加藤のメモ的日記
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2013年09月08日(日) ビジネス新大陸の歩き方

「学力偏差値」問題を考える

かって”蛮勇”を揮った(とった)日本人がなぜここまで落ちぶれたのか

参院選に圧勝した安倍首相は「経済政策を前に進めていけという大きな声をいただいた」と政権運営に自信を深め、全国津々浦々まで実感できる強い経済を取り戻す」と意気込んでいる。しかし、安倍のミスクスで盛り上がっているのは証券、不動産、輸出関連などごく一部の業界と企業だ。多くのサラリーマンは、企業のIT化やグローバル化が進み、大規模リストラの波に脅かされる中、人員削減のシワ寄せで仕事の量だけが増えている。

このため、戦場では「鬱・無気力」「疲弊・燃え尽き」「あきらめ」などメンタル面を病んだ社員が続出し、長引く業績低迷で人間関係がぎすぎすして暗いムードの会社も少なくない。消費では、「低欲望」社会が定着し、少子化・高齢化の中で右肩上がりの傾向が続いて、日本という国全体が閉塞感に覆われている。さらには国際的な競争力も低下し、今や「ジャパンバッシング」が常態化して”落日””斜陽”の老大国になりつつある。

かって「エコノミック・アニマル」と揶揄されるほどの経済成長を実現し、日本製品が世界を席巻して「ジャパン・アズ・ナンバーワン」「日はまた昇る」と称賛されたのが嘘のようだ。なぜ、日本はこんなに落ちぶれてしまったのか?日本人は所詮この程度の国民だったのだろうか?いや、そんなことはない。日本人のポテンシャルは高いはずだ。私は右翼でも国粋主義者でもないが、日本人の能力の高さは世界に誇るべきものだと考えている。その日本人や日本企業が完全に閉塞している現状をどう変えていくべきか。

今回は、より大きな枠組みで考えてみたいと思う。日本人のポテンシャルの高さというものを私が最初に強く感じたのは、以前、中国の北東部、すなわちかっての満州国があった地域を当時の日本の満鉄(南満州鉄道)を転用した鉄道で3泊4日の旅をしたときのことだ。列車はハルビンから長春、瀋陽を経て大連まで、山が一つも見えない真っ平らな大平原の中を延々と1200キロメートルも走り続けた。

満州鉄道の総面積は約110万平方キロメートルで、関東平野の約65倍。現在の日本の領土の面積の約3倍もあったが、あの茫漠たる風景を見たとき、ここを占領していたと思うだけで空恐ろしなって鳥肌が立った。そのうえ、長春にも瀋陽にも大連にも、日本が造った建物がそこいら中に残っている。よくもこんな無辺際の大地を統治しようと考え、実行したものだと、ただただ私は感嘆した。

インドネシアのスラバヤに行ったときもそうだった。現在のジェット機でも日本から8時間を要するその地にも日本兵はやって来て、一つの町や島を10人ほどの少人数で支配していたというのである。しかも彼らはマレー半島を自転車に乗った「銀輪部隊」で進軍し、イギリスからシンガポールを奪い取った上で、さらにオランダの植民地だったインドネシアの島々を占領していったのである。そんなことが、今の日本人にできるだろうか。植民地支配の是非や占領政策の善悪についての議論は横に置き、正直、私の頭の中には祖先に対する畏敬の念しか浮かばなかったのである。

「大志」と「個」の力で勝る日本人

これは普通の言葉で言えば”蛮勇”だ。日本人は列強に対抗するために常識を越えたアンビション(大志)と強い気概を持ち、信じられないほどのエネルギーを発揮して世界に打って出たのである。それが行き過ぎて結果的に大きな過ちを犯すことになってしまったが、とにかく他のアジア諸国を凌駕する日本人のポテンシャルの高さを証明したことは間違いないだろう。

それは戦後日本のすさまじい経済発展でも証明された。工業化による加工貿易を推進し、松下電器産業、ソニー、本田技研など世界に冠たる日本企業が登場した。第二次世界大戦で310万人もの国民が亡くなり、一度は焦土と化した日本が、技術的に大きな差をつけられていた欧米先進国に追いつき、追い越していった。これもまた蛮勇に近いアンビションと気概に支えられていたのである。

となると、結局、単に今の日本人は生活水準が上がり、昔のような苦労も努力もせずに甘やかされて育ってきたが故に、能力が低下したということだろうか?それも違うと私は思う。なぜなら、今、芸術やスポーツの世界では日本人が大勢活躍しているからだ。たとえば、世界中の有名オーケストラで日本人の弦楽奏者がいないとことろはないし、チャイコフスキー国際コンクールでは4人も優勝している。

スポーツでも、サッカーで世界の一流クラブチームに所属している選手や野球のメジャーリーガーは数えきれないし、競泳でもメダルを連発している。スキーのジャンプでは高梨沙良さんがワールドカップで日本人選手として初めて、しかも史上最年少の16歳4カ月で個人総合優勝を達成している。アニメやゲームのクリエイター、建築家などにも、世界的に有名な日本人は多い。
彼らに共通しているのは、�(孤�科学省の指導要領に基づいて教育されていない。�▲ぅ鵐好肇薀�ターなど、テーラーメイドの教育トレーニングを受けていることである。つまり、純粋に「個」の能力と大志を原動力に、目線を上げて世界と戦っているのだ。

戦後第一世代の偉大な日本人経営者たちもまた、文部省教育の埒外で誕生している。パナソニック創業者の松下幸之助さん、ソニー創業者の森田昭夫さん、本田技研工業の本田宗一郎さん、三洋電機創業者の井植歳男さん。シャープ創業者の早川徳次さん、オムロン創業者の立石一真さん、ヤマハ発動機創業者の川上源一さんのうち、森田さん以外は一人も大学を出ていない。ということは、この人たちがグローバル企業を作り上げ。経営者として大成功した理由もやはり、学校での勉学ではなく、アンビション(大志)なのである。

なぜ戦後第一世代の大経営者も、今の世界的な芸術家やスポーツ選手たちも、能力を最大限に高め、”蛮勇”を揮って活躍できたのか?その疑問を解くカギは「学力偏差値」の教育にあると思う。


『週刊ポスト』8.30 大前研一 


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