加藤のメモ的日記
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ベトナム戦争でジャングルに潜むベトコンに手を焼いたアメリカは、大量の除草剤を空中散布した。10年間にわたって7200万リットルの除草剤を、肥沃な熱帯雨林の上空から容赦なく撒き散らした。除草剤にはダイオキシンが含まれていた。その結果ベトナムでは奇形の多発と、ベトナムから帰還した米兵の妻たちが異状出産をするといった事態も起き、アメリカでは大きな社会問題になった。
ダイオキシンが体内に入ると、脳から毒物をこわせという命令が出され、肝臓から毒物代謝酵素が分泌され体中に広がっていく。ダイオキシンは薬物代謝酵素を誘導する能力が非常に強く、多量の酵素が分泌されるため性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど、生命の維持に必要なホルモンまで容赦なく壊されてしまい、生命の維持に大きな影響をを及ぼす可能性があるという。
ダイオキシンは偶然に作られたものである。1960年代に塩素系の農薬が開発され始め、その製造過程の不純物として作り出されたといわれている。環境庁は数年前ダイオキシンの濃度の測定結果を発表したが、それによると最も汚染が激しかったのは大阪府堺市の1.67ピコグラム、東京都新宿区の1.065ピコグラム、神奈川県川崎市の1.062ピコグラムとなっている。これは環境庁が示している大気環境指針の0.8ピコグラムを大きく上回っている。
諸外国の都市部(アメリカ、ドイツ、スエーデン、オランダ)と比較しても、外国はだいたい同じ数字で横並びの状態だが、日本だけがその数値の約10倍もの濃度のダイオキシンが、大気中に含まれているという結果で出ている。このことから日本のダイオキシン対策がいかに遅れていたかが浮き彫りにされる。
ダイオキシンは人口物質としてはもっとも強い毒性をもつ物質である。青酸カリの1万倍、地下鉄サリン事件のサリンとは2倍の毒性があるとされている。しかし天然の猛毒性物質との比較では、ダイオキシンは赤痢菌やフグ毒と同程度と考えられている。一番強いのがボツリヌス菌で次が破傷風菌、その次に赤痢菌、フグ毒の順といわれている。
ダイオキシンは体内の代謝酵素によって分解されにくく、分解されるまで14〜5年かかるといわれる。しかし体内の脂肪や肝臓などの臓器にとどまり、しだいに濃縮されながら蓄積されていく。人間の唯一の排出方法は母乳で、赤ちゃんもダイオキシンの被害を受けます。
全国にある産業廃棄物処理施設の焼却炉の燃焼温度は最高800度である。ダイオキシンは300〜400度で最も発生しやすい物質である。焼却炉の火を消すと、徐々に温度が下がり、300〜400度になった時点で、一挙に発生する。焼却灰にはこうしてできたダイオキシンが大量に含まれている。この灰は科学的な処理によってダイオキシンを分解することができる。
煙にもダイオキシンが含まれている。熱を加えるといろいろな元素が活性化され、化学反応を促進させることになる。その結果さまざまな有機化合物が生成され、その中の一つにダイオキシンも含まれている。煙突から吐き出される黒煙は何千という化合物の総合体でもある。
日本にはあちこちに産業廃棄物を捨てた山がある。それを業者がきちんと管理しているかどうかは見た目ではわからず、周辺住民の不安は計り知れない。現代にゴミを山に捨てるという方法は驚くべきものである。東京では産業廃棄物を捨てる山がいっぱいになりあとは燃やすか、再利用、リサイクルするということになっているそうだ。
産業廃棄物処理の問題は、幼いころから文明社会の恩恵を享受し続けてきた私たちに向けられた大きな課題でもある。缶詰の内側には環境ホルモンである有害物質、レオニールフェノール系可逆剤が使用されており、長時間これに触れていた食品は汚染を受けていた可能性が高いといわれている。
『ダイオキシンの正体』
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