加藤のメモ的日記
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2009年10月16日(金) 母が我が子を殺す時

バツイチ女がわが子を殺す時…「児童虐待」鬼の母を連続直撃

内縁の夫とともに、母親が前夫との子を絶命へ追いやる惨事が相次いでいる。大阪市西淀川区では松本聖香ちゃん(9)が奈良市内の墓地に遺棄され、兵庫県小野市では大塚颯太ちゃん(当時4)の遺体が、二年近く自宅の冷蔵庫に隠されているのが発見された、いずれも家庭内の虐待死で、実母と男による犯行だ。

こうした事件が明るみにで出るたび、世間では「自分の子供なのになぜ?」といった疑問が繰り返される。4年前、息子へ「むごい仕打ちをした」と明かす35歳の母親(千葉)はある日を堺に息子への対応が急変したと話す。離婚から二年、同居を始めた男性と前夫との子供は最初から折り合いが悪く、暴力へ発展するのを度々なだめていた。そんな折、小三の息子がテレビゲームに興じながら「へぇ、そう」と気のない返事をして母親を一瞥する。

「その時の目つきや表情、仕草、言葉のイントネーションまで前夫にそっくりで鳥肌が立った。前夫の人を小馬鹿にしたような憎々しい態度がすべて一瞬で思い起こされ、憤りが爆発した」金にだらしなく、自分に無関心で、他の女の元へ走った、許せない男の所業と味わった苦しみが再燃し、感情の暴走が始まった。

「顔立ちが前夫に似て来たのもあってわが子であることよりは、前夫の化身がそこにミニチュア版として存在している感じで、憎しみが先だった」パートナーの「俺の種だったら、こんな子に育たない」の文句が気持ちに拍車をかけ、「しつけ」という言葉が免罪符になった。「あんな男(前夫)にならないために、今、ここで直してやってるんだ」と思うと暴力行為に正当化すら芽生えた」男が息子を怒鳴り、殴るのを看過するに止まらず、食事を与えない頻度も増えた。

一旦タガが外れた理性は戻らず、男が尻に根性焼きをする際は、自ら率先して息子のパンツを脱がし、暴れる子供を押さえつけた。縄飛びでムチ打ちする時は、彼女が声を出して回数を数えた。「行方をくらまして養育費すら払わない前夫への、子供を通して復讐したつもりになっていたのかもしれない」

泣き喚く子供の声はそのまま、前夫の悲嘆の声に通じ、許しを乞う姿もまた、前夫の姿に重ね合わせた。無抵抗な息子へのせっかんは、近隣住民の通報で指導を受けるまで約8か月の間、溜まっていたうっぷん晴らしとしてつ続けられ。女性のメンタルヘルスを専門とする、「芦刈クリニック」の草刈伊予子院長が言う。「別れた時は気づかなくても、子供が成長した時に、その原因の断片を子供の中に見出す場合があります。

例えば共感性が乏しいなど、前夫の一番嫌なところを子供の性格に見つけ「だから別れたのだ」と気づかされることも。また「母親はこんな時でもわが子に愛情を注ぐもの」との既成概念が呪縛となり、出来ないとイライラが募って思わぬ暴発を招くことがある。

埼玉在住の母親(36)も以前虐待した過去を持つ。30歳当時、7歳の息子とともに移り住んだ新しい男性住宅で、子供は心細さから母親の元を片時も離れず、これが相手の癇に触った。「比べられる対象じゃなくても、目の前で『俺をとるのか、こいつ(子供)を取るのか』と詰め寄られたら、『あなただけ』と答えるしかなかった。子供を守るにも疲れていて、自分こそ守られたかった。もう一人に戻りたくなかった」

…母である前に女でありたい
子供への仕打ちをエスカレートするほど内縁の夫の機嫌はよくなり、相手が息子への暴力をふるう時に加勢するほど、後で大事に扱われた。男が右の頬を叩いたら、母親が左の頬を叩く。男が「バカたれが!」とののしれば母親がが「この能無しが!」と追い打ちをかける。

そうした言動を続けているうちに「息子へのいたぶり度合いが、彼への愛情のバロメーターに思えてくるようになった」と言う。一人でいる時や息子と二人だけの時はわずかに正気に還ることもあったが、内縁の夫が帰宅すれば「自然とスイッチが入るように。3人揃えば彼の敵か味方かをはっきりさせなきゃならない。共通の敵を据えることで、互いの絆が深まったようにも感じていた」

嫉妬深いパートナーの常套句はは「だれが一番かはっきりさせろ」で、ふとよぎる罪の意識も相手の収入と情愛の前にかき消された。「暮らせるのは彼のおかげだから、彼の言うことを聞くべきだと思った。悪いママになっても、よい妻でいたかった。愛されたかった」半年後、男と別れて兄夫婦と暮らしだすと「憑き物が取れたように我に帰りました」と言うが、今も虐待死の事件が報じられる度に「他人事と思えない。あのまま暮らしていたら、私もそうなっていたかもと思うとぞっとする。とうつむく。

わが子は自分の子であると同時に、半分は「何らかの事情で別れた相手の子であり、妊娠・出産時には「一番愛する男の子供」だったのが、別離の時点で「最も嫌いになった男の子供」に成りかわってしまう実態すらあるのだ。さらに、新しい男が深い性的欲求をもたらす場合には「母」より「女」の情念が優先されて自身を見失うケースもある。

「母親は恋愛しちゃいけないの?私はまだ若いのに、女の幸せを優先させて何が悪いの?これまで頑張って来た自分へのご褒美ぐらい与えてもいい」恋に溺れるにつれて「この子さえいなければ、と思い始めて行ったという「あんなに可愛がっていたのに、恋愛の邪魔者でしかなくなった。この子さえいなければ、もっと楽で自由なのにといった思いしかなく、「人知れず死んでくれ」「いなくなってほしい」と願ったことも」

男の不在中に、それでもすがって来る6歳の女の子の小さな手は、かってのように大事に握り返されることなく「重くてウザいもの」として振りほどかれた。ほどなく父方へ引き取られることになった時には「寂しさもあったけど、厄介払いができてホッとしたのも本心だった」と漏らす。現在は別の男性と暮らすが、出産の予定はない。

「娘は可愛かったけど、子供のために犠牲にするものの大きさも知った。また同じことを繰り返してしまうかもしれない。自分が大事。私は母である前に女でありたいの」と、告白の最後に毅然とした声で締めくくった。

数々の男女のタラブルを担当して来た弁護士は「大人の恋愛こそ盲目」と説く。「前の男性との子供は、状況によって昔の男の象徴にもなりえる。ほかに同居人もなく、近隣に親族などがいなければ、閉鎖された空間で、三角関係の縮図となる場合さえあるのです」

冒頭の母親の息子の体には、中学生となった今も火傷の痕が痛々しく残る。昨年、シングルマザーへ戻った母親が力なく苦笑して嘆く。「消しゴムで消せたらいいのに、と思います。あの頃の自分は何かに乗り移られたようで、まったく正気の沙汰ではなかった。思い出すと辛くて胸が痛むけど、ずっと罪悪感を持っていても前に進めないので、虫刺され痕だと自分に言い聞かせるようにしています」



『週刊文春』5.21


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