加藤のメモ的日記
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社債市場が大暴落する
同時に起きるのが、社債市場のパニックだ。東電の社債は「特別仕様」になっており、政府のお墨付きで守られるものだとの安心感から投資家たちの人気を集めてきた。それを政府が紙クズにする判断をするとわかったとたんに、電力債の投げ売りが始まる。総理大臣が「東電を法的に整理する」と宣言したその瞬間に、まず東電債の一斉売りが始まり、あっという間に値段がゼロ近くまで暴落する。さらに他の電力債も連鎖的に売り浴びせられ、簡単に5分の1ほどの値段にまで急落するという。
「さらに電力各社の格付けが下げられ、社債での資金調達が難しくなる。怯えた銀行も電力各社への融資を手控え始める。全電力会社の危機に発展していくでしょう。日本の社債市場の約2割を占める電力債は『巨大銘柄』です。そこが揺らぐとなれば、銀行債、証券債、他の事業会社の債権も連鎖売りされ、多業種にわたる資金繰りが発生する可能性も出てきます」(前出・アナリスト)
シュアリンクする国内市場で過当競争に明け暮れる各社にとって、資金繰り難は生死を左右する一大事である。社債市場でいままで以上の高値で資金調達をせざるを得なくなれば、そのツケは汗水垂らして働く我々の給料カットで払われることになる。そこに追い打ちをかける事態が勃発する。日本市場は信用できないと見限った海外投資家たちが、一斉に脱出し始めるのだ。
それもそのはず、「3.11」以降に東電株に投資してきた人たちは、政府の「潰さない」という方針を信じてきたのに、これが完全に裏切られたことになる。社債権者たちも、電気事業法で決められた社債の安全性を日本政府自らが裏切ったことに、怒りが収まらない。「潰さないことを前提に賠償支援などの対策をとってきた企業を突如潰すことにし、法律上保護されることが期待される社債権者にまで損失を押しつける。そんなことをすれば日本という国、そして市場の信頼が完全に失われてしまいます」(パリバ証券・中空氏)
結果、政府に損害賠償訴訟を起こしたり、日本への投資をすへて引き上げる海外投資家が続出するのだ。「想像もしたくないが、外国人投資家が売買の6割以上を占める株式市場では、どんなに業績のいい企業でも売りに晒されることになる。昨年12月から日本株を買い越してきた外国人投資家がこぞって去れば、日経平均がアベノミクス以前の8000円台まではいとも簡単に落ちていく」(大手シンクタンクのエコノミスト)
みんな海外に逃げ出す
それだけではない。日本企業の海外脱出も加速する。前で・山内氏が言う。「東電が破綻して、燃料調達などに関わる取引先の債権もカットされるとなれば、東電の燃料調達に支障が出る恐れがあります。まだ、破綻企業ということで取引先との交渉力を極端に失ってしまい、少なくとも燃料調達価格は引き上げざるを得なくなる」となれば、コストアップした分は電気料金に上乗せされる。ただでさえ高い電気料金を支払っている日本企業が、これに嫌気して生産拠点を一気に海外移転さえるのは自然の流れだ。
一方で、これまで東電におんぶに抱っこで生き残ってきた中小企業は東電と「共倒れ」という地獄の道を突き進むしかない。ピーク時(1993年)に年間1兆6000億円以上、直近でも毎年6000億円前後の設備投資を行なう東電は、公共事業を発注してくれる国のような存在。それに関わる企業は大手から中小、地元零細までが「インナーサークル」を形成し過剰な競争はしないという”暗黙のルール”の下で、数十億円、数百億円規模の売り上げが毎年懐に入るおいしい商売を謳歌してきた。東電が巨大マネー製造器と呼ばれるゆえんである。
しかし、破綻となれば東電も取引先の選別に手をつけざるを得ない。切られた会社は座して死を待つのみ。マネー税造機の「逆噴射」が次々と企業を地獄の底へ突き落としていくのだ。かくして日本経済を取り巻く風景は一変する。世界でも戦える巨大企業は海外へ逃げ去り、残された「弱小組」は、株安、高い電気料金などの苦しみの中で、コストカットという名のリストラ、給与カットを断行するしかない。それでも体力がなくなってきたところからバタバタと倒れ、失業者が街に溢れる。
もう後回しはできない
これが東電が破綻した場合の「最悪のシナリオ」である。ここまでの劇薬を飲み続けなければ行けないのならば、東電を破綻させずに生き延びさせた方がいいと思う人は多いだろう。しかし、果たしてそうだろうか。経済産業省時代に東電の破綻処理を提言したことで知られる古賀氏がいう。「問題なのは、すでに実質破綻状態にある東電を、国の資金援助という『国家的粉飾』で債務超過を回避させ、しかもその税金負担を東電の経営にまったく責任のない国民や消費者に押しつけていることです」
本来であればまず東電の経営者を全員クビにして、株や銀行融資もカットすることで金融機関にも責任をとらせる。そのうえで、それでもカネが足りないのであれば、税金負担や料金値上げで消費者・国民に負担をお願いするのが筋だということ。古賀氏が続ける。
「しかし、財務省は東電が破綻して事故処理のコストを押しつけられるのを嫌う。経産省も東電破綻と同時に発送電分離など抜本的な電力改革が行なわれるのを回避したい。しかも両省にとって銀行は最上級の天下り先だから、銀行に大損失を出させるわけにはいかない。国が『前面に出る』などといって汚染水対策に470億円投じることを決めたのも、結局は国民に負担を押しつけただけです。破綻を回避する限り、原子力村と銀行の責任が国民につけ回されることになるのです」
廃炉、賠償、汚染水処理、除染などの問題解決に関わる費用は、数十兆円におよぶといわれ、東電が支払えるわけがないい。東電を延命させ続ければ、結果として今後何十年、何百年にもわたり、税金の逐次投入と、電気料金の値上げが繰り返されることになるだけだ。
「東電を破綻処理して債権カットすれば、金融機関からの借入金の約3兆5000億円の返済が不要になり、その分、賠償や除染のための追加税金投入を減らす効果がある。遅れている資産売却や余剰人員カットを加速させる起爆剤にもなります。一方で破綻処理をしなければ、銀行の貸し手責任と国を含めた株主責任が問われない。経産省の電力・原発行政の失敗がうやむやになり、利権も温存される。そしてそして国民だけが負担を強いられる。そんな理不尽は許されません」(経済ジャーナリスト・町田氏)
見てきたように、東電の破綻処理の課程では一時的なショックが起きることも想定される。しかし、このまま東電を存続させれば、国民は何百年と続く負担を背負わされることになる。どちらが日本人にとって、日本という国にとって「幸せな道」かは、自ずと答えが出てくるはずだ。
東電、銀行から国民全てが東電破綻を受け入れたときには、破綻後のシナリオを変わってくるかもしれない。全国民一丸となって東電の処理問題に対してスクラムを組み、そこから再出発する意志を示したとき、果たしてマーケットは日本株を売り浴びせるだろうか。「3.11」直後に日本株を投げ売った海外投資家たちが、絆で結ばれ、自らの命も省みずに他人を助けようと励んだ日本人の姿を見て日本売りをストップ「強気の買い」に転じたことを忘れてはいけない。東電を破綻させよう。そう叫ぶ国民の声が全国に広がったときに初めて、本当の日本復活シナリオが幕を開けるのかもしれない。
『週刊現代』11.9
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