球日記」
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2004年04月15日(木) 「内さんに近づきたい」(県川崎工・柳沢久志)

 先日開幕した春季神奈川大会。10日、桐蔭学園グラウンドでは1回戦屈指の好カード桐蔭学園vs慶応に続き、県川崎工vs弥栄西の試合が行なわれた。県川崎工といえば、昨秋のドラフトで内竜也が千葉ロッテから1位指名を受け、一躍注目を集めた高校だ。今年、その内が着けていたエースナンバーを継いだのが新2年生の柳沢久志。来年のドラフト候補として名が挙がるほどの好素材である。

 柳沢の名前を初めて聞いたのはいつだったか…。確か今年の冬だった気がする。「1年にも柳沢っていう良い投手がいるんですよ」と、教えてくれたのは川中島中の高山裕一先生(現西中原中)だった。川中島中といえば、川崎市にある内竜也の母校。柳沢もまた、川崎市の富士見中出身。市内で、柳沢の名は知れ渡っていたという。
 
 桐蔭学園グラウンドで第1試合を見ていると、桐蔭学園中の大川和正先生から電話を頂いた。「第2試合の川崎工業の柳沢、ほんといいピッチャーだから、見ておいた方がいいよ」。もともと第2試合も観戦予定だったが、どれほどの投手なのか、さらに楽しみとなった。 

 第1試合が中盤に入った頃、三塁側ブルペンで柳沢が投球練習を始めた。第一印象は(小さいなぁ)だった。「内竜也二世」という触れ込みもあったので、内の上背を想像していたが、それほどの上背はない(後で本人に聞くと、175センチくらい、とのこと)。
 最初は軽いキャッチボールで始めた柳沢。正直、(ほんとに好投手なのか)と疑問を持った。テイクバックでヒジが引っかかるようなところがあり、ヒジが下がったまま投げていた。あんまり、マジメに投げてないんだろうなぁ、と思いながら見ていたら、やはりそうだった。キャッチャーを座らせると、キャッチボールでの投げ方と明らかに変わり、ヒジがしなって、ストレートが低めにビュンビュン決まっていた。キャッチボールとピッチングでこうも変わるのか、と思った。

 そういえば、高山先生も内についてこんなことを言っていた。
「キャッチボールをさせると、内は普通の投手。でも、ピッチングをやらせると、モノが違う!」
 内が中学2年の秋に野球部に入部したとき、高山先生はピッチングを1球見ただけで、度肝を抜かれたそうだ。「キャッチボールでは感じなかったんですか?」と訊くと、「キャッチボールは遊びながらやってましたから」と苦笑いの先生。柳沢の変貌ぶりをみて、(内にそっくりだなぁ)と感じた。

 徐々に熱を帯びてくるピッチング練習。何回から始めたか忘れてしまったが、(大丈夫か、そんなに投げて)と思うくらい、結構な球数を投げていた。投げるのが好きなのか、それともあんまり考えていないのか…。ちょっと心配になって見ていたら、キャッチャーを務めていた3年生が「もういいよ、投げすぎだよ」と一言。「ハイ」と帽子をとる柳沢。普通、ピッチャーが、「このくらいでOK」と決めるもんじゃないの…。

 試合開始。第1試合と比べて、さすがに観客は減ったが、ネット裏には「柳沢」みたさに残る人もいた(自分もそのひとり)。
 初回。ピッチャーゴロ、空振り三振、見逃し三振と、簡単に三者凡退に仕留める柳沢。ブルペンで見た通りのピッチングを見せてくれた。球種はストレートを中心に、ヨコのスライダーとタテのスライダー、そしてシュート。軸足一本でたったときの姿勢、グローブの使い方など、どこか内に似てる気がしてならなかった。

 これは打てないなぁと思いながら見ていると、2回3回と連続三者凡退。試合展開がコールド濃厚だったため、完全試合もあるかもと思ったが、4回に初ヒットが生まれ、さらにボテボテの内野安打で1失点。特に気にする素振りもなく、5回〜7回を無難に抑えた。
 結局、7回を投げ、3安打10三振1四球。二種類のスライダーもなかなか良かったが、最も魅力と感じたのは右打者にも左打者にも投げられる内角のストレート。特に、左の内角にはピンポイントで威力のある速球を投げていた。ネット裏のガンでは、133キロや134キロの表示だったようだが、もっと速く見えた(MAXは138とのこと)。

 試合後の柳沢も「インコースへのストレートが一番良かった」とコメント。スライダーとともに、相当自信を持っている球のように感じた。
 試合中気になっていたことが、柳沢のプレートの位置。珍しく、ド真ん中を踏んでいたからだ。普通右投手は、右打者の外角へ角度をつけたいため、三塁側を踏む。内竜也も、高速スライダーを生かすため、三塁側を踏んでいた。それが、ド真ん中。柳沢は「スライダーだけじゃなく、シュートも投げるんで、左右を広く使いたいんです」と説明。江成監督に言われたわけでなく、自分でそういう意図を持ってやっているそうだ。

 柳沢は目標の投手に、迷わず「内さん」と偉大な先輩の名を挙げた。「内さんに一歩でも近づけたらいいなと思ってやってます」。でも、「フォームは上原(巨人)のマネしてます」とちょっと矛盾したことを言っていたが(笑)。いいところだけ盗んで、近づきたい、ということだろう。

 江成監督は「野球センスは抜群のものがある。でも、ちょっとお調子者だからね〜。ヒジが痛い肩が痛いとか言ってるのに、突然今日は投げます、と言ってみたり…」と苦笑い。
 お調子者といえば、試合中、こんなシーンがあった。ベンチ前を通りかかった柳沢にたまたまファールボールがゴロで飛んできた。柳沢は素手(左手)でそれを捕ろうとして失敗。「イテッ!」と声を上げていた。利き手の右手ではないといえ、ピッチャーなんだから、手を大事にしなさい…と思ったのは言うまでもない。

 県川崎工は明後日土曜日、桐光学園と対戦する。桐光学園とは昨夏の準々決勝で対戦。内が終盤に打ち込まれ、逆転負けを喫した因縁の相手だ。ちなみに、柳沢は中3の春に川崎市大会準優勝を経験しているが、そのとき決勝で負けたのが桐光学園中学。何とも不思議な因縁ともいえるが…、強豪相手に柳沢がどれほどのピッチングを見せるか注目したい。
 


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