加藤のメモ的日記
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石油、石炭、天然ガスなど、炭化水素を主成分とする燃料は化石燃料といわれ、大昔の生物の残骸の集積が地質学的変化をとげて生まれたものであるとされている。本書はこの定説に疑いを投げ、それらの炭化水素は生物起源ではなく、宇宙起源であり地球誕生以来、地球の深層に閉じ込められているものではないかと説く。著者は現在、コーネル大学宇宙研究センター教授という学者である。
生物起源というのは、確固たる定説なのかと思っていたら、実は昔からこの説に反する事実がいろいろ報告されており、無機起源説をとなえる少数派が一貫して存在してきたのだという。かっては炭化水素、特に複雑な炭化水素は生物にしか作れないと考えられ、それが生物起源説の重要な根拠となってきた。
しかし現在では、宇宙に広く存在することが発見されており、宇宙起源説も充分な可能性がある。石油を分析してみると、生物起源ではない物質が大量にある。石油は原産地によって組成が大きく異なり、生物紀元物質がほとんどゼロというものもある。生物起源なら、それは必ず堆積岩から生まれているはずだが、そうではない例がかなり多い。
生物起源説では説明できない火成岩、変成岩の鉱床もたくさんある。石油は化石燃料だから有限量しか存在せず、いずれ掘りつくすと何十年も前から警告されてきたが、実際には確認埋蔵量がどんどん増加している。化石燃料はもはや量的に生物起源説では説明しきれないところまできている。
石炭ではその中から植物化石がそのまま見つかることがあり、それが生物起源説の証拠の一つとされてきたが、実は石炭内の化石の発見率は、他の堆積岩内の化石発見率より低いのだという。
結局著者は、化石燃料のもともとの起源は地球深層に閉じ込められた宇宙起源の炭化水素で、それが地表に出てくる間に生物起源の物質と出会って、それを溶かしこんだものだろうと推測している。その説が正しいとすると、石油の探査方法もこれまでとは変わってくるはずだという。
地球深層には天然ガス鉱床がたくさん存在し、それを掘ればエネルギー問題は当分の間問題ないという。スエーデンはこの説を検証するために、いま国家プロジェクトとして、7500メートルの井戸を試掘しているところだという。
トーマス・ゴールド 「地球深層ガス」
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