加藤のメモ的日記
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真の主権在民を実現するために
日本国憲法の前文には、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その権利は国民がこれを享受する。
という一節があり、これを教科書では「主権在民」と教えている、ところが、日本の現状は主権「在民」ではなく「在官」である。つまり官僚が圧倒的な権力を握っているのだ。従って、官尊民卑の風潮が非常に強い。
そのいい例が、郵政省とヤマト運輸との間で起こったクレジットカード配達論争である。これはヤマト運輸がクレジット配達サービスをしようとしたところ、郵政省が「クレジットカードは信書だから民間人が配達するのはまかりならない」とケチをつけたことに端を発する。理由は「民間人には信書の秘密が守れない」から。役人の仕事は尊い民間の仕事は卑しいから信用できない。だから大事な仕事は役人がやるというものである。なんとも傲慢な話だ。
住専問題における大蔵官僚、薬害エイズにおける厚生官僚、そして郵政官僚…。彼らは皆、我こそが日本を支えてきたと思いこみ、一方で絶大な権力に裏付けられた既得権益にドップリとつかって甘い汁を吸っている。そのため、いくら批判されても反省も改革もできない。
日本の財政は今や危機的な状況にある。この危機を乗り切るためには抜本的な行政改革が必要だ。そのためにはどうしたらいいか……。私は3つの改革が必要だと考えている。まず一つ目は、首相公選制を導入することによって国会議員だけが握っている総理大臣の選挙権を一般の有権者に引き渡すことだ。
二つ目の政策は、東京一極集中によって首都圏のみに集中する既得権益をぶち壊し、全国的に近郊のある発展を図る。つまり首都機能の移転だ。これは現在、国会でも議論がされているが、今がチャンスだしぜひとも実現させなければならない。
三つめは郵便、郵政貯金、簡易保険のいわゆる郵政三大事業意を民営化することによって官僚の既得権益を民間人に渡すこと。と、私が主張すると、わけ知り顔の人は「小泉さんは郵政族と対立する大蔵族だからあんなことを言うんだろう」という。これはとんでもない見当違いだ。
郵政三大事業を民営化するということは、郵便貯金、簡易保険(他に年金資金などもあるが)によってかき集められた資金を原資とすりう財政投融資の見直しにもつながる。この財政資金というのは、92の特殊法人に貸し付けられる大きな資金額である。従って、これを見直せば既存の官僚機構に抜本的にメスを入れられることはもちろんだが、それだけでなく官僚の頂点に位置する大蔵省の権力構造をも改革することが可能なのだ。
いま、「大蔵省解体論」や「分割論」が声高に叫ばれているが、こう主張するる人たちが なぜ「郵政3事業の民営化」に言及しないのか、私は不思議でならない。
以上の3つの既得権(総理大臣の選挙権、東京一極集中の既得権、官僚の既得権)をぶち壊さない限り、我々のあとに続く世代は大きなツケを背負わされて21世紀を生きていかなければならなくなる。が、これはかなり痛みを伴う改革でもある。なにしろ、日本の現体制を一旦、解体しなければならないのだ。それだけに国民の支持が何よりも求められる。
本書はここまで述べたことを第二部に、そして第一部では小選挙区比例代表制度の問題点を述べる二部構成とした。さまざまな意見、反論があるだろうが、日本の危機を乗り越えるための指針となれば、私にとってこれ以上の喜びはない。 平成8年5月
『官僚王国解体論』小泉純一郎
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