2003年03月09日(日) |
横浜vs市川 荒波のスーパープレー |
高校野球の練習試合が8日、全国で解禁された。22日から始まるセンバツ甲子園に出場する学校も、実戦感覚を取り戻すため、精力的に試合を組んでいる。関東大会の覇者・横浜高校も解禁日の翌日、市川(山梨)と練習試合を行った。
横浜の先発はエース成瀬。ストレートを中心に、スライダー、カーブ、スクリューを織り交ぜ、市川打線をほぼ完全に封じ込めた。6回を投げ、被安打1、4三振、4四死球、無失点。1本のヒットはファースト、セカンド、ライトの中間に落ちるポテンヒット。芯で捕らえられた打球は、1本もなかった。 課題といえば、2ストライクと追い込んでからのストレート。三振を取りたい力みからくるのか、高めに抜ける場面が何度かあった。特に、右打者の内角を狙ったストレートが、真ん中高めにいくことが多かった。市川打線はその高めを空振りしてくれたが、甲子園出場校を相手に考えたとき、振ってくれるかどうか。少し間違うと危ない球になってしまう。
今日の試合、7回のセンター荒波の守備が印象に残った。 2死二塁の場面で、市川の7番打者がセンターへクリーンヒット。当たりが痛烈すぎて、サードコーチャーは両腕を横に広げ、本塁を狙う二塁ランナーに対し、「止まれ」のジェスチャーをした。 基本どおり行けば、荒波が返球すべき相手は、カットに入るセカンドやファースト。ところが、荒波はカットマンに見向きもせず、サードへワンバウンド送球。二塁ランナーが三塁ベースをオーバーランすることを見越しての判断だ。送球が若干逸れたので、間一髪セーフとなったが、タイミングは完全なアウトだった。 何よりもすごいと思ったのが、荒波が何の躊躇もせず、サードへ送球したこと。おそらく、練習の中で繰り返し行っているプレーなのだろう。カットマンに投げるにしろ、バックホームへダイレクトに投げるにしろ、その後ろにはピッチャーなり野手がカバーしている。もし暴投をしても、走者が進塁する可能性は少ない。だが、サードへ送球する場合、ピッチャーはキャッチャーの後ろへカバーに入るので、サードの後ろにはカバーが誰もいないことになる。荒波が暴投すれば、即失点につながる。それだけ、リスクが高いプレーといえる。
ここで疑問に思うのが、荒波はどの時点でサードに投げることを決めたのか。コーチャーが二塁ランナーに対し、「止まれ」とジェスチャーしたときか、あるいはランナーが止まる意思を見せたときか。普通に考えれば、後者になる。 が、その場面を振り返ると、荒波がサードへ投げる素振りを見せたとき、まだ二塁ランナーはサードベースを回るか回らないところだったと思う。つまり、止まる意思をランナーからではなく、コーチャーから読み取ったことになる。もちろん、それ以外に、当たりの鋭さやランナーの足の速さなど、総合的な判断でサードへの送球を選んだのだろうが。 いずれにせよ、カットマンに投げず、ランナーのオーバーランを刺すために、サードへ投げる外野手は初めて見た。衝撃のプレーだった。
5回の守備ではこんなプレーがあった。 1死一塁で市川の8番が、サード石川の前へ送りバント。石川が無難に捌き、一塁の黒木へ送球し、1死二塁に。しかし、アウトにするやいなや、小倉コーチから黒木に対して怒声が飛んだ。 「何で、セカンドに投げないんだ!」 このとき、若干ではあるが一塁走者が二塁ベースをオーバーランしていた。小倉コーチの注文は、「二塁に投げて、アウトにしろ!」ということだった。 二塁をオーバーランするランナーを刺すために、バント処理後セカンドへ送球するプレーは時折目にするが、そのプレーを怠ったために怒られたところを見たのは初めてだった。 このふたつのプレーをみて、相手走者のオーバーランを刺す守備練習を相当積んでいるのだと感じた。
今年の横浜は「打てない」といわれている。確かにその通り。今日の市川戦を見て、改めてそう思った。正直言って、市川の投手は大したことなかったが、芯で捕らえたクリーンヒットは数えるほどだった(安打数は9本)。 だが、今年の横浜にはどんな投手でも2点か3点を取る粘っこさとうまさがある。県大会、関東大会でそれを証明してきた。甲子園でも、勝ち進むとすれば、2−1や3−2というファイナルスコアが多くなるように思う。 成瀬を中心に、いかに守り切れるか。大量点は望めそうもないだけに、今日の荒波のように日頃練習を積んでいるプレーを、甲子園でも発揮できるかが、勝ち進むポイントになるかもしれない。
市川 000 000 000 0 横浜 003 000 30× 6
(左)右 松原 5−3 (二) 玉城 1−0 2四球 2犠打 (中) 荒波 5−2 1打点 1三振 (一) 黒木 2−1 2打点 1四球 走左 野中 0−0 (捕) 西江 2−1 2打点 2四球 (三) 石川 4−0 1打点 1三振 (遊) 吉田真 2−0 2四球 (右) 吉田斉 3−1 打一 太田 0−0 1四球 (投) 成瀬 3−0 1三振 投 山崎 1−0
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