2006年05月14日(日) |
タイタス・アンドロニカス |
原作、シェイクスピア 演出、蜷川幸雄
出演 吉田鋼太郎(タイタス・アンドロニカス)、麻実れい(タモーラ)、小栗旬(エアロン)、真中瞳(ラヴィニア)、壌晴彦(マーカス・アンドロニカス)、鶴見辰吾(サターナイナス)
すみません、実はどうでも良かったです小栗旬。 初めて彼をドラマで見たとき、なんて華のない役者だと思いました。 撤回します。 かっこいいね小栗! なんつーか、……躰が良かったです。 誤解のないようにいいますと、上半身裸で出てくるんですよ。赤いロングコートを羽織っている時も腹は見える。 筋肉が良かったんです。肩から腰に掛けてのラインとか、引き締まった腹部とか。
席は左端から三番目だったんですが、前から九列目の場所だったのでよく見えました。 小栗はステージの左端にいてくれたので、じっくり堪能することが出来ました。 気付くの遅かったけどな。 捕虜として連れてこられた親子の、怒り、嘆き悲しむ様があの男にはないなと思ったところで、あれ?と。 あ、小栗だ! ということで、冷めてて、だるそうで、いやに斜に構えた男を眺め回していたんですけれども。 愛人って、似合わないなあと思ってたけど、あれだ。隣人13号の印象が強すぎた。
彼は健康的に小麦色に焼けた肌が似合うと思いました。あまり白いとほんとに生っ白くて、覇気のない人に見える…(まだいうか) 他人を馬鹿にしたような素振りが良かったんです。その辺りが好みだったんです。
ところで、不勉強な私はシェイクスピアの本を読んだことがないのでわからないのですが。 彼の人の作品には、悲劇でも笑いの要素と下ネタはあるんですか? どうにもそこが気になるんだが。
真中瞳の台詞は少なくて、それも舌を切られてしまうから仕方ないんだけど、もっと声を聞きたかったなあと思わないでもない。
始まりの、サターナイナスとバシエイナスの諍いがあまり語られず強調もされなかったので、印象薄かったなあ。 この兄弟の争いと、舞台の真ん中にでかでかと置かれていたセットの狼と乳のみ兄弟の関連性も印象薄かったなあ。 こんなに印象薄いと、あの狼の像はいらなかったんじゃないかとすら思えてしまう。 兄弟がいがみ合っていたせいで皇帝は決まらず、アンドロニカスが阿呆のサターナイナスを推挙してしまう、そこから悲劇が始まっていくんだけどさ。 その後の悲劇と、タイトルでもあるアンドロニカスに焦点がいっちゃうから。
激しいアンドロニカスお父さんでした。 腕を切り落とした後に転がっていたのは、まあ、痛みで騒いでいるってのでわかるんだけど。 あの転がり方は何故か笑いを誘ったよ。何でだよ。 両手を切り落とされたラヴィニアの腕も、切り株切り株って連呼してたから、然程悲哀が感じられず。だって切り株だもん。しかも手の先に切り株つけてるような感じだったんだもん。舞台で信憑性を求めるなという話なんだが、本当に切り株に見えてくるからどうしようもない。
そういえばラヴィニアも、バシエイナスと愛し合ってたって全然そんな風には見えなかったよ。 喜んでサターナイナスの妻になるって言ったんだと思ってたよ。 そう見えたから、なんでバシエイナスがラヴィニアを攫っていくのか、ラヴィニアのお兄さんたちが二人を守ろうとするのかわからなかったよ。
パイの乗ったワゴンを転がしたとき、勢いよく滑りすぎるワゴンを懸命に止めようとするルーシアスの姿とか、台詞に詰まったタモーラとアンドロニカスとか。そういうところをチェックしてみた。
赤いコートの裾を翻していく小栗がかっこよかったです。
前の席の人が立つから役者が見えなくて、仕方なく後ろの席の人が立ち上がっていくスタンディングオベーションの罠。 勿論私も立ちました。だって前の席の人が立っちゃったんだもんよ。
拍手喝采はいいけど、皆ある程度のところで収めてあげようよ。きっと役者さんたちはトイレに行きたいだろうよと思ったな。
二度目だったかな。去っていこうとする小栗の纏っている裾の長い衣装の、その裾を吉田アンドロニカスが踏むんです。 進めない小栗が後ろを振り返ると裾を踏まれてる。 その次に出てきた後の、袖に向かう小栗は後ろに振り向き、裾を踏まれていないか確認し、更には衣装を躰に巻きつけて出て行きました。 ちょっと可愛いんだよ!何やってんのさ! 悪役小栗と腹にくらっときてたところへ止めを刺されました…。
血を表現するのに赤い紐を使ってました。 手に絡めると遠目に血に塗れている感じで良かったです。紐は揺れ動くからね。
結論 やっぱり舞台はいい。シェイクスピアもいい。出来れば次はマクベスがオセロー辺りで是非また来てほしい。
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