みのるの「野球日記」
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2002年07月24日(水) 桐光学園全国制覇を目指し(6) 先発吉田、好投!!

 神奈川県大会の5回戦が24日、平塚球場で行われ、桐光学園は10−3の7回コールドで法政二に快勝し、5年連続のベスト8に進んだ。

 先発はエース清原ではなく、2年生の吉田干城(たてき)。

 清原の先発はないと思っていたが、まさか吉田だとは思わなかった。安定感のある笠貫、あるいは大舞台の経験豊富な望月の先発を予想していただけに、かなり驚いた。

 22日に行われた武相戦。エース清原が先発し、8回3失点の好投を見せたが、先発予定は直前まで吉田だった。けれど、野呂監督は清原を選んだ。「先発で行くぞ」と告げたとき、「やってくれる」と思わせる表情、そして目の強さが吉田にはなかった。先発を清原に変更した。

 この武相戦。12−3とリードした9回裏。余裕のある場面で、吉田はこの夏初めてのマウンドに上がった。3人をぴしゃりと抑え、無事に試合を締めくくった。

 武相戦から2日後、法政二戦を控えた24日の朝。野呂監督は吉田に先発を告げた。
 先発を聞いた吉田は、「ドキドキという緊張よりは、『よし、やってやろう』という気持ちになりました。行くとこまで行って、自分の力を出すだけ。相手が法政二というよりも、思い切って投げてやろうと思いました」とそのときの心境を話す。

 味方が1点を先行したあとの1回裏。投球練習の1球目、右打者の内角高めにストレートがすっぽ抜ける大暴投だった。2球目も3球目も高めに上ずり、私はどうなることかと思っていた。だが、試合が始まると、心配は杞憂に終わった。

 先頭打者、左打ちの八橋に対し、初球外角低めのストレートが決まった。ベンチはたった1球のストライクに対し、メガホンを叩き大声を張り上げ盛り上がる。初回、ヒットと四球で2死一、二塁のピンチを迎えるものの、最後は5番荒井をストレートで空振りの三振に奪い、初回をゼロに抑えた。ベンチは、引き上げてくる吉田を拍手で迎え、野呂監督はホッとした安堵の表情を浮かべていた。

 野呂監督は先発に吉田を起用した理由をこう話す。
「法政二と対戦が決まってから、相手の勢いをどう止めようかと考えていました。清原や笠貫も考えたが、変化球でかわす投手は相手の勢いに捕まるかもしれない。勢いには力で対抗する。それで吉田のストレートに賭けてみました。吉田には『ダメならダメであとには清原もいるし、最初から全力で思い切っていけ。楽しんで来い』と言いました」

 初回のピンチを切り抜けた吉田は、打線の援護もあって、リズムを掴み始めた。2回には1死二塁のピンチを迎えるが、自らの好フィールディングで無得点に抑える。3回に3番橋本にタイムリー三塁打を浴び、1点を返されるが、なお1死三塁のピンチを自慢のストレートでぴしゃりと抑えた。
 その後、桐光守備陣のミスで2点を失うものの、7回途中まで3失点。堂々たるピッチングを見せ、マウンドを笠貫に譲った。マウンドを下り、ベンチに戻るとき、一塁側の桐光応援席からは吉田の好投に大きな拍手が送られた。

「今日は満点に近いピッチングができました。結果を気にせず、自分の力を出すことだけを考えて投げました」

 「公式戦の最長イニングは何回?」と記者から質問が飛ぶと、「今日が最高です」とちょっと苦笑いを浮かべながら答えた。

 1年の春から活躍を期待されていた吉田だが、公式戦では全くと言って良いほど結果を残していない。
 公式戦初登板は1年春の関東大会。準決勝の花咲徳栄戦で先発し、3回を3失点で敗戦投手となった。その年の夏は4回戦でたった1イニングを放っただけで、活躍の場は与えられなかった。
 1年の秋。準々決勝の神奈川工戦で入部以来初の大役が回ってきた。春の関東大会以来の先発である。だが、吉田は期待を裏切った。たった1アウトしか取れず、被安打3、四球1、自責1の投球内容で、1回途中でマウンドを同期の望月に譲った。
 2年の春。吉田に登板の機会は1度もなかった。3月に行われた練習試合で右ひじ靭帯を負傷。しばらく投球練習をすることができなくなった。その間に、同期の河合や笠貫が台頭。吉田の活躍する場は少なくなっていった。
 5月下旬にケガから復帰。しかし、外野で使われる機会も増えた。「ずっとピッチャーでやりたいと思っていましたから。外野を守っていても、その思いだけは強かったです」
 6月10日。3ヶ月ぶりに実戦のマウンドに戻ってきた。

「同じ2年生が活躍して、焦りはありました。でも、いつかやってやろうとずっと思っていました」

 その「いつか」が今日、訪れた。

 入学してから、今まで2度の先発は失敗に終わっている。ベンチもそれを分かっていた。ある部員が冗談交じりに言った。「吉田をまずは1イニング、投げさせようって思ってました」。ベンチはいつも以上に盛り上がっていた。1球のストライクに大声を出し、吉田に1球1球声を掛け、力は認められながらも、結果の出なかった2年生投手を励ました。

「今日のピッチングで自信がつきました」
 試合後、吉田は満面の笑みで話した。

 ここ数年の桐光は、夏の大会に、必ずといって良いほど下級生の投手が活躍している。2年前は当時1年生だった清原が、準々決勝の武相戦で先発デビューを果たす好投。去年は準決勝の東海大相模戦でこれまた当時1年の望月が、相模相手に完投勝ちを収めた。

 今年は言うまでもなく吉田だ。期待されながら、それを裏切り続けていた吉田が、大舞台で入部後一番の輝きを見せた。

 
 明日は保土ヶ谷球場で、第2シード神奈川工を破った相洋と対戦する。
「今日は最高のゲームだった。素直に喜びたい」と試合後は終始笑顔だった野呂監督。最高のムードと勢いで、ベスト4進出を目指す。

 夏の甲子園まで、あと3勝。


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