加藤のメモ的日記
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蛙の雨だって降ると言う人がある。でも空から蛙が降ってくるのを見たことのある人など一人もいないだろう。話は全く簡単で、こんな次第なのだ。夏にカンカン照りの日が続くと、陸蛙の一種が暑さにたまりかねて、ひんやりと湿った居住地を求め、近くの森や繁みに引っ込む。その行動はまったく人目につかずにひそかに行なわれるため、それに気づく者はいない。
さてそこへ柔らかな雨が振ると、おびただしい数の蛙どもがまたぞろぞろ出てきて、濡れてひんやりした草地で元気を取り戻す。そんなときこうした場所に来あわせた人が、ついさいぜんまで姿一つ見えなかった蛙が、いっぺんにこんなにたくさんいるのを目にしたりすると、この蛙どもがいったいどこからやって来たのか、その人には皆目想像もつかない。
そこで単純な人々は、蛙の雨が降ったのだ、と思うのである。というのもこの人たちは、あのいつものものぐさから、自分に理解できぬことの原因を問うたり、その原因を合理的に考えてみたりするのを面倒がって、むしろいっそ、どんな荒唐無稽なことでも信じてしまう人たちなのだから。
『蛙の雨』 へーベル
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