加藤のメモ的日記
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2023年07月31日(月) 宏池会の系譜に学ばぬ首相に失望した

保守リベラルを体現してきた派閥(宏池会)に出自をを持つ岸田首相には期待してきましたが、現在の政治姿勢には大いに不満があります。かって私は、池田勇人の秘書であり宏池会の事務局長であった伊藤昌哉氏に70時間取材して、『自民党戦国史』という本を代筆したことがあるのですが、宏池会は優れた政治家の宝庫でした。

保守とは何かを見極めてきた「学識の前尾茂三郎」、平和的外交に尽力した「護憲の宮澤喜一」「クリーンなハト派であり続けた「人格の伊藤正義」、日中国交正常化を成し遂げた「政治的誠実の大平正芳」行動力で、保守政治を牽引した「闘志の男・田中六助」。ところが岸田首相はこの豊かな系譜から何を学び、何を引き継ぐのか、全く見えないのです。

岸田首相が、安倍、菅政権違った自前の世界観、歴史観、政策論争を國人に提起することにも期待していました。しかし、その役割も果たしていない。外交面では宏池会的な平和主義の哲学が見られない。経済にしても、アベノミクスの弊害がいかに国民を窮地に追いやっているかという大局的な流れを見極めて現在に有効な政策を打つと構えがない。

これでは前政権までの身内で固められた閉鎖的な権力構造を転換して、国際社会で日本の存在感を示すことはできません。

人を見る目がない

人事も稚拙です。旧統一教会の問題でも、教団に浸食された閣僚の存在が次々指摘されている。政治家の身体検査が不徹底だし、もっと言えば人を見る目がないのではないか。これは伊藤昌哉のような優秀なブレーンがいないということでもあい、、政策集団としてブレーンを引きつける魅力がなくべれーんを作る能力もないということにもなってしまいます。

私は近現代史における歴代首相を、好悪は別にして分かりやすく四つに分けて評価することがあります。『別格』は歴史から呼び出されたような存在で、戦争終結の任を負った鈴木貫太郎、一国の首相という立場を超える思想性を提示した石橋湛山、庶民の欲望を政策化した田中角栄などです。

「A」は時代の中で重要な仕事を成し遂げた、若槻礼次郎、吉田茂、池田勇人、大平正芳、中曽根康弘など「B」は任期中に独自の存在感を示した、西園寺公望、浜口雄幸、岸信介、佐藤栄作、宮澤喜一など。そして「C」は客観的に見て判国民的な存在で典型的には東条英機ですが、残念ながら2000年以降の首相たちのほとんどもここにランクインせざるを得ません。岸田首相はどう評価化されるのか。今こそ宏池会の事蹟から知恵をくみ取り、真っ当なブレーンを固め、歴史の審判も耐えうる政治を行うべきだと思います。


『週刊現代』2023 11.12


加藤  |MAIL