加藤のメモ的日記
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2008年12月24日(水) 究極のワクチンが握りつぶされた

ガン、エイズ、心臓病をはじめとする数々の難病を99%の確率で治してしまうワクチンが存在していた。しかし実際そんなワクチンが存在したらそれは、医師、病院、薬の必要性が圧倒的に少なくなることを意味する。医療業界にとっては大打撃であり、多くの人々が職を失うばかりでなく、世界的な大混乱が予測される。オーストラリアの医学博士サム・チョワーク氏はそのような発見をしてしまったが故に、、大きな災難に見舞われることになった。

1995年夏、アメリカのコロラド大学、UCLA、シーダーズ・サイナイメデイカルセンターでは、いかなる治療法でも効果をあげることのできなかったガン患者に対して、彼の開発したワクチンを投与する臨床実験が試みられた。結果は、99%以上の患者にすぐれた効果が現れる驚くべきものであった。その実験に関わった医師たちは皆興奮して、チョワーク博士の開発したワクチンの奇跡的効果に感激をあらわにした。自分が開発したワクチンの効果が超一流の医療機関で確認されて、自信を持ってオーストラリアに帰国したチョワーク博士は、全世界に向けてまさにその成果を発表する段階であった。

ところが、新聞のインタビューは突然キャンセルされ、オーストラリア医学界協会は、明らかな嘘をつく詐欺しであるとして、チョワーク博士を非難し始めた。研究成果を追検証する医療機関に10万ドルの資金提供をするという彼の申し出はことごとく無視され、彼の研究に協力していた医学者たちですら態度を一変させると、共同研究の継続を拒否してきたのだ。

チョワーク博士の研究は、現在の医学界においては常識を逸脱したアプローチであり、その驚異的な効果は医薬品業界を揺るがすものだった。チョワーク博士の焦点は、動物の免疫能力(血清)を安全に利用するアプローチと人体に無害な感染性を利用して、患者自身が持つ免疫能力を発動させるアプローチとに絞られた。簡単に説明すれば、病原性のない生体を体内に注入すると、それがガン細胞のような目標となる細胞にくっつき、包み込むようになる。

そして患者自身が持つ免疫能力で危険性の生体を破壊すると、その内部に取り込まれていたガン細胞も同時に消えてしまう。奇跡のようなガンの治療法を、チョワーク博士は遂に完成させたのである。こうして1994年秋より始めた実験は大きな成功を収めて、医学界より極めて好意的かつ積極的な反応を得ることができた。CSMCの所長、UCLA医学部教授、さらにコロラド大学、ストックホルム大学等の医療機関でも、チョワーク博士の研究とワクチンの効果が、臨床実験を含めて充分確認されていた。このままいけば、チョワーク博士は20世紀最大の発見をした医学者として賞賛されるはずだった。

ところが、チャチョワーク博士の名声が広まると同時に災難も彼を襲うことになった。メキシコのあるクリニックが博士の名前を利用してワクチンと称する偽者を販売し始めた。そのクリニックは患者にただの水道水を高額で売りつけていたのだが、数人の患者が死亡したために、メキシコ政府にクレームが届くほどの事態に発展した。博士はそのクリニックを訴えて、最終的にはそのクリニックは営業停止に追い込まれたのだが、博士にとっては大きな痛手であった。

最も悪質だったのはCSMCで、博士の実験が順調に進むとわかった時点で、彼の理論を病院側が独自に発見したものとして、ジャーナルに掲載していた。しかも99%以上という驚異的な治癒率を誇った臨床実験のデータ公表を拒み、博士が開発したワクチンの大半を没収までしているのだ。

そこで秘匿されたデータの公表、奪われたワクチンの返還、そして名誉回復のためにもチョワーク博士はCSMCを訴えた。裁判ではCSMCの言い分の矛盾が次々と暴露されたばかりか、博士のワクチンのおかげで奇跡的に癒された患者たちが証人になり、彼の信憑性が高まることになった。結局、チャチョワーク博士は勝訴したわけだが、それでも失ったものの方が大きかった。何しろ膨大な時間、お金、労力をかけて開発した大半のワクチンがなくなってしまったのである。一から製造を始めるには少なくとも数年は要する。

もっと早い時期に臨床実験のデータが公表されてこの治療法が普及していれば、どれだけ多くの命が救えたことか。さらにチャチョワーク博士に災難が襲った。CSMCは判決を不服として控訴すると2001年9月には賠償金が1000万ドルから1万ドルに大幅に減額する判決が下った。勝訴したとはいえこの判決は事実上博士を破産させた。ワクチン開発に必要な生体すら購入できない金額であり、もはや博士には上告する資金も体力もなくなっていた。チャチョワーク博士に災難をもたらしたのは、過去に例のないユニークな研究を支持しないアカデミズムの世界と、効果のありすぎる治療法を歓迎できない巨大な医療業界である。その証拠にチャチョワーク博士の研究を支持してきた世界各地の医療機関が突然態度を一変させ、口をそろえて直接博士と関係ない医療機関やニュース・メディアまでもが一斉に彼を非難した。

どうやら世界中に監視機関が存在し、効果のありすぎる治療法の発見や、歴史を覆す発見が行われると、そのような研究者の信用を落とす手段が瞬時に講じられ、専門の研究機関はそれに関わらないよう通達を受ける現状があるようだ。そもそも、医学的大発見をするのが大きな医療機関の研究者に限られていること自体、不自然だ。チャチョワーク博士のように、自らの努力で資金を得て、研究を続けてきた個人の発見が大きく報道されることはないのである。医療機関自体が一種の監視機関として機能し、そのような機関に所属せずして、世界に研究成果を公表することすら困難な状況が存在するのは、まことに残念なことである。



ケイ・ミズモリ『超不都合な科学的真実』


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