みのるの「野球日記」
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2002年08月05日(月) 桐光学園全国制覇を目指し(11) 船井!選手宣誓!!

 夕方から夜にかけてのスポーツニュース。
「選手宣誓は桐光学園の船井剛主将に決まりました」
 どこのニュースでも「桐光学園」、「船井剛」という言葉が出てくる。さぞや、学長、学校関係者は大喜びのことでしょう(笑)。


 数年前の夏の甲子園で、選手宣誓の大役を引き受けたチームの監督の話。
「失敗したら、地元に帰れないと思いました。選手よりも自分が一番緊張して。選手宣誓が終わった瞬間、涙がドーッと出てきて、安堵感でいっぱいになりました。『日本中に放送される中で、失敗したらどうしよう』それだけを考えていました」

 主将は、選手宣誓のことで頭がいっぱいで、練習に全く身が入らず、ミスを連発した。でも、監督は怒らなかった。選手宣誓がどれだけ大きなものか監督自身も分かっていた。

 主将目当てに来る取材は、全て断った。受ければ、必ず選手宣誓の話になる。ただでさえ、頭が破裂するほど考えているのに、マスコミの取材で爆発させたくない。開幕までずっと主将を守り続けるつもりだった。けれど、顔見知りの知り合いの記者にだけ、取材を許した。「彼なら、主将の気持ちを分かってくれるだろう」と思い、許可を出した。

 だが…。

 取材の途中、配慮のない一言によって、主将は取材中にも関わらず、声を上げて泣き出してしまった。ずっと張り詰めていた緊張感が、たった一言によって、切り裂かれ、とめどなく涙が流れた。もう、止めようがなかった。

 そばで見ていた監督は、取材を許したことをひどく悔いた。「何であんな質問をしたんだ」。記者の胸倉を掴み、球場の外へ引きずり出した。

 開会式当日。当初、監督はネット裏で主将の雄姿を見守る予定だったが、そんな心理状態ではなかった。近くで見たいが、見れない。アイツが失敗したらどうすればいい。おれは助けてやることができるか……。
 考えた末、監督は内野席のはるか上、一番後ろの席の近くで、主将を見守った。

 主将は無事に大役を終えた。

 監督は子供のように泣いた。選手はその日以来、見違えるような動きになり、試合でも大活躍を見せた。

 今、監督はその当時を振り返える。
「もう、選手宣誓は2度と引いて欲しくないですよ。立候補生になって、良かったと思いますよ。うちが出たら? 主将には絶対に出るなと言いますよ(笑)」


 今日の抽選会。船井の選手宣誓が決まったとき、塩脇部長が手で顔を覆っていたシーンが映し出された。その仕種が、とても印象的だった。
「こりゃ、大変なことになった」
 今頃、国語の教師である顧問の石井先生を中心に、原稿を考えているところだと思う。

 夏の甲子園の選手宣誓。全国約4000校、約4000人の主将の中で、チャンスを得られるのはわずかにひとり。船井はそのひとりに選ばれた。宣誓が決まった瞬間から、さまざまなプレッシャーがのしかかると思う。でも、船井なら…。プレッシャーに打ち勝ってほしい。スタンドで見守るであろう野呂監督と塩脇部長に、嬉し涙をプレゼントしてほしい。

「甲子園ではとにかく楽しみたい」
 決勝のあと、船井は甲子園に向けての抱負をそう話していた。

 選手宣誓まで、あと3日。


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