加藤のメモ的日記
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2023年08月13日(日) 韓国・梨泰院クラッシュ 1500人圧死

報じられない「もっと鬼畜な現場」

ハロウィン直前の週末、多くの若者が集まる韓国・梨泰院で起きた大惨事。その裏では一部の若者たちがあまりにも無軌道な行動をとっていた。

「なにこれ!ウケる!」救助活動を手伝っている最中に聞こえてきたのはしゃぐような声に朴温習さん()20代・仮名)は耳を疑った。目の前に広がるのは阿鼻叫喚の地獄絵図。隙間なく密集した群衆が、さまざまな言語で助けを求めて絶叫していた。

「助けて!」「押せ!」「戻れ」四方八方から押された圧力によって、誰もが苦痛に満ちた表情を浮かべている。避けそうなほど口を大きく開き、断末魔のような悲鳴を上げている女性。目を見開いたまま、動かなくなってしまった男性。顔色がみるみるうちに紫色に変わっていく少女。それなのに「酔っぱらった男女が犠牲者にスマホを向けて、笑っていたのです。救急車の前で『セックス』と連呼しながら、飛び跳ねていた集団もいました。地獄があるとしたら、あの光景のことでしょう」(前出・朴さん)

横で踊りまくる若者たち

10月20日、若者たちで賑わう韓国・ソウルの梨泰院エリアで、午後1時15分ごろ群衆雪崩が発生した。日本時の女性二人を含む156人が圧死するという大惨事が起きた小道は、幅3.2メートルほど。その道の、長さわずか3.7メートルほどのスペースに約300人ほどの人々が押し込められた。多くの犠牲者は倒れて下敷きになったのではなく、立ったまま周囲の人々に押しつぶされ圧死した。

この大惨事にもかかわらず、犠牲者を好奇の対象とするやじ馬が無数に存在したことはあまり報じられていない。中には救助され、下着姿や半裸状態で心肺蘇生をされている女性たちを性的な目で見ていた男性もいた。「失神した女性の服をわざと脱がし、救助や心肺蘇生に見せかけて体を触っていた男性もいた。

「失神した女性の服をわざと脱がし、救助や心肺蘇生に見せかけて身体を触っていた男性もいたそうです」(韓国留学中の日本人女子大生)混乱に乗じて、ショックを受ける女性に励ますふりをして声をかけ、「お持ち帰り」を試みる男性もいたという。大勢の遺体が横たわる場所で、エゴと欲望をむき出しにする人々。まさに「鬼畜な現場」だった。

この日、韓国人の夫と梨泰院を訪れていた川上絵里さん(20代・仮名)も信じられない光景を前に唖然とした一人だ。「すぐ近くに、救助される人や死にそうな人達がいたのに、町中にクラブミュージックが爆音で流れ、お酒を飲んで踊りまくる集団もいくつも見かけました。現場に残された犠牲者の財布やスマホを盗んだ火事場泥棒もいたようです」

犠牲者の多くは、四方から圧力がかかり、胸部や腹部圧迫されて呼吸困難に陥る「外傷性窒息」を引き起こしたとみられる。「外傷性窒息は発症すると、血圧低下や血中の二さん炭素濃度が上昇します。同時に静脈が圧迫されて血液が戻らなくなり、顔色が紫色に変色する。そして二酸化炭素の麻酔作用で痛みや苦しさがわからなくなり、眠るように命を落とします。体重の5倍の力で圧迫された場合、およそ5分で死に至る。圧迫直後に救助されなかったら助かりません」(法医学が専門の徳島大学・西村教授)

SNSで「いいね」稼ぎ

そうした意識不明の人々の傍らには、冒頭でも紹介したように悲惨な最期を迎えた若者たちに手を合わせるのではなく、スマホのカメラを向けて撮影する人々の姿が多く見られた。「血だらけの道路、並んで横たわっている遺体、下着姿で人工呼吸を受けている負傷者、担架で運ばれる人々などを撮影。フィルターなしでこぞってSNSに投稿していた人々がいて問題になっています」(東京新聞論説委員の五味氏)

ジャーナリストの金敬哲氏も、おもわず眼をそむけたくなるような惨状を狙って撮りに行く若者たちがいたと指摘する。「SNSに投稿して『いいね』を貰うことに快感や幸福を覚え、存在価値を見出している若者たちが増えています。そうした人たちの多くが事故現場撮影し、配信したのでしょう」

そんな言動に対し、韓国国内からも、「あまりにも恥ずべき行為だ」と批判の声が上がっている。一方で、前出の朴さんによると犠牲者に対する批判も多くみられるという。梨泰院のハロウィンは人が多く、「行かないほうがいい」と再三、注意喚起されており「自業自得」というものだ。

批判の矛先は韓国政府や警察庁にも向けられた。事故発生が懸念されていたにもかかわらず、認識が甘く、対策が不十分だったからだ。野党は大統領に謝罪を求めており、今後の対応次第では政権を揺さぶる事態に発展する可能性もある。

悲鳴と批判、同情や嘲笑などが入り混じって渦巻く中、このままでは別の場所で同じような事態が起きかねないと五味氏は語る。「自然発生的なハロウィンイベントは、韓国では集まった人と気軽に盛り上がれるコミュニケーションの場として、若者に人気です。厳しい受験競争や兵役がある韓国で、ストレス発散になるこのイベントは自分を解放できる側面があるようです」

その背景には、先行きの見えない韓国の社会で、若者たちの間に漂う懸念が垣間見える。「就職も結婚も難しい。夢もなく、他人には興味がないけれと、楽しことだけには熱中する。今だけを生きる、といった刹那的な感覚の若者がふえています。(前出・金氏)悪夢やハロウィンは起こるべくして起こったのかもしれない。

『週刊現代』11.12


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