加藤のメモ的日記
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2009年12月20日(日) 自殺大国日本

自殺者増加の勢いがとどまることを知らない。自殺者はこの10年、年間3万人台で推移してきた。9月の政権交代も自殺者増加の歯止めにはならず、今年は35.000人に迫ることが確実視されている。35.000人という数は、1日当たりほぼ100人が自殺している計算になる。野球なら11チーム、サッカーなら9チームがたった1日で消滅する事態はどう考えても尋常ではない。

11月に突然襲った「ドバイ・ショック」による円高株安の高波も不況感をさらに募らせ、自殺者増加の傾向に拍車をかけている。自殺防止を目的とした電話相談のボランティア組織として「いのちの命の電話」が有名である。「いのちの電話」は電話相談のみ応じているが、もう一つのボランティア組織の「東京自殺防止センター」は、必要とあらば訪問もするし、救助にも出かける。

ここには年間12.000件の電話相談がある。同センターを創設した西原由紀子は、「今から自殺しようとする人が電話してくるんですから、矛盾していますよね。一人で旅立とうとしているのに、人の匂いを求めて電話してくるんですから」と、会うなり核心をつくことを言った。

日本の自殺者が急増に転じたのは、厳密にいえば98年3月以降だという。「その前年の97年11月に北海道拓殖銀行と山一証券が相次いで破綻します。つまり自殺者が急増したのは、前年度の決算期以降ということになります。失業者や倒産件数が急増したのもこの年でした。自殺にはうつ病や、家庭不和、過労など様々な要因がからんでいます。11年連続3万人台の自殺者という事態は明らかに経済問題が引き金になっています。

東京マラソンの参加者は約32.000人です。道路がランナーで埋めつくされる状態が約20分続くことになります。これとほぼ同じ数の人が11年連続で自殺しているのです。駅勤務37年の佐藤輝夫も、人身事故に過去数十回遭遇している。「自殺者は駅に入る電車の目の前に飛び出して来ますから、運転士は急ブレーキをかけてすぐに警笛をならします。警笛は普通短いのですが、轢いてしまった場合は、ずっと鳴らし続けます。これを”鳴く”と言うんですが、鳴くと隣接ホームでも「あ、マグロが出たとわかります。駅の飛び込み自殺は駅員が処理します。1体1万円の手当てが出ますが、それだけもらってもやりたくありませんね」

山手線の運転士が1周回る間に3回轢いたケースも昔はありました。最初に飛び込み自殺を処理した時は恐ろしかったですね。列車の下から出ている足を持ったんです。すると普通の人間の重さではなく、やたら軽くてそのまま持ちあげたら、お腹が半分ちぎれていて、ずるっと内臓が出てきた。

自殺死体の身元確認や検死をするのは、警察の仕事である。あるベテラン刑事は、最初に轢死体を見た時の衝撃を次のように語る。「地下鉄の築地駅に行くと、ホームにお面が置いてある。なんでこんな所にお面が置いてあるのかと思っていたら、人の顔だった。人の顔がスパッと切れてお面みたいになっていたんだな。銀座1丁目の8階建てのビルから飛び降りた仏さんを見た時も強烈だったな。飛び降りてそのまま足が胴体にめり込んで、ダルマさんみたいになっているんだ。こんな死体ばかり見ていると、どんなに追いつめられても、自殺いだけはやらない方がいいよと忠告したくなるね」

鉄道への飛び込み自殺に関して巷間語られているのは、新幹線に飛び込んでJRから2億円も請求されたという類の話である。この問題についてはJRは「個々のケースで異なるのでお答えすることはできません」の1点張りなのである。

自殺についてレポートしながら、私は自殺を全面否定する気になれない。明日は昨日より良くなると信じて生きてきた高度成長世代にとって、明日は確実に今日悪くなる社会の到来は、誰がいつ自殺してもおかしくない絶望的な気分を醸し出している。そう感じる私にせめてできるのは、年間3万人を超える人々に死を強いる見えない力の正体を粘り強く突き止め、それを正確に書きとめることだけである。

荒波が眼下に渦巻く東尋坊は富士の青木ヶ原樹海や足摺岬などと並ぶ自殺の名所として知られている。ここではこの10年で244人が命を絶った。年平均すれば24.人。ひと月に2人以上がここで自殺を図っていることになる。この数字は世界一の自殺の名所といわれるサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジの年間自殺者20人を上回っている。

足元の絶壁を打つ海鳴りが低く揺曳する東尋坊の参道で見かけた光景を思い出す。今でも脳裏を離れないのは、土産物屋の店先に並べられた黒字のTシャツの胸にプリントされた文句である。1枚には「ほっといてください」もう1枚には「毎日が地獄です」と白く染め抜かれたいた。

私達は金融危機の二番底が囁かれる今、それに手をこまねくばかりか、虚偽献金問題で理解不能な弁明を繰り返し、病んだ母を疑惑の矢面に立たせる冷酷な「宇宙人」総理の下、人の死を観光に利用し、自殺までビルトインされた希望なき社会に生きている。



週刊ポスト


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