加藤のメモ的日記
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2008年11月02日(日) 外務省機密情報

ヨーロッパというと日本人にとってはなんとなく明るいすっきりしたイメージが強い。しかし実際には冷戦後、世界で最も悲惨な出来事が相次いでいる地域だといえる。旧ユーゴスラビアの「民族浄化」という恐ろしい名の殺し合いを思い起こせばそれがわかる。また、アルバニアでも「国家崩壊」というかってない事態が起きた。

誰もがアルバニア脱出に走りアドリア海の対岸で、イタリアの海軍が押し寄せる難民満載の船を阻止しようとして、撃沈してしまう惨憺たる悲劇まで起きた。

この時アルバニアには日本人が12人残っていた。ところが誰一人祖国日本の大使館には向かおうとせず、他国の大使館のいくつかに駆け込んだ。この事実は世界中で、特にヨーロッパとアメリカの政府関係者、マスメディアに「不思議な話」として注目された。知らぬは日本人だけである。なぜ12人の日本人は日本大使館を避けたのか。

我々はこの事情を知っている在イタリア日本大使館の関係者への接触に成功した。この関係者は匿名で自分のプロフィールを紹介されることすら拒否した。自分の証言が外務省のみならず、日本政府の最大の恥の一つを暴くことと知っているからだ。

そして質問に簡潔に答えた。「日本大使館に逃げ込んでも、日本には救出の手段がないことを知っているからですよ」

これも世界の常識、日本の非常識なのだ。つまり、世界中にいる在外邦人と、各国の政府関係者、ジャーナリストが危機の時、日本大使館に逃げ込んだりしたら助からないことを知っている。しかし日本にいる日本人は、なんとなく「日本大使館なら安全なんだろう」と思い込んでいる。

例えば、アメリカは海外で米国市民が危機にさらされたときは、「米大使館か、アメリカンスクールに逃げてください」という、明確にして簡潔なマニュアルを普段から決めている。そして、そこに海兵隊の輸送ヘリコプターが救出に行くのである。

しかし、日本大使館に自衛隊のヘリは決して飛んでこない。かといって、陸路を突破する手段もノウハウもない。日本大使館に逃げ込んだりしたら、むしろ脱出手段のないせっちん詰め状態に陥るだけなのだ。

この関係者は、「私が危険を冒してあなた方に会ったのは、日本という国がつくづく変な妙な国であることを、ひとりでも多くの日本にいる国民に知って欲しいからです」と言った。私はこの言葉に深く頷かないわけにはいかない。



本省勤務のキャリア外務官僚、33歳は言った。「どこの国も平和とは黙って座っていたのでは確保できないことを肌で知っています。情報集めはそのためであって別に戦争をするためではない。平和ボケした日本人だって、在外公館に勤務するプロの外交官ともなれば、それぐらい頭ではわかっていないわけじゃない。だから平和主義と情報活動を実質的に放棄していることは、関係ありません」

これは、日本の在外公館の情報収集が弱いことを率直に認める発言だ。ははぁやっぱり私の叫び声はむなしい叫び声なのかなあ。ではなぜ「実質的に放棄」して平気なんでしょう。私の当然の問いに、この外務省A課「首席事務官」は黙して答えない。

「なぜ、情報収集を放棄しているか、答えは一つしかありません」やっと出会えたジェントルマン。大使を3回も経験した大物外交官OBはこう言った。「日本は戦後50数年ものあいだ、ずっと安全保障は日米安保条約をはじめとしてアメリカ任せにしてきたでしょう。あなただってそうでしょう。いいですか、あなたや私という国民が、安全保障、つまりいかに戦争を防ぐかという問題を全部アメリカ人任せにして平気だったのです。だからこそ、情報収集なき外交官が出来上がってしまった、それだけのことです」



『お笑い 外務省機密情報』


加藤  |MAIL