2002年07月22日(月) |
桐光学園全国制覇を目指し(5) 主砲・佐藤先制アーチ! |
22日に行われた神奈川大会4回戦。桐光学園は12−3で武相を下し、ベスト16進出を決めた。
初回。桐光は武相の先発梶山の前に照沼、望月が簡単に打ち取られ二死。ランナーなしで3番佐藤。カウント2−3から内角よりのボールを真芯で捕らえると、きれいな放物線を描いた打球は、広い横浜スタジアムの左中間スタンドへ飛び込んだ。先制のソロホームラン。今大会3試合目にして飛び出した、桐光の初ホームランだった。
佐藤は昨年のセンバツ甲子園を経験している。現在残るメンバーで、甲子園でプレーしたのは佐藤と1番を打つ照沼のふたりだけ。去年の夏の県大会決勝では、横浜の福井から、3ランホームランを放った。今日と同じような放物線。左中間最深部へのホームランだった。 昨年のチームは長打力が売り物だった。プロにも注目された藤崎(現中央大)、石井(現東海大)、そして黒木(現神奈川大)とスタンドに放り込める力のある選手が3人もいた。 今年はどうか。4番を打つ2年生の山田にも期待がかかるが、ホームランを打つとなると佐藤のパワーが勝る。
20日の城山高校との3回戦でも佐藤の長打が光った。2回裏、2−1と逆転に成功し、なおも2死満塁。佐藤はあわやホームランかという、レフトオーバー走者一掃の二塁打を打った。5−1と突き放す価値ある長打だった。
野呂監督は3回戦の試合後、こんな話をしていた。 「去年に比べて、今年は長打を打てる選手がいない。まぁ、ゼロではないが、ほとんど期待できなくなった。昨年の秋以降、バットが重くなって、振り切れる選手がいなくなりましたね。ゴロで転がして、ヒットを積み重ねたり、進塁打を打ったり、相手の隙を突く走塁であったり、今年はそういうプレーで点を取っていきます」
「ゼロではない…」 訊くまでもなく、佐藤への期待だ。
「ランナーがいるところで、長打が打てて良かったです」 試合後、佐藤は満面の笑みを浮かべていた。監督の期待を知っているかのように、話を続けた。 「今年は長打を打てる選手が少ないので、自分の役目は大きいと思っています。ランナーがたまっているところで、長打が出れば、有利になりますから」
佐藤は相模原市の内出中学出身。軟式出身だ。エースの清原(東林中)とは、中学時代に何度も対戦していると言う。「ライバルだった?」と訊くと、「はい。でも何度もやってますが、全然打てませんでした」と少し照れた。中学の頃から、長打が持ち味のスラッガーとして鳴らし、活躍していた。「たまたま、野呂先生が見に来た試合で、ぼくがホームランを打ったんですよ」と当時を懐かしみながら話してくれた。
高校進学後は、野球部専属のトレーナーのもとで筋力アップに励み、パワーヒッターとして桐光の主軸に成長した。 「目標は先輩の石井さんです。大会前に一言だけ『頑張ってくれ』と言われたんですよ。たったそれだけの言葉なんですが、石井さんだけに重みがありましたね」
まだ、横浜の敗戦など考えもしなかった城山戦の試合終了後。佐藤は力強く話していた。 「横浜に勝つには…、自分が打てば絶対勝てます!!」
相手は横浜を破った法政二に変わった。ただ相手が変わっただけ。自分の長打が、桐光の勝利を呼び込むことに何ら変わりはない。
「今年のチームは3年生が少なくて…、新チームになったとき、船井と照沼(ともに3年)とよく話をしたんですよ。『おれたちが、下級生を引っ張っていかなきゃいけない。おれたちが緊張してたり、練習に取り組む姿勢が悪かったりしたら、下もついて来ないから』」 そんな話を重ねていくうちに、旧チームが残していった「2年連続準優勝」という大きな看板、プレッシャーから解放されていったという。
4回戦。佐藤が2安打1打点。照沼が2安打3打点。キャプテンの船井は3安打3打点。そして、エースの清原は序盤乱れながらも、8回3失点のピッチングを見せた。サードコーチャーの飯塚も的確な判断を見せ、役目を完璧に果たした。3年生が大活躍を見せた。
24日、対法政二。勝てば5年連続のベスト8が決まる。 今のチーム。公式戦初戦となった秋のブロック予選では、まさかの黒星発進だった。負けた相手は、明日戦う法政二。 あれから1年半……。成長を遂げた桐光学園野球部が、初の夏の甲子園へ向けて、一歩一歩階段を上る。
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