みのるの「野球日記」
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2002年06月10日(月) 日本は日本

 もう1週間ほど前のことになるが、国立競技場で行われた「パブリック・ビューイング」に行ってきた。6月4日、W杯の日本対ベルギー戦だ。試合は周知の通り、2−2の引き分け。W杯史上初の勝ち点を挙げた。

 試合開始前、ベルギー選手の紹介が始まると、会場のあちらこちらでチラホラとではあるが、ブーイングが始まった。国歌斉唱のときは、さすがにブーイングはなかったが、「相手国の選手紹介でブーイングが必要なのか?」と疑問に感じた。9日のロシア戦を国立で見た友人によれば、その日も相手国の選手紹介でブーイングが起こったという。

 サッカー通の友人によれば、「海外では選手紹介時にブーイングが起こるのは日常茶飯事」とのこと。過激なサポーターで知られるトルコでは、「相手国の国歌斉唱で必ずブーイングが起きる」。でも、友人によれば、それはその国で生まれてきた文化だという。

 W杯初勝利を挙げた夜。渋谷のスクランブル交差点は、「ここは日本?」と思うぐらい異常な状態になっていた。勝利に酔い、騒ぎまくるサポーター集団が、交差点を占拠。挙句の果てにタクシーを取り囲み、屋根に飛び乗るなど、大暴走を起こしていた。このニュースを伝えるTV画面を見ながら、「初勝利が嬉しいんじゃなくて、ただ騒ぎたいだけじゃないの?」と思った。「サポーター集団」とは書いたが、その行動は到底、サポーターと呼べるものではなかった。「外国のフーリガンよりも危ない存在が、じつは一番近くにいたのでは」とも思った。

 Jリーグが日本に誕生してから、はや10年。CSでは海外のリーグ戦が見られるようになり、海外のサッカーを見るために外国へ旅行するファンも増えた。中田や小野が海を渡り、海外のリーグを身近に感じるようにもなった。ある国では発炎筒やら爆竹やら、過激な応援スタイルが当たり前。ときには相手チーム、あるいは国の旗を燃やしたりもする。代表選手の選出を巡って、国民が騒ぎ、国家の一大問題になることもある。それは、俊輔落選の比ではない。


 私は日本の野球の応援スタイルが好きだ。トランペットの音色に合わせ、メガホンを叩き、みんなで声を上げて応援する。タイガースの応援はTVで見てても、鳥肌が立つ。マリーンズの応援は、どこのチームにもどこの国にもない、マリーンズだけの素晴らしい応援スタイルだ。
 
「アメリカがこうだから」「大リーグがそうしてるから」と良く耳にする。大リーグがトランペットの応援がないのは、それはそれで素晴らしい。観客は選手を乗せる、盛り上げ方を知っているのだから。でも、日本は日本だ。メガホン持って応援したって良い。1回表、無死1塁から2番バッターが送りバントしたって良い。それが日本の野球なんだから。

 
 ロシアが日本に敗れると、モスクワの街は荒れに荒れた。集団で邦人を襲ったり、車を破壊してみたり。TVを見ながら「ロシア人って怖いな」と思いながらも、渋谷でのバカ騒ぎを見ていると、「何年後か日本でもモスクワと同じ事態が起こっても、不思議ではないな」と真面目に思った。

 日本代表は今後、間違いなく強くなる。Jリーグが設立して、まだ10年だ。それでここまで来た。私は正直、このW杯で1勝できるなど思ってもいなかった。あまりにも早く階段を駆け上ってきた気がする。

 昨日のロシア戦。後半の中頃に、ロシアDF陣が自陣でのんびりとパスを繰り返していると、日本サポーターからブーイングが起こった。1−0で応援しているチームがリードしているというのに、なぜブーイングなんだろう? 「早く攻めろ!」という意味か? ロシアがせっかく時間を潰してくれているのに……。

 ほんとにもの凄いスピードで、日本サッカーはレベルアップしてきた。海外の指導者を招き、一流選手を獲得し、彼らからあらゆることを吸収し、ステップアップしてきた。サポーターもそうだ。海外サッカーから、応援スタイルを学び、ここまでやってきた。でも、良い事もあれば悪い事も吸収してきたように思う。

 今後の日本サッカーはどこへ向かうのか。まだまだサッカー文化が根付いていない中で、日本中がW杯にこれだけの熱狂を見せている。だからこそ、心配になる。

 選手紹介時にブーイングも良いけど、自分の国のスタイルにもっと自信を持ってもいい。国立のパブリック・ビューイングはほんとに鳥肌が立った。ただその場にいて、サポーターの声援を聴いているだけで、鳥肌が立った。手拍子と声。たったそれだけ。でも、素晴らしい応援だった。
 
「グローバル・スタンダード」という言葉が一時期流行ったけど、「ジャパン・スタンダード」を世界に発信すれば良い。日本は日本。海外を見るのもいいけど、自分の国のスタイルを築く方がもっと大事だと思う。


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