加藤のメモ的日記
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2023年07月28日(金) 空っぽの民衆が愚かな総理を生み出した

政治家が民衆から選ばれるものである以上、民衆の質が上がらない限り立派な総理大臣は出てきません。誰が総理になっても金太郎飴のように愚かな総理が誕生します。

1970年、自決前の三島由紀夫は「日本は空っぽ」と書きました。日本では一夜にして天皇主義者が民主主義者に豹変する。価値を貫く構えがなく、上と横を見てポジション取りをする。1950年代から政治学者の丸山真男も同じことを言っており、金だという物差しから見た「日本の劣等生」だと見ています。

日本人は縄文の昔から「和を以て貴しとなす」で自らを貫徹して戦うよりも集団の調和を重んじました。そして江戸時代には移動が禁止され、人々は周りにいる人と一緒に一生を過ごすようになった。かくてお上に媚びる「ヒラメ」や、周囲を見て浮かないようにする「キョロメ」のメンタリティーが強化され、ました。

世界的に知られた社会心理学者・山岸俊夫氏の調査で、「日本人は所属集団でのポジション争いに執念し、すべての集団を包括するプラットフォームに貢献しない」ことがわかっています。公は自力で市民社会を建設した欧米の概念で、日本には存在しない。ヒラメやキョロメが大切にするのは「公」ではなく自分自身の安寧です。この日本人の「既得権益」を動かすことができません。

本来は時代とともに生産性の高い分野に資本(人・物・金)を移動させることで経済は発展しますが、日本では既得権益を温存する力が強すぎて産業構造の変化が起きません。

政治を自分たちの手に

政府は法人減税分で埋め合わせ、正社員を守るために非正規雇用を増やしています。公共事業でも「電通・パナソナ図式」といわれる中抜き構造が強固で、大ボス企業に役人が天下りする。その役人が政策を立てます。さらに野党も先進国では標準的な「正社員・非正社員の区別禁止」と「労働力の公正な移行措置(所得補償と職業訓練)」を提唱せず、労働組合の既得権益を温存する。その構造を支えているのは国民自身なのです。

私たちはどうすればいいのか。「個人的自力救済」と「共同体自力救済」がありますが、前者は無差別殺傷に向かいかねないてま、残された道は後者しかない。民主政を小規模化し、共同体自治に基づいて自力的救済圏を回していくのです。

参考になる事例としては、スペインの「ミュニシバリズム」(共同体自治主義)があります。kれは「この決定で自分はいいが、あの人やこの人はどうなるだろうと想像できて気にかけることが民主政の条件だ」とするルソー主義に基づくものです。バルセロナではこの運動が実を結び2015年に地域政党が勝利。既得権益と闘いながら私立保育園や公営のDV被害者救済サービスが設置されました。

「岸田のせいだ」と言うのは簡単です。でも、任せた政治家のせいにするだけでは何も変わらない。政治を自らの問題として引き受け、自分たちで政治を回す構えが必須です。

宮台真司(社会学者)

『週刊現代』11.12


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