「行きたい高校あるの?」 しばらく考えてから、こう答えた。 「日本じゃなくて、海外で野球やりたいんですよ」 今年の正月明け、東林中の主軸を打つ彼と、こんな会話を交わした。
昨夏、2年生ながら5番を打ち、神奈川大会準優勝。関東大会にも出場した。新チームになると、4番ショート。この夏は1番バッターとして活躍した。市大会はベスト8で敗退したが、自らは長打を打ちまくり、7割近い打率を残した。相手に警戒され、敬遠気味の四球までもあった。
夏の大会の最中、東林中・佐相先生は「オーストラリアに行きたいって言ってるんだよ」と、彼のことを話した。 日本にいれば、ほぼ間違いなく、甲子園を狙う強豪私立に入学できる。打者としては、神奈川でトップクラスの実力。2年生のときはまだまだ粗さがあったが、最後の夏には確実性も増していた。筑川(東海大相模ー東海大)、清原(桐光学園ー東農大)と好投手を輩出してきた東林中から、バッティングで甲子園を沸かせる可能性を秘めた逸材が生まれた。日本の高校で、どんな成長を遂げるのか、中学・高校の関係者も楽しみにしていた。
秋になると、「オーストラリアに決まった」という声が耳に入ってきた。
先日、千葉で行われた『日本中学生野球フォーラム』に、彼を含め、東林中の3年生が5名参加していた。80人近い指導者の前で、ティーバッティングなどを披露。打球音、スイングスピードとも、夏に見たときから、さらにレベルアップしていた。
オーストラリアの高校生のレベルを知るため、すでに現地にも足を運んだ。 「レベルが低ければ、アメリカにしようと思ったけど、思ったよりもレベルが高かったです」 オーストラリアと野球・・・なかなか結びつかないが、レベルは高い。数年前のAAA選手権では、日本に1−3という好試合を演じた。ちなみに、阪神でリーグ優勝に貢献したウィリアムス投手もオーストラリア出身だ。
来年3月に日本を出発し、現地の学校に通いながら、クラブチームで腕を磨く。 「高校はオーストラリアで、大学はアメリカでやりたい」と具体的な考え、目標をすでに持っている。言葉のカベを克服しようと、いまは米軍キャンプ場に通い、英語の勉強に励んでいる。 中学3年生といえば、まだ15歳。そんな15歳が、自ら決めた決断。これからの野球人生を応援したい。
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